野口整体 金井蒼天(省蒼)の潜在意識教育と思想

金井省蒼(蒼天)の遺稿から説く「野口整体とは」

金井流個人指導―病症を経過する

金井流個人指導

 何もないこと 無心の身体

雲の向こうの蒼い空

命あるかぎり 

どこまで歩けるか たしかめたい

これを実現するのは 腰である

如是我聞 近藤佐和子

病症を経過する

 金井先生は、野口整体の最も革新的な思想は「病症を経過する」であるとよく言っていました。病気を治すのではなくて、「病症を経過する」。ではその病症が「なぜ起こるのか」というところから、「情動」(病症前の感情体験)に対する関心を深めていったと先生は言っていました。

 指導の後、整って帰って行った人が、次の指導の時に「しばらくは良かったのですが、体調がまた悪くなりました」と言う。しかし、その変化(体の偏り)を起こす最初のショックとして、必ず感情(怒りなど)体験があり、意識では忘れていても、体の上では感情冷めやらぬ状態が続いていることを、体の偏りを観察することを通じて確かめてきた・・・とのことでした。

 ハンス・セリエのストレス理論では病因として心のはたらき、「ストレス反応とは、環境や心理的な変動に対応しようとする体の反応・緊張状態のことで、心理面、行動面、身体面の反応として現れ、情動によって体の諸バランスが崩れた状態から回復する際に生じる過程」であるとしています。その過程として「症状」が起きると考えられているのです。

 このハンス・セリエのストレス理論や深層心理学の発展から生まれた心身医学は、情動と病症の関係という見方が自身の個人指導と共通点があることから、後に先生は心身医学(池見酉次郎氏)の勉強もされることになりました。

 先生の個人指導の特徴は「観察」にあり、『「気」の心身一元論』巻頭記事では「からだことば」を使って、その気で見る潜在意識について述べられています。この「からだことば」、江戸時代の「気」の医学、またユング心理学などについて、これから紹介していきたいと思います。