野口整体 金井蒼天(省蒼)の潜在意識教育と思想

金井省蒼(蒼天)の遺稿から説く「野口整体とは」

西洋医学と心身二元論―近代科学の見方とは 1

西洋医学心身二元論 

 金井先生と近代科学についての勉強を始めたのは、2008年4月のことです。最初に読み始めたのが元・国際基督教大学教授の石川光男氏の著書で、後にお会いしたこともありました。

 最初に三冊ぐらい本を買って、最初に読み始めた本は少々難しく、読み込みはじめたのは二冊目『ニューサイエンスの世界観』という本でした。次が『共創思考』という本であったと記憶しています。

「訴えられない心」(自分の中でも漠としていて、言葉にならない心)を受け取り、明瞭にしていくことを通じ、心と体を整える指導を行なってきた金井先生が最初に捉えたことは、近代科学の見方の中にある「心身二元論」であったと思います。

 未刊の本の原稿では、第一章二に『ニューサイエンスの世界観』の次の引用文が置かれています(長文のため私が中略を入れています)。

 

医学の「常識」

 私たちは、身体に異常を感ずると病院に行って検査をしてもらう。・・・これは、私たちの身の回りでよくみかける光景で、大部分の人はこれをごく「あたり前」のことだと思っている。

ところが良く考えてみると、この身近な光景の中に、科学を支えているいくつかの「常識」が顔を出している。

第一に、私たちが身体に異常を感ずる場合、「身体」の中のどこかの「部分」が悪いにちがいないと考える。患者が医者に向かって、「どこが悪いのでしょうか」とたずねるのは、そのような思考習慣をよく表している。

・・・このように、「病気」という一つの現象を身体の一部分の異常とみなす考え方は、今日の医学ではごく一般的な「常識」である。このような考え方は、一つの自然現象をいろいろな部分に分解し、それぞれの部分の特性を細かく調べることによって、自然現象を理解しようとする自然科学の分析的な方法から生まれている。

私たちが病気になった場合に見られるもう一つの医学的な「常識」は、病気は身体という物質の異常で、精神の異常ではないと考えることである。私たちは自分自身が身体と心の両方から成り立っていることを実感として知っているが、身体と心を完全に分離して、病気は身体だけの異常と考える思考習慣も、科学特有の分解思考に根ざしたものである。

西欧に発達した近代医学は、病気の原因を物質だけに限定したお蔭で大きな成果をあげることができた。