野口整体 金井蒼天(省蒼)の潜在意識教育と思想

金井省蒼(蒼天)の遺稿から説く「野口整体とは」

2019-03-01から1ヶ月間の記事一覧

「病症をどう観るか」―禅文化としての野口整体Ⅱ 2

西と東 今回は禅文化としての野口整体Ⅱ(10頁)「病症をどう観るか」 ― 金井流思想展開 からです。これは未刊の上巻第一部 第一章にある文章で、多くの金井先生の文章の中で、私が一番好きな文章です。 哲学者の故・梅原猛氏は、ユーラシア大陸の西と東の文…

「近代科学」についての学び―禅文化としての野口整体Ⅱ 1

井深大氏の思想から始まった 要求と行動が一致すれば体力は発揮される 食べたくなると胃袋が働く。何かしようとすると運動する筋肉が働く。呼吸器も働く。要求があるとそれに応じて体が動いていく。要求がなければ体は動かない。 だから勉強しなければならな…

(補足)無目的で行う活元運動

無目的で行う活元運動 五 2には「無所得(何かを得ようとしない)・無所悟(悟りを得ようとしない)」という、無目的で行う坐禅と、何もしていない安静状態の脳に、DMN(デフォルトモードネットワーク)という神経活動を調和させるはたらきがあることについ…

体を整えることで心の力を啓く整体指導 ―禅文化としての野口整体Ⅰ 6

心の力は身体にある 今回は、禅文化としての野口整体Ⅰ 四 2(35頁)からです。 少し戻って、三 1のKさんの指導例の冒頭には、Kさんのレポートの抜粋で指導前から「意識している」ストレスの内容が紹介されています。 Kさんは何とか「打開策」を見出そう…

補足 大人の天心

(補足) 野口先生は「大人の天心」について次のように述べています(『月刊全生』)。 大人の天心 人間は智恵があれば智恵を鍛えて、万全に逞しく生ききり得れば、それが自然です。私が無心とか天心とか言っていますが、赤ちゃんにそんなものは求めないので…

脱力によって背骨は真直ぐに“なる”―禅文化としての野口整体Ⅰ 5

脱力による無心 今回は禅文化としての野口整体Ⅰの最後、四から始めます。今回もKさんという男性が登場します。 が、その前に、本教材の一1に戻ってみましょう。ここでは野口晴哉先生の「本来の体育」(『月刊全生』)からの引用に、金井先生が以下のような…

隠れたものを観る―禅文化としての野口整体Ⅰ 4

整体指導で観察する〔身体〕 今回は、三 隠れたものを観る 2(26頁)から始めます。今回も指導例で、Kさんという50代の中学校教師の男性のお話です。 この指導例の前半のポイントは、Kさんは最初に、学習意欲のないSさんという女生徒と「話し合い」をし…

体の智慧は錐体外路系にある―禅文化としての野口整体Ⅰ 3

「私の体は、私の頭より賢い」 今回は、禅文化としての野口整体Ⅰの二 3(19頁)から始めます。 「私の体は、私の頭より賢い」という見出しは、金井先生が個人指導を受けていたNさんの話を聞き非常に喜んだことからつけられました。 小さな時から優等生だっ…

野口整体が「禅」であるとは―禅文化としての野口整体Ⅰ 2

随所作主、立処皆真 今回は、禅文化としての野口整体Ⅰ 16頁から始めます。 金井先生は見出しにつけた禅語「随所作主、立処皆真」という言葉が好きでした。 個人指導の中で、不快情動が起きた時から気が転換せず、その状態がずっと続いていることが焦点になる…

思想を通じて身につける活元運動ー禅文化としての野口整体Ⅰ 1

思想を通じて身につける活元運動 現在、気・自然健康保持会HPには、2015年5月13日に朝日カルチャーで行われた講座の教材を補足した「禅文化としての野口整体Ⅰ補修講義」(補修講義は熱海道場で行われた)、「禅文化としての野口整体Ⅱ」という二つの教材(…

お知らせ

初めての野口整体 2019年4月7日、相模原で、野口整体・初心の初心クラス「身体感覚を高める修養教室」を行います。今後、毎月一回開催の予定です。 日時等、詳細はこちら! 体から心へ・身体感覚を高める修養 これから野口整体を始めたい、活元運動の会に参…

自発的に生きる―活元運動 2

自発的に生きる 2007年にMOKUという雑誌に連載された、金井先生の「自発的に生きる」は、ある50代の男性の個人指導例を基にして書かれた記事です。 故人指導を求めて来たこの男性はフィットネスクラブの取締役兼インストラクターを務め、「一見、筋肉質…

要求と行動を一つに―活元運動 1

要求と行動を一つに 裡の自然(野口晴哉『月刊全生』) 近頃〝自然〟ということが盛んに言われています。つまり、山へ行けば自然であるとか、木が在れば、それで自然だとか言っているが、そうではない。一人一人の人間の生き方が体の要求に沿っていくことが…

触覚と「気」の感覚―共通感覚 4

触覚と「気」の感覚 中村雄二郎氏は「触覚」と共通感覚について、引き続き次のように述べています(『哲学の現在』)。 二 見る・聞く・触る 触覚は、他の諸感覚とくに筋肉感覚や運動感覚の助けをえて、私たちがものを摑み、とらえる働きをし、このものを手…

近代科学の「見る」、野口整体の「触る」―共通感覚 3

近代科学の「見る」 中村雄二郎氏は、近代と近代科学の発達、そして「見る」ことについて次のように述べています(『哲学の現在』)。 二 見る・聞く・触る 望遠鏡や顕微鏡が発明されたのも、人間が本格的に地理上の発見を行なうようになったのも近代はじめ…

共通感覚とは何か―共通感覚 2

共通感覚と「正心・正体」 これから入る中村雄二郎氏の共通感覚の内容は、『「気」の身心一元論』第一章二にある引用箇所の拡大版で、未刊の原稿ともなっている部分です。今回は私が引用を少し増やし、説明を入れながら進めていこうと思います。 その前に、…

自分と世界とのつながりと感覚―共通感覚 1

「自分にとっての意味」とは何か 前回、河合隼雄氏の「関係性の回復」についての文章を引用しました。河合隼雄氏はそれに続き、次のように述べています(『心理療法序説』)。 1 科学の知 「関係性の回復」はどうしてなされるのか。これに対して中村雄二郎…

見るものと見られるものの分離

科学の知にある「切断と支配」という特徴 今回から中村雄二郎氏の「共通感覚」に入る予定でしたが、その前に、私たちのものの見方に入り込んでいる科学性についてお話しようと思います。 人間が物質を対象とし、それを操作する時の方法として、近代科学は絶…

感受性を高度ならしむる―野口整体と近代科学の認識の相違

東洋の伝統と野口整体 学問的に言うと、人間の意識の作用には、「感覚・思考・感情」があるとされています。前回はこの中の「感覚」についてお話したのですが、近代科学で観察の主体となったのは「視覚」でした。客観的(=主観を排除して)に思考し、物を見…

正体・正心・正気―東洋の身心一元性 2

感覚と潜在意識 感覚には外界を感受する感覚(五感・外界感覚)と、身体の内側(体の状態)を感じる感覚(身体感覚)(註)があり、自分の状態を把握し、健康を保つ上では身体感覚が重要となります。 しかし、体が偏ると(潜在意識化した情動に支配されてい…

正体・正心・正気―野口整体の身心一元性 1

現代の社会通念・常識とは何か 先日、本を読んでいる時に、アインシュタインは「自分の目で見て、自分の心で感じている人は少ない」と言った、という一文に目がとまりました。 確かにそうかもしれない、と思います。間違えたり失敗したりするのを恐れている…

活元運動の心―人間の自然とは

病症の経過と、自我とたましいの統合 『「気」の身心一元論』第三章では、津田逸夫氏についての内容の後、急な腰痛で指導を受けたMさんという女性の指導例が入っています。 Mさんは指導の中で、頭が働かなくなっている状態から抜けるとともに「悔しい」と…

対立と支配を超える―ヨーロッパにSeitaiを伝えた津田逸夫氏 3

始めに生命がある 津田逸夫氏は、1の引用文「ヨーロッパ事情」(月刊全生)で「我と物との対立」「人間は自然を支配するものである」という西洋の世界観について述べた後、次のように続けています(引用の省略あり)。 ヨーロッパ事情 …こういうような思想…

東日本大震災3.11に寄せてー『「気」の身心一元論』第三章より

活元運動の心ー自分の健康は自分で保つ 二〇一一年三月十一日の東日本大震災から、ひと月余り経った四月十九日の毎日新聞の記事です。 毎日jp より 東日本大震災に伴う津波で大きな被害を受けた仙台平野で、浸水域の先端が、江戸時代の街道と宿場町の手前に…

対立と支配を超える―ヨーロッパにSeitaiを伝えた津田逸夫氏 2

病症の経過と活元運動 『「気」の身心一元論』が出版された2011年は、東日本大震災(3月11日)の起きた年でした。 野口整体と西洋医学1でも引用しましたが、同著 はじめに で、金井先生は整体指導者という立場から見ると、おそらく関東大震災、第二次大戦の…

対立と支配を超える―ヨーロッパにSeitaiを伝えた津田逸夫氏 1

津田逸夫氏と金井先生 『「気」の身心一元論』第三章 活元運動には、1979年の月刊全生に掲載された津田逸夫氏の「ヨーロッパ事情」という文章が論じられています。 津田氏は合気道の植芝守平氏の高弟でもあった方で、1960年代後半、野口晴哉先生は津田氏にヨ…

気で観る〔身体〕―日本人の宗教性

野口整体 金井流で観察する身体は「気の身体」であり、東洋宗教に通ずる普遍性がある。

情動と脳・情動と身体ー心身医学と金井流個人指導3

前回、私は事態が思わしくないと、不安または恐怖にかられて「どうしたらいいのか」と思い詰めてしまう癖があり、金井先生が「まず考えるのをやめて体を弛め、姿勢を整えて心を落ち着けること」を教えてくれたことについて書きました。 金井先生は野口晴哉先…

身体感覚の発達と瞑想法―心身医学と金井流個人指導2

身体感覚と心の成熟 心身医学と深層心理学は、意識と無意識、心と体、意識運動(主に骨格筋の随意運動)と無意識運動(内臓を司る自律神経系の働きや錐体外路性運動系)の間にあって、両者をつなぐ働きとして「情動」に注目してきました。また東洋では、情動…

身体感覚の発達と瞑想的な意識―心身医学と金井流個人指導1

身体感覚が鈍ると感情が分からない 心身医学では、心身症患者に共通した素質を意味するアレキシサイミアという言葉があります。心身医学者の池見酉次郎医師は、これを「失感情症」と訳し、日本に紹介しました。 これはどういうことかというと、感情(情動)…