野口整体とユング心理学 瞑想法と心理療法
池見酉次郎氏について― 科学と宗教の統合というべき心身医学への道 ここでは、第五章二から述べてきた心身医学を、日本で創始された、池見酉次郎氏の「人となり」を深めたいと思います。 氏は1963年に出版された『心療内科』に続き、1973年に出版された『続…
「身体性」の文化とは自然の法則に従う生き方 第五章二 2で紹介した第四回国際心身医学会(1977年9月、京都国際会議場)での池見酉次郎氏の講演で、氏は、東洋思想について次のように続けています(『セルフ・コントロールと禅』Ⅱより要約)。 東洋思想にお…
先日、曹洞禅の僧侶の方のブログで、永平寺での生活について書いた記事を拝見しました。 やっぱり、これはかなりだな…という感はありますが、出家者に課される型、厳しい規律とは違っても、きちんと坐って、食べることに集注する躾というのは、昔は一般的に…
身体性の宗教・禅と精神性の医学・心身医学との出会い 池見氏は、ヨーロッパで禅を広めている弟子丸泰仙老師(註)を、フランスに訪ねた時のことを次のように述べています(『セルフ・コントロールと禅』より要約)。 氏は、1979年9月、イスラエルで開かれた…
三 池見氏の「禅と心身医学」― 禅文化と自己正常化能 第六章三は、第五章で紹介した池見酉次郎氏の内容に戻ります。 以前、植芝守平師に合気道を学び、野口晴哉師に整体を学んだ後、ヨーロッパに活元運動を普及させる活動を行った津田逸夫氏の紀行文と、それ…
③潜在意識に形成された「不安」がいざという時顔を出す Sさんは、大学受験の際も、「第一志望の大学に受からなくても仕方ない」というやる気のない取り組みになってしまいましたが、大学入学後、アナウンサーになりたいという夢を見つけました。 そして、そ…
前回の個人指導の後、Sさんは先生と電話やメールでやり取りをしながら、子どもだった時のことを振り返りました。今の自分と、子どもだった時の自分がどのようにつながっているのかが、今回の主題です。 ② あきらめ癖の背景― 要求を中断することで形成された…
本の原稿には、この指導例の後に本人の手記がついており、それが非常にいい内容なので、ここで紹介したいのはやまやまなのですが、ブログとしては原文をそのまま掲載する形は止めて、紹介しようと思います。 心の闇に光が当たった― 自分では気づけない心の癖…
二 個人指導での自然流「臨床心理」 二は、金井先生の個人指導例です。この中に登場するSさんが金井先生の個人指導を受け始めたのは膵臓の疾患がきっかけでした。私はSさんから子どもの時からあまり丈夫ではなく、普通より多くの薬を服用してきたという話を…
情動に対する抵抗力と身体 子どもは敏感ですが、それによってすぐに動揺し、母親を求め、母親に受け止められることで安心を撮り戻そうとします。 子どもの時はこれが自然で、このような依存の要求が十分充たされれる必要があるのですが、こうした要求が十分…
心療整体― 東洋的視点と西洋的視点の合わせ技 対話を重視する心理療法は、「自我を先立て、心(精神)が上位であるとする」西洋的視点であり、この時、失感情症の概念が有効です。 一方、「身体を、(心と不可分で)根元的なものとして捉える」東洋的視点で…
成育歴と情動の受け止め方の関係 子どもの時に大人が自分の要求や不快に無関心だったり、一方的で親の都合や好みを押し付けるような態度だと、子どもは不満や寂しさを感じ、感潜在意識に「自分の要求は通らない」という無力感や孤立感、絶望・あきらめなどの…
自分の中で起こった情動を主観的にどう捉え、判断するかにおいては、子どもの時、両親など周囲の大人が、情動が起きた時どのような反応をしたか、また子どもだった自分が大人の反応をどう受け取ったのかが重要な意味を持っています。 要求が通らないときの、…
「感情を言葉にできない」と自分のことを考えることができない ― 感情のやり取りを通じて進む心理療法 心理療法の視点からは、対話を通じての(本人の)「感情への気づき」が、閉ざされた潜在意識を開く鍵となるのです(悩みの核心を打ち明けることは脳の働…
知性と情動の一体性が失われている現代人 師野口晴哉は潜在意識、ユングはコンプレックスという言葉で、無意識(意識できない心)を明らかにしてきました。 「整体(整っている体)」とは、「良い空想ができる身体」であり、自発的な意欲に支えられた身心で…
一 整体となるために必要な感情の発達― 内界との調和を目指す個人指導 今回から、第六章に入ります。健康と情動の停滞(ストレス)の関係についてこれまで述べてきましたが、この章では、心の成長はどういうことか、どうすれば心は発達するのか?そして個人…
(補足2)金井省蒼(蒼天)先生が捉えていた野口整体の宗教性 金井先生が亡くなる直前の原稿にはありませんが、前年の原稿にはこの指導例の後に鈴木大拙『禅とは何か』(春秋社)からの引用が入っていました。 これについての文章はないのですが、金井先生…
補足1 Iさんの指導例のまとめ 先生が亡くなる直前の原稿にはないのですが、Iさんの指導例としてまとめた原稿の中にあった内容を転載し補足とします。 これは、このIさんの指導例のまとめとなる部分です。 「感情」に対する「身体的取り組み・正坐」がもたら…
今回はIさんが「なぜ感情を内攻させるのが常態化するようになったのか?」が主題です。 今回、宗教的な教えが自動的に感情を抑圧する要因になった、という話が出てきますが、このような例は意外と多く、宗教もキリスト教系、仏教系、新興宗教、伝統宗教さま…
一般にストレスというと「○○が原因でストレスを感じる」と、外的要因とそれに対する反応、と考えるものです。これが科学的なストレスの考え方(ストレス理論)であり、そういう理解が一般的なのですが、それだけでは自分の問題というのが見えにくくなってし…
生前、金井先生は、塾でIさんの指導から「精神的な腰」についての話をしたことがありました。 腰というと、一般に生理・解剖学的というか、肉体的な意味での腰というものしか知らなくて、それが痛いとか歪んだとか言っているだけのことが多い。 腰というのは…
第四章までに述べた情動と偏り疲労についての内容を少し復習しておきましょう。 野口整体で説く「要求を中心とした生活」を実現していくためには、体を整え、感覚を正常化する必要がありますが、そこで障害になるのが、意識できない情動の停滞です。 この情…
今回の焦点となる味覚は、生理学的に言うと「外界感覚(外受容感覚)」という外界を知覚する感覚(五感)のひとつです。食物の異化作用・同化作用と密接に関わり、体調によって鈍りが起きやすいことは、経験的に良く知られているかと思います。 この味覚を正…
三 情動に着目する心療整体― Iさんの指導例 今回から、金井流整体個人指導の心身医学的解説とも言うべき、指導例を用いた内容に入ります。 今回紹介するIさんは、金井先生の指導を受けていた人の中ではお世辞にも優等生とは言えない人!なのですが、先生か…
「内界への適応」の大切さを説いた池見氏 ― 野口整体は「潜在生命力の喚起」による人間的な成長を目標とする 池見氏が目指した心身症の治療の第一は、4から表してきたこのような病状への理解と「心身相関」への気づきを促すことです。 池見氏は「新しい皮質…
身体感覚と恒常性維持機能 野口整体では、整体であるため、身体感覚を高めることを専らとするのです。感情に対する自覚と身体感覚の敏感さは一つのことで、これは経験則からの確信です。 師野口晴哉が説いたことを一口で表すと「整体を保って全生する」こと…
今回は野口整体で言う「鈍り」の問題である失体感症(アレキシソミア)についてです。 身体感覚と情動についてはこれまでも紹介してきましたが、池見氏提唱の「アレキシソミア」には、感情の言語表現に注目する欧米とはまた違う、東洋的な心の理解が表れてい…
今回は、心身症になりやすい人の傾向とされている「アレキシサイミア」についてです。 池見氏が失感情症と訳して紹介したアレキシサイミアは、感情がないのではなく、「感情として表現することができない」という意味をはっきりさせるため、現在は「失感情言…
心身症と陰性感情― セリエのストレス学説 野口晴哉先生は、セリエのストレス理論を「上下型2種の病理をほぼ完全に説明している」と述べています。しかし、「こうも頭で生きる人が増えてしまった」(野口晴哉)現代においては、このストレス理論はより普遍的…
今、新型コロナウイルス感染症の問題で、免疫力を高める食べ物などに関心が集まっています。 「ストレスや心配事は免疫機能を低下させる」と一般にもよく言われることですが、これを科学的に研究することは脳科学と免疫学を統合する必要があり、非常に難しい…