野口整体 金井蒼天(省蒼)の潜在意識教育と思想

金井省蒼(蒼天)の遺稿から説く「野口整体とは」

2020-01-01から1年間の記事一覧

終章 瞑想法(東洋)と心理療法(西洋) ―「生命の原理」を理解し、無意識の世界を啓く 一2

金井先生は、新型コロナウイルス禍を見ることなく亡くなりましたが、私は新型コロナウイルス関連のニュースなどを読むと、金井先生と話がしたいと痛切に思います。 スーパーに行って帰って来るだけで、総合病院に行ったような消毒の匂いが体から立ち上るのが…

終章 瞑想法(東洋)と心理療法(西洋) ―「生命の原理」を理解し、無意識の世界を啓く 一1

今回から、中巻『ユング心理学と野口整体 心理療法と瞑想法』の終章に入ります。 今回の内容は、金井先生の遺稿である上・中・下巻のうち、上巻の主題についてで、終章全体を通して、上巻とのつながりが深い内容となっています。 一 科学を相対化し「禅文化…

第七章 禅文化「道」としての野口整体― 瞑想法(セルフコントロール)と心理療法 三5②

活元運動は「動く禅」―Yさん(40代女性)の指導例 ② 生活で瞑想的(内に向かう)時間を持つ Yさんは文中で「自分では意識できない深いところに停滞沈着しているものを浮かびあがらせるためには、個人指導を受けることが有益なのだと思っています。」と言っ…

第七章 禅文化「道」としての野口整体― 瞑想法(セルフコントロール)と心理療法 三5①

活元運動は「動く禅」―Yさん(40代女性)の指導例 気づきが身心の乱れを調える①

第七章 禅文化「道」としての野口整体― 瞑想法(セルフコントロール)と心理療法 三4

考える前の「感ずる」ことの大切さ 私は、主観を生む二つの要素「感覚と感情」、これを鍛練し「感性」を発達せしめることで、野口整体の指導を行なうことを続けて来ました。これにより自身の世界観は十年ごとに大きくステップアップしてきたように思います。…

第七章 禅文化「道」としての野口整体― 瞑想法(セルフコントロール)と心理療法 三3

禅の心とは、初心者の心 Zen mind, Beginner’s mind

第七章 禅文化「道」としての野口整体― 瞑想法(セルフコントロール)と心理療法 三2②

明瞭な意識(無意識と統合された)を持って生きる ② 現代人に必要な意識と無意識を統合して生きる「道(タオ)」 一般的な辞書では、天心は「天の意思」などと表されていますが、「我執を離れ、全てを天 ― 大いなる意志 ― に委ねる」ことです。これは「人事を…

第七章 禅文化「道」としての野口整体― 瞑想法(セルフコントロール)と心理療法 三2①

ユングは「意識水準の低下」ということばをよく使います。 たとえば抑うつ状態にある時は、落ち込んで何もやる気がしなくなったり、やらなければと頭の中で焦るばかりで行動できなくなったりしますが、こういう時は無意識の側に心的エネルギーが滞留していて…

第七章 禅文化「道」としての野口整体― 瞑想法(セルフコントロール)と心理療法 三1

三 瞑想的意識に導く整体指導 ここで、すこしユング心理学と個人指導についておさらいしておきましょう。詳しくは第四章を読んでください。 ユングは、無意識から意識へのエネルギーの流れがあると考えました。これは「心的エネルギー」というもので、「気」…

第七章 禅文化「道」としての野口整体― 瞑想法(セルフコントロール)と心理療法 二3

呼吸法は何のために行うのか、の生態的解説

第七章 禅文化「道」としての野口整体― 瞑想法(セルフコントロール)と心理療法 二2

今回は呼吸法、とくに野口整体の中心的行法、脊髄行気法が主題となっています。また、活元運動の準備として行う邪気の吐出法も呼吸法の一つということができ、ここで述べられている体から心へ働きかけることを目的としています。活元運動が出るようにするた…

第七章 禅文化「道」としての野口整体― 瞑想法(セルフコントロール)と心理療法 二 1

二 「整体を保つ」という生き方とは「内を整える」こと 東洋宗教に共通する基礎体験は「瞑想法」― その心理学的意味 個人指導は、整体操法を施す(体を整える)こと、そして臨床心理的に行うことに特長があり、自力と他力の融合により瞑想的な意識に導き(「…

第七章 禅文化「道」としての野口整体― 瞑想法(セルフコントロール)と心理療法 一 4

野口整体の「整体」という行法と「全生」思想― 裡の自然を掴まえ、要求に順う 師野口晴哉は、人間における「自然」と活元運動について、次のように述べています(『月刊全生』)。 裡の自然 近頃〝自然〟ということが盛んに言われています。つまり、山へ行け…

第七章 禅文化「道」としての野口整体― 瞑想法(セルフコントロール)と心理療法 一 3

「人間の体は、心のこだわり、体の停滞を除くと自ずから自然に丈夫になっていくのです。」(月刊全生) これは、1970年潜在意識教育法講座での野口晴哉師の言葉で、潜在意識教育の目標は、人間の心と体を解放して自発的にはたらくようにすること、と講義の中…

第七章 禅文化「道」としての野口整体― 瞑想法(セルフコントロール)と心理療法 一 2

前回1②の指導例の後、金井先生は河合隼雄著『心理療法序説』から、次のような文章を抜粋し、文末につけてありました。 近代科学の根本には対象に対する「切断」がある。しかし、この親の場合はあまりにも極端としても、われわれは他人を何らかの方法によっ…

第七章 禅文化「道」としての野口整体― 瞑想法(セルフコントロール)と心理療法 一 1②③

体を整えることで心の力を啓く整体指導― 人生上の問題は自己の「心の力」で解決される ②「心の力」は身体にある 「天風哲学」(下巻で詳述)を創始した中村天風師は、チベット仏教「カルマ・カギュ派(註)」の第十五世管長・カリアッパ師(カルマッパ・カギ…

第七章 禅文化「道」としての野口整体― 瞑想法(セルフコントロール)と心理療法 一 1①

一「整体」という行法と「全生」思想― 良き未来を創造する瞑想的生活 今日から第七章に入ります。 近年、瞑想法は企業などでもストレス対策や能力開発のために活用されるようになりました。 また、新型コロナウイルスの感染抑止策の影響で、ストレスが新型ウ…

第六章 生き方を啓く整体指導― 感情の発達と人間的成長三5

池見酉次郎氏について― 科学と宗教の統合というべき心身医学への道 ここでは、第五章二から述べてきた心身医学を、日本で創始された、池見酉次郎氏の「人となり」を深めたいと思います。 氏は1963年に出版された『心療内科』に続き、1973年に出版された『続…

第六章 生き方を啓く整体指導― 感情の発達と人間的成長三4

「身体性」の文化とは自然の法則に従う生き方 第五章二 2で紹介した第四回国際心身医学会(1977年9月、京都国際会議場)での池見酉次郎氏の講演で、氏は、東洋思想について次のように続けています(『セルフ・コントロールと禅』Ⅱより要約)。 東洋思想にお…

第六章 生き方を啓く整体指導― 感情の発達と人間的成長三3

先日、曹洞禅の僧侶の方のブログで、永平寺での生活について書いた記事を拝見しました。 やっぱり、これはかなりだな…という感はありますが、出家者に課される型、厳しい規律とは違っても、きちんと坐って、食べることに集注する躾というのは、昔は一般的に…

第六章 生き方を啓く整体指導― 感情の発達と人間的成長三2

身体性の宗教・禅と精神性の医学・心身医学との出会い 池見氏は、ヨーロッパで禅を広めている弟子丸泰仙老師(註)を、フランスに訪ねた時のことを次のように述べています(『セルフ・コントロールと禅』より要約)。 氏は、1979年9月、イスラエルで開かれた…

第六章 生き方を啓く整体指導― 感情の発達と人間的成長三 1

三 池見氏の「禅と心身医学」― 禅文化と自己正常化能 第六章三は、第五章で紹介した池見酉次郎氏の内容に戻ります。 以前、植芝守平師に合気道を学び、野口晴哉師に整体を学んだ後、ヨーロッパに活元運動を普及させる活動を行った津田逸夫氏の紀行文と、それ…

第六章 生き方を啓く整体指導― 感情の発達と人間的成長 二 2③

③潜在意識に形成された「不安」がいざという時顔を出す Sさんは、大学受験の際も、「第一志望の大学に受からなくても仕方ない」というやる気のない取り組みになってしまいましたが、大学入学後、アナウンサーになりたいという夢を見つけました。 そして、そ…

第六章 生き方を啓く整体指導― 感情の発達と人間的成長 二 2②

前回の個人指導の後、Sさんは先生と電話やメールでやり取りをしながら、子どもだった時のことを振り返りました。今の自分と、子どもだった時の自分がどのようにつながっているのかが、今回の主題です。 ② あきらめ癖の背景― 要求を中断することで形成された…

第六章 生き方を啓く整体指導― 感情の発達と人間的成長 二 2①

本の原稿には、この指導例の後に本人の手記がついており、それが非常にいい内容なので、ここで紹介したいのはやまやまなのですが、ブログとしては原文をそのまま掲載する形は止めて、紹介しようと思います。 心の闇に光が当たった― 自分では気づけない心の癖…

第六章 生き方を啓く整体指導― 感情の発達と人間的成長 二 1

二 個人指導での自然流「臨床心理」 二は、金井先生の個人指導例です。この中に登場するSさんが金井先生の個人指導を受け始めたのは膵臓の疾患がきっかけでした。私はSさんから子どもの時からあまり丈夫ではなく、普通より多くの薬を服用してきたという話を…

第六章 生き方を啓く整体指導― 感情の発達と人間的成長一 6

情動に対する抵抗力と身体 子どもは敏感ですが、それによってすぐに動揺し、母親を求め、母親に受け止められることで安心を撮り戻そうとします。 子どもの時はこれが自然で、このような依存の要求が十分充たされれる必要があるのですが、こうした要求が十分…

第六章 生き方を啓く整体指導―感情の発達と人間的成長一 5

心療整体― 東洋的視点と西洋的視点の合わせ技 対話を重視する心理療法は、「自我を先立て、心(精神)が上位であるとする」西洋的視点であり、この時、失感情症の概念が有効です。 一方、「身体を、(心と不可分で)根元的なものとして捉える」東洋的視点で…

第六章一(補) 成育歴をたどる意味

成育歴と情動の受け止め方の関係 子どもの時に大人が自分の要求や不快に無関心だったり、一方的で親の都合や好みを押し付けるような態度だと、子どもは不満や寂しさを感じ、感潜在意識に「自分の要求は通らない」という無力感や孤立感、絶望・あきらめなどの…

第六章 生き方を啓く整体指導― 感情の発達と人間的成長一 4

自分の中で起こった情動を主観的にどう捉え、判断するかにおいては、子どもの時、両親など周囲の大人が、情動が起きた時どのような反応をしたか、また子どもだった自分が大人の反応をどう受け取ったのかが重要な意味を持っています。 要求が通らないときの、…