野口整体 金井蒼天(省蒼)の潜在意識教育と思想

金井省蒼(蒼天)の遺稿から説く「野口整体とは」

病症と生き方の関係―風邪の効用 21

病症と生き方の関係

 これから中心となるNさんという女性は、「線維筋痛症(全身に激しい痛みが生じ、原因不明の病気。心身症の一つとも考えられている)」に悩み、個人指導を受け始めました。

 個人指導を始めて四年後の2010年2月、Nさんに金井先生が「深く感じ入った」と表現するほどの身体の変化が訪れました。その時の先生の感動が発端となって、この指導例がまとめられたのです。

 では、本文に入っていきます。内容をブログ用に再編しました。

Nさんの指導例(金井)

 この女性(Nさん)は、34歳だった2005年の秋に「線維筋痛症」と診断され、2006年2月から個人指導を受け始めました。

 この人は、これまで生活上の都合だけで仕事を選び、本気で仕事をするという姿勢がありませんでした。

 それというのも、当初は、自分が何を感じているのか、どうしたいのか(要求を感じること)がはっきりしていなかったのです。

 Nさんが結婚したのは25歳の時です。結婚と同時に、文筆業に携わる夫が自分の事務所を立ち上げました。Nさんは「夫を支えるために、自分は安定したところに就職した方が良い」と考え、業界誌を作る出版社に正社員(編集者)として入社しました。

 この時、「ここは、私らしさからずれていくんじゃないかという感覚はあった」そうですが、Nさんはそのまま入社しました。仕事には興味が湧かず、意欲を感じることができない生活を続けて来たのです。

 夫との生活のために、と入社したのですが、やはり不満が募り「あなただけ好きなことをしている」と夫をなじってしまうことも時折あったようです。

(金井)

・・・Nさんは愉気をしての「気の感応」が悪く、活元運動の動きもとても悪く(これは体が鈍いことと同時に、「閉鎖系」に入っていることを意味する)、このため、「対話能力」にかなり不足があり、私には優柔不断さが目立って感じられていました。

(悩んでいる、苦しんで来た人というのは初回時に良く分かるものだが、こういう場合、何が問題点なのか本人が自覚できるまで期間を要す。)

 感応が悪いとは、「気」でつながれない、「気」のつながりがない、ということです(愉気をしても「気」が通りにくい)

 訓練された「気」による感覚では、「気の感応」がない体が大病と言われるものにつながっているのです。

 現代では、特に人間の「関係性(つながり)」が難しくなっていますが、この関係性は気の問題なのです(相手の気を感じることで、関係性ができるということが分からなくなっている)。

 二元論、つまり「心身分離」によって発達した近代科学には、気というものがありません。一元論、つまり「心身相関」性を重視する東洋宗教を基盤とする野口整体では、気は「心と体をつなぐ」重要なものです。

 Nさんが「線維筋痛症」という診断を受けた病院(専門医がいる)での処方は、鎮痛剤と抗うつ剤の投与というものでした。しかし服用すると体調が悪くなったため、服用をやめたそうです。

 また、Nさんは病気の原因に心があるという自覚がありました。診断を受ける2年前(32歳時)、夫が一緒に仕事をしていた女性と恋愛関係にあると知ったのです。

 その関係が終わるまでの2年間、夫との諍いが続き、「夫が彼女を選ぶのではないか」という不安で、自分でもこのままではおかしくなると思っていたとのことです。

 そして、34歳になる年の春に「首に激痛が走り、動かなくなる」という異変が起こりました。首は1週間ほどで動くようになったようですが、下肢に感覚異状が起こるようになり、いくつかの病院で検査を受けても診断がつきませんでした。

 さらに背中の痛みと不眠が続き、会社も休むようになり、「線維筋痛症」という診断を受ける事態になったのですが、夫の女性関係のことを金井先生に打ち明けたのは、指導を受け始めて大部時間が経ってからのことだったのです。

 今回はここまでとします。次回は長いので前置きなしで始めます!