野口整体 金井蒼天(省蒼)の潜在意識教育と思想

金井省蒼(蒼天)の遺稿から説く「野口整体とは」

仏教の心と整体―後科学の禅・野口整体 2①

鈴木大拙について

 今回から第二章の鈴木大拙著『禅と精神分析』を取り上げた内容に入るつもりでしたが、その前に、仏教が大切にしている「感情」と、第二章一にある金井先生の個人指導と禅についてお話したいと思います。

  2018年11月、チベット仏教指導者のダライ・ラマ法王14世が来日し、福岡の東長寺で被災者の追悼法要に参列しました。そこで、方法は日本人への助言として次のように述べています(法王庁HP)。

「物質的な発展だけに目を向けるのではなく、心や感情のはたらきにも目を向けることが大切です。

 身体の衛生に気をつけることによって健康を保てるように、感情の衛生に気をつけることによって健全な心を保つことができるのです。

 それには破壊的な感情(煩悩)にいかにして対処すべきかを学ぶことが役に立ちます。」

 来日中、法王は折あるごとに「感情の衛生(悪感情が免疫系を低下させる、お互いを引き離し孤立させるなど)」について語っています。これを読んだのはつい最近のことですが、金井先生が生きていたら、関心を持たれたかな・・・と思いました。

 第二章で取り上げる鈴木大拙は、禅の伝道者として、日本以上に海外で尊敬されている高名な人です。知らない人は、web検索すると資料が沢山出てきますから、読んでみてください(近年は批判的内容も出てきています)。著書も英文・和文ともに多く、『日本的霊性』(岩波書店)は有名です。

 鈴木大拙の功績は、禅を思想として西洋に伝えたことです。日本の禅では伝統的に「実践経験のない人が、分からないことを質問して説明を受ける」という教育はありませんでした。

 禅だけではなく他の多くの「道」がそれに準じた教え方で、野口先生存命の頃の整体も、それをやるのはおそらく外国人のみであったと思います。

 じゃあどうするんだろう?と思うかもしれませんが、「黙って言われたとおりにやる。」→「それを続けて分かるようになるまで待つ。」というのが一般的だったのです。

 それを思想として、実践はおろか宗教的基盤の違う西洋人に禅を解き明かすというのはかつてないことでした(師の釈宗演はそのパイオニア)。

 戦後すぐ、日本が国際的に敗戦国待遇だった時から、西洋では仏教などの東洋宗教に関する関心が高まりました。人間の歴史上、最も暴力的で非情な近代戦を経験したことによるのでしょう。

 そして鈴木大拙氏は1948年から、79才で戦前から続けていた活動を再開したのです。

 

 金井先生は第二章一で、鈴木大拙が出演したNHKの古い番組を見て、その視点から見た自身の個人指導をについて書いています。

 冒頭でダライ・ラマ法王は「悪感情が互いを引き離し孤立させる」と言っていますが、金井先生が、自然を乱すものとして焦点を当てたのも「感情」、それも潜在意識となって身心を支配する「意識できない感情」でした。

 大拙氏は番組で、西洋が禅に感じる魅力について、西洋の自由と東洋の自由を比較し東洋の自由は「おのずからによるということ。ものに束縛が何もない、そのものになって、本体になってはたらくということが自由」と述べました。

 ダライ・ラマ法王の言う「感情の衛生」にもつながる内容ですので、中略を入れましたが、次回は②としてこれを紹介したいと思います。