野口整体 金井蒼天(省蒼)の潜在意識教育と思想

金井省蒼(蒼天)の遺稿から説く「野口整体とは」

2019-06-01から1ヶ月間の記事一覧

「体」がつくる感受性の世界「体癖」①-体癖論Ⅰ 4

「自分の感覚によって、その感覚を眺めている世界」とは 今回紹介する文章は、2006年に月刊MOKUという雑誌に連載した記事が元になっています。本の原稿にはイラストがあって、体形の特徴と得意な動作、苦手な動作が良く分かるようになっています。 イラ…

(補)体癖は体運動以前にある(『月刊全生』)

補足として、野口先生の要求と体癖についての文章を紹介します。 要求の現れ方は体癖によって異なる 今迄、体癖とは体運動の無意的偏り習性であると説いておりましたがそれは説明の便宜の為であって偏り運動習性そのものが体癖ではない。…体癖とは何かという…

感覚と心の世界のつながり―体癖論Ⅰ 3

注意が集まる方向に感覚が働く 今回は、感覚の働き方と体癖についての内容です。 感覚の奥には「要求(心)」があり、それに沿った方向に感受性が敏感に働くため、人によって感じることに相違があります。 要求が体を動かし、感覚器を働かせているのです。そ…

科学にはない「人間を個人として理解する」智-体癖論Ⅰ 2

人間における個の探求 これを読んでいる人の中には、「自分が何種なのか知りたい!」と思う人もいるかと思います。早く「○種はこういう人」というのを知りたいとか。たしかに体癖は一見、人間のタイプ分けに見えますね。しかし体癖を学ぶ場合、まず「体癖と…

〔身体〕が個人である理由を明らかにした野口晴哉-体癖論Ⅰ 1

科学にはない自己を知る智―主体と対象が未分離な「禅の智」 今日からいよいよ体癖論が始まります。これは下巻の第九章に収録されている、かなり分量のある内容です。 近年、野口晴哉著『体癖』(筑摩書房)が文庫化され、精神科医の名越康文氏が体癖について…

(補)河合隼雄『宗教と科学』宇宙経験の意味 より

宇宙飛行士の宗教的体験 ユング派心理療法家の河合隼雄は、立花隆『宇宙からの帰還』(立花隆が宇宙飛行士に、彼らの内面的体験を取材し、まとめた本)を引用し、「宗教と科学」という問題に関連付けて論じています。 初期の宇宙飛行士というのは、理科系の…

宇宙の心に通う道筋と「脊髄行気法」-気の思想と目的論的生命観 23

脊髄行気法 今回は前回の「脊髄行気法」の続きです。 (金井) ヒトの体のできていく過程から脊髄神経を説明したいと思います。 受精後半月ほどで、が形成されます。そのなかの外胚葉より二十日から二十三日ほどで皮膚と神経と脳の基ができます。 それは外胚…

脊髄行気法-気の思想と目的論的生命観20

「心を無にし、息を整える」気と呼吸による精神文化 最初に、中巻『野口整体とユング心理学』から、整体指導における気についての文章を紹介します。金井先生は次のように述べています。 整体指導における「気」 野口整体の生命観は、「気の医学」の伝統を受…

身体性を高める日本の「型」の文化―気の思想と目的論的生命観19

正心・正体=整体・感受性を高度ならしむる 刺激に対する反応のあり方を感受性といいますが、感受性は体と心の状態によって、鈍くなったり敏感になったりします。 これがきちんとはたらくように身心を整えるのが「整体」で、「整体指導の目的は感受性を高度…

脳と行動をつなぐ脊椎―気の思想と目的論的生命観18

脳と行動をつなぐ脊椎と生きる力・対話の力 野口整体では、「要求と行動を一つにする」ことを、体力発揮の中心としています。要求を感じ、そして考え、行動する。最初に要求があることが自発的であるということです。 自分は意志が弱い、こうしようと思って…

こうも頭で生きる人が多くなってしまったー気の思想と目的論的生命観17

近代以降、日本と日本人が変化したのはなぜか 今回は、下巻第七章ではなく、上巻の内容に戻ります。 日本と日本人の身心の変化について、後に金井先生は、次のように述べています(上巻『野口整体と科学』第三章一)。 (金井) 一、「こうも頭で生きる人が…

背骨と日本人の感性―気の思想と目的論的生命観16

人間を観る眼と背骨 今回から下巻第七章の最後の主題に入ります。 ここでの内容は、2006年から始まった、月刊MOKUという雑誌に金井先生が連載した記事の最終回が基になっています。これは、私が整体について自分も学びながら、先生の文章づくりと編集の手伝…

伝統的養生と近代医学との相違―気の思想と目的論的生命観15

健康と人生の質を統合する生命の智・養生 今回も、立川昭二氏の『養生訓に学ぶ』からの内容です。健康とは医療に管理してもらわなければならないもので、体のことは自分ではどうしようもない・・・と思う人が多いのが現代ですが、野口整体の理念は「自分の健康…

志を全うするための「養生」ー気の思想と目的論的生命観14

人生後半の意義が失われた現代 今回は「若い時の苦労は買ってもせよ」という言葉の意味を考えつつ、読んでみてださい。では立川昭二氏の「養生訓」に戻ります。 (金井) 立川昭二氏は、なぜに「養生」の必要があるのかといえば、それは人生の喜びが五十歳を…

「腰・肚」文化は人間的成熟に向かうためにあったー気の思想と目的論的生命観 13

成長する可能性を秘めているから「修行」がある (金井) 明治政府は、西洋近代医学を国家医学と定め、江戸以来の伝統医療を正当な医療から排除しました。 こうして西洋医学が普及したことで、現代では「体は専門家に治してもらうもの」、また「勝手に毀れる…

病症の経過を「待つ」―気の思想と目的論的生命観12

江戸時代の病症観 今回は、『養生訓』の病症観についてです。立川昭二氏にお会いした時、野口晴哉先生の『風邪の効用』を読んで間もなく『養生訓』の研究を始めたとのことでした。 そして子どもの時も、若い時も体が弱かった立川先生は、病症というものの教…

人間の自然と病症ー気の思想と目的論的生命観 11

「おのづから癒る」を待つという「受動性」と、持てる力の行使という「能動性」 今回から、以前にも本ブログでからだ言葉についての内容で登場した、立川昭二氏の『養生訓に学ぶ』を使った内容に入ります。これも下巻第七章に収録されています。 次は、2009…

身心一如の東洋宗教と目的論的生命観ー気の思想と目的論的生命観 10

気で観る身体 以下の文章は、2010年頃書かれた、整体指導で観察する身体についての金井先生の文章です(現在は推敲・編集が進み著書用原稿に収録)。これは確か、友永ヨーガ学院での講座のために書かれたもので会ったと思います。 先生はこの中で、「肉体」…

日本の近代化と野口整体―気の思想と目的論的生命観 9

私は以前(2010年位)、金井先生の著書の企画書用に次の文章を作ったことがありました。これは、ブログのために推敲したものですが、これまでのまとめとして紹介します。 現代では、感情の不安定、主体性のなさ、心の共感能力が弱く他者と関係性がもてない、…

近代化が人間に与えた影響と東洋的身体―気の思想と目的論的生命観 8

心理的中心と重力的中心の一致 金井先生は以前、人間の中心について、野口整体の観点から、次のように説いたことがあります(近藤による編集)。 「心の中心」とは、身体感覚的中心のことで、この二つの「中心」が一つであることを古来より「心身一如」と呼…

身体の重心位置と抵抗力―気の思想と目的論的生命観 7

近代化と日本人の重心位置の変化 以前、『「気」の身心一元論』の読書会をしていた時に「人間の中心」について説明する機会があり、「自分はどこにあると思うか」を参加者の皆さんに質問したことがあります。その時は「胸」と「頭」という答えだけで、「丹田…

(補)野口整体の原点にある「抵抗力の発揮」―2009年春期公開講座教材『科学と宗教』より

(金井) 野口晴哉先生は、昭和元年頃(当時一五歳)道場を開きました。その数年後、「健康と心の関係」について次のように述べています。 (註)『野口晴哉著作全集 第一巻』(養生編 昭和5~6年)より。原文は旧仮名遣い 全生論 全生について 全生――生を全…

近代化に対する不適応と病理―気の思想と目的論的生命観 6

近代化と日本人の身心 私が中学・高校生当時の授業では、近代史はアウトラインをなぞるような教え方をすることが多く、当時の日本人が近代化過程にどのように適応していったのかなどは教えられることはなかったように思います。 しかし、近代化というものが…

「人間の自然」を損なった身体の近代化―気の思想と目的論的生命観 5

身体の近代化と重心位置の変化 引き続き、下巻第七章の内容ですが、ここからは下巻の内容に上巻の内容を交えながら進めたいと思います。 中心となるのは、人間の身心に近代化がどのような影響を与えたか、ということです。西洋の文化基盤から生じた近代文明…