野口整体 金井蒼天(省蒼)の潜在意識教育と思想

金井省蒼(蒼天)の遺稿から説く「野口整体とは」

「体」がつくる感受性の世界「体癖」②-体癖論Ⅰ 5

Bさんの運動特性と感受性― しゃがむと集中するBさん

 今日は前回の続きで、Bさんの世界をのぞいてみましょう。

 Bさんというのは、実は私です…。イラストを見ると、私の特徴まるだしで、恥ずかしいのですが仕方がありません。

 ここでは左右型3種と開閉型9種が取り上げられていますが、他にも前後型があります。体癖は複合していて、時と場合に応じて表に出てくる体癖があるのですが、私の場合、全体をリードしているのは9種です。

 それでは内容に入ります。

 

(金井)

Bさんの運動特性と感受性― しゃがむと集中するBさん

 Aさんとは逆に、台所でよく使うものを下の開き棚にしまうBさんという人がいます。

 Bさんは、電車でつり革につかまっていると、「すぐ腕がだるくなってしまう」、と言います。身長は小柄ではありますが、十分に届くつり革でも、腕を挙げていることが苦手なのです。

 つまり体癖的な動作として、「挙上動作」は苦手で、そして、上のほうを仰ぎ見るということ自体が苦痛だと言います。

 しかし「しゃがむ動作」が得意で、彼女は、台所では下の開きや床下収納を専ら活用していると言います。

 立姿で腰椎四番に愉気をすると即座にしゃがんでしまうのですが、それほどに下に行く動きが鋭敏に行われる体なのです。

 得意な「しゃがむ」という無意動作により、何でもすっと下に入れ、上に置こうという発想にはならないのです。

 体癖という身体性を知らない人は、「Bさんは体が小さいからだろう」とか、先ほどのAさんの場合だと、「背が高いからだろう」と思ってしまうでしょう。

 Bさんほどの背丈の、上下型の人もいるかもしれない。そういう人は、Aさんほど高いところに入れられないにしても、やはり自然に、上へ、上へと行くものがあるのです。

 また、比較的体が大きくても、しゃがむことが得意であれば、下方を活用するでしょう。

 このように、何気ない行動のなかに、体癖=「身体という無意識」が強く反映しているのです。

 この人の場合、注意の方向が下方であり、運動特性としては「しゃがみたい」という「要求」があるのです。体癖としては「閉型」(開閉型・九種)といいます。

 九種は「しゃがむ」という動作と、「集中する」ということがつながっています。

 閉型の人は、自分の世界に入ると「まったく他を感じなくなる」という特性を持ち、集中力が強く発揮されるとその人の「時空間」が変わってしまうことがあります。Bさんは次のように話してくれました。

 

 小さい頃から、しゃがんでじっと草や虫などを見ているのが好きだったのを思い出しました。その時、周りが霞んで、対象となるものだけがはっきりと浮き上がって見えてきたものです。そうなると、私は自分の世界に入り込んで、周りも、時間も分からなくなってしまうのです。

 

 また客観性を重視する「上下型」に対して、「閉型」は「私がこう感じているからこう」と、主観的な感受性の傾向があります。「唯我独尊?」的といいますか…。

「考える」人であるAさんと、「感じる」人であるBさんの対比は腰椎の一番と四番にあるのです。

 他にこの人の中には、「左右型・三種」という体癖があり、「食べ物」に敏感です。そんなところから、米びつが軽くなってくると危機感を感じるそうで、床下収納にお米がしっかり貯蔵されていると「とても安心する」と言います。

 その他、梅干しなど保存性の高い食品が床下にあると幸せだと感じるそうです(三種の自己保存要求と食品の保存性?)。これなど、「閉型」の得意な「下方」と、「食」に敏感な三種とが混合された感受性であり、私にとっては「解りやすい!」と思ったものです。

 師野口晴哉は「体癖のことは人間の外と内を繋ぐ着手の処と言えよう」と述べていますが、体の内側にある「要求」が、無意識のうちに動作や反応の仕方、そして体の形として、外側に現れているのです。

 このように、その人が外界をどのように受け止め、外界にどのように関わっていくかは、「体癖という無意識」が原動力となっているのです。