野口整体 金井蒼天(省蒼)の潜在意識教育と思想

金井省蒼(蒼天)の遺稿から説く「野口整体とは」

2019-04-01から1ヶ月間の記事一覧

(補)全生の道としての健康

野口整体で健康を説くのは、病気にならないようにするためではありません。そのことについての文章を紹介します(原文旧仮名遣い『野口晴哉著作全集 第一巻』)。 全生のおしへ 二 生命は決して凭りかかりたがらない。 健康は勇気だ。思うことを行える。考え…

ユングの 自己実現と野口整体の全生―風邪の効用13

ユングの 自己実現と野口整体の全生 今回は、ユングの「自己実現(個性化の過程)」を、野口晴哉先生の全生についての文章を通じてお話したいと思います。では、野口晴哉先生の全生についての引用文をまずどうぞ(野口晴哉『風声明語2』初出は昭和二五年十…

一粒の樫の実は摩天の巨樹となる―風邪の効用12

ユングの目的論的無意識観 前回はユングの心をエネルギーとして理解する「心的エネルギー論」についてお話しました。今回はその続きです。 林道義氏(註)は、ユングの無意識観が目的論的であることについて、次のように述べています(HP C・G・ユング研…

ユングの心的エネルギー論と「気」の身体観―風邪の効用 11

ユングの「心をエネルギーとして見る」観方と野口整体の気の身体観の共通性を目的論的見方から説く。

対象から何を受け取るか―風邪の効用10

生命を見る眼 野口晴哉先生は、物理学者であるニュートンの見方と、生命を見る整体の観方を対比し次のように述べています。(『治療の書』全生社 原文旧仮名遣い、改行あり) 治療ということ 生きているものと生きていないものは矢張り違う也。ニュートンは…

生命を見る目と目的論的生命観 風邪の効用 9

整体の原点 少し前に野口晴哉先生の「物の学あれど 生命の学無き也」(『碧巌ところどころ』)という遺稿にある言葉を紹介し、金井先生が「物の学は機械論・近代科学、生命の学は目的論・野口整体」として論じようとしたと述べました。 今回は、「生きている…

修行と目的論的生命観―風邪の効用 8

全生思想という目的論的生命観 私は以前、NHKの「爆問!」という番組で、粘菌にも「快・不快」があり、粘菌は快の方向に向かって動き、増殖していくが、不快な環境だと動きを止めてしまうという様子を見たことがあります。 このように、情動の一番原始的…

気は心と体をつなぐもの―風邪の効用 7

身心分離と「気」 気・自然健康保持会HPには、野口晴哉先生が「我々の体には、自分の生命を保つ機構が備わっている。自分でその力を発揮して環境に適応し、その変化に対処してゆくようにできている。」と説く、目的論的生命観の端的な内容として「整体指導…

病症と心の態度―風邪の効用 6

病症を抑えようとする「心の態度」の問題 下巻『野口整体と科学的生命観 風邪の効用』第一章には、風邪を引いたかと思うとすぐに薬を飲んで症状を抑えて来た女性の例が出てくるのですが、今回はこの人のことを、回想を交えてお話したいと思います。 金井先生…

機械論と目的論―風邪の効用 5

物の学と生命の学 『野口整体と科学的生命観 風邪の効用』で金井先生が著そうとしたことは、先生が野口整体の最も革新的な思想と捉えていた「病症を経過する」という思想、その目的と意味についてです。 そこで持ち出されたのが「目的論」というものですが、…

(補)野口整体の行法の基にある「生命に対する信頼」を育む思想

下巻『野口整体と科学的生命観 風邪の効用』で、金井先生は野口先生の文章を引用し、行法の基にある思想に野口整体たるゆえんがあることについて述べています。 活元運動をはじめとする整体の行法を実践する上で大切な内容ですので、ここに紹介します。 自然…

病症と対立しない野口整体―風邪の効用 4

病症を経過するという思想 「結核が猛威を振った」と言われている、抗生物質がなかった時代においても、実際には結核が治癒した人は(野口先生以外にも)おり、霊療術家や他の指導者の下でも治癒体験のある人はいたようです。 昭和18年、高山 峻という医師が…

近代化と「闘病」―風邪の効用 3

大正・昭和に近代科学的病症観が定着した 野口昭子夫人著『朴歯の下駄』にも載っている、昭和9年に発行された『霊療術聖典』(復刻・八幡書店)という本には、野口先生の師・松本道別師の人体放射能療法を始め、当時活躍していた15人の霊療術を紹介されてい…

(補)全生の詞

全生の詞 野口昭子夫人の回想録『朴葉の下駄』によると、「当時(野口先生20代初め)、活元運動をする人々の中には、それを暗唱していた人もあったと聞く」とのことです。 全生の詞 我あり、我は宇宙の中心なり。我にいのち宿る。 いのちは無始より来りて無…

日本の近代化過程と医療―風邪の効用 2

野口整体成立の時代背景と野口先生の病症観 野口整体と西洋医学 1・2 でも書きましたが、日本の近代化と医療、そして野口整体の起こりについて振り返っておこうと思います。 現在、日本の医療は、医療人類学的には次の五つに分類されています(『気で治る…

生命現象には目的と意味がある―風邪の効用 1

生命の意味や目的を問わない科学 今日から、少し飛びますが、未刊の本三冊目・『野口整体と科学的生命観』第一章 風邪の効用―「自身の生命力を拠り所とする」生き方 に入ろうと思います。 ここの内容は、上巻そして『禅文化としての野口整体 Ⅰ 活元運動』と…

(補)『臨済録』で述べられている「天心」について

臨済録を読みまして一番面白かったのは、生まれたままの自然の心の状態で、つまり赤ん坊と同じ心でというが、赤ん坊の心では役に立たないのだ・・・。と。 いろいろ迷い迷って、くだらない妄想などを描いて、そういうものを通してなお、生まれたての赤ん坊の心…

近代仏教と釈宗演―後科学の禅・野口整体 10

釈宗演が志した仏教の近代化 1891年、鈴木大拙(貞太郎)が参禅した鎌倉円覚寺の今北洪川師(1816~1892)は、元は大拙氏の父と同じ儒家でした。そして明治の初めに身分のある人(士族)と出家者に限られていた参禅の門戸を開き、一般人を受け入れる道場を始…

仏教東漸―後科学の禅・野口整体 9

仏教東漸―極東の日本から、さらに東のアメリカへ 釈宗演師から鈴木大拙へと引き継がれた「仏教東漸」の志とその経緯については、webなどでも様々な資料を読むことができ、釈宗演師のところで再度述べる予定ですのでここでは割愛します。 一八九七年、大拙氏…

鈴木大拙と禅思想―後科学の禅・野口整体 8

自分のことから始まる禅思想 前回で第二章が終わり、今日から第三部第三章 世界の大拙と近代仏教の先駆けとなった師・釈宗演の仏教東漸 が始まります。実は私が「やり過ぎ?」と思っていた所です・・・。この章は難しい! なぜなら、内容のほとんどは、鈴木大拙…

(補)野口整体は禅である(金井)

意識以前にある自分 野口晴哉先生による、「意識した自分」と「意識以前にある自分」についての文章を紹介します。この「意識した自分」=意識・自我、「意識以前にある自分」=無意識、として読むと、『禅と精神分析』とのつながりがより感じられると思いま…

自己知と「肚」―後科学の禅・野口整体 7

自己知とは これまで述べてきたように、鈴木大拙はこの『禅と精神分析』の中で、自己(セルフ)、無意識について語っています。 自己知=自分を知る知というと、自分の性質にある意識できない問題や、潜在感情(コンプレックス)を知ることだと思う人も多い…

(補)科学には「自分のことを考える智」はない

科学には「自分のことを考える智」はない(第二部第四章より) 参考として「科学的方法論では自分のことを考えることはできない」ことについての金井先生の文章と、河合隼雄氏の引用を掲載します。 金井・・・河合隼雄氏(臨床心理学者)は、近代以後発達した、…

科学にはない自己知―後科学の禅・野口整体 6

科学にはない自己知 今回も『禅と精神分析』の続きです。鈴木大拙氏は、科学的見方の特徴について次のように述べています。 三 禅仏教における自己(セルフ)の概念 科学はどの分野も一様に外に向っており、いわば遠心的であるし、物を取り上げて研究する場合…

禅とは無意識を啓く「修行」―後科学の禅・野口整体 5

禅とは無意識を啓く「修行」 では前回の続き、鈴木大拙『禅と精神分析』に入ります。大拙氏は禅の無意識について次のように述べています。 …科学者は抽象を用いるのだが、抽象というものにはみずから発する力というものがない。しかるに禅はみずから創造の源…

鈴木大拙と現代―後科学の禅・野口整体 番外編

昨日、岩波書店のHPで、落合陽一氏(メディアアーティスト・筑波大准教授)という30代前半の研究者が書いた『禅と日本文化』(鈴木大拙)の書評(「図書」掲載)を読みました。 落合氏は「僕が計算機と自然の間に存在する美的感覚を近著の『デジタルネイチ…

真の実在に向って進む二つの道―後科学の禅・野口整体 4

禅的な方法と科学的な方法 今回は続きです。今日の主題は、実在を認識するにあたって「禅的な方法」と「科学的な方法」のふたつが存在する、ということについてです。 鈴木大拙氏は、禅的な見方(方法)について次のように述べています(『禅と精神分析』中…

禅と精神分析―後科学の禅・野口整体 3

科学的客観の「見る」と禅的絶対主観の「観る」 今回、カテゴリー名に「後科学の禅」という言葉を使いました。これは第三部の題名で、鈴木大拙の「無意識」について述べた内容から取られたものです(『禅と精神分析』)。 私の無意識とはmetascientificすな…

仏教の心と整体―後科学の禅・野口整体 2②

無心の身体という東洋の自由 ①二元論における自由から一元論の自由へ 番組の解説者は「西洋の自由は、政府からの自由、キリスト教からの自由など、総じて何々からの自由である。東洋の自由、禅の自由は、自(みずか)らに拠る。まさに自由という言葉そのもので…

仏教の心と整体―後科学の禅・野口整体 2①

鈴木大拙について 今回から第二章の鈴木大拙著『禅と精神分析』を取り上げた内容に入るつもりでしたが、その前に、仏教が大切にしている「感情」と、第二章一にある金井先生の個人指導と禅についてお話したいと思います。 2018年11月、チベット仏教指導者の…