野口整体 金井蒼天(省蒼)の潜在意識教育と思想

金井省蒼(蒼天)の遺稿から説く「野口整体とは」

第一章 野口整体の身心の観方と「からだ言葉」一3①

野口整体の真骨頂 身体に観察できる「情動の持続」

①情動を感情として意識化(分化)する心療整体

 情動を自身で制御する ―― 不快を自身で切りかえることで落ち着きを取り戻す ―― 前提となる情動知覚(情動を認識する)(註2)において、重要なのが身体感覚(情動による身体的変化を感じる能力)です。

 怒り・恐怖などの情動に対応した身体感覚とのつながりが体験的に学習されていないと、情動に関する問題(心身症神経症など)につながるのです。

 感情(陰性)について、情動による身体の硬張りや痛みを自覚し、自身の感情を理解することができるのも「身体感覚」に依っており、このため、私は身体感覚を最重要視しています。個人指導における「感情」とは、情動を(感情として)知覚する(=意識化する)ことなのです。

 個人指導の場での整体操法は、身体的なはたらきかけによって心理的な変化を誘導するもの(=求心的心理療法)ですが、私の心療整体では、言葉によるはたらきかけを通じて、「本人の感情への気付きが身心の変化を促す」、という対話を合わせ行っています。

(註)感情 身体感覚に関連した「無意識的感情(emotion・情動)」と、大脳皮質で認識している「意識的感情」とに分けることができる。

(註)情動知覚 情動の種別に対応した身体感覚を知覚し、感情として心理的に認識すること。情動の種類は、怒り・恐怖・不安などの基本情動から、高次の社会的感情(嫉妬・困惑・罪悪感・恥など)まで多岐に渡り、思考や推論にも影響し得る。

(註)心身症 「感情」特に抑えられて意識に上りがたい感情に対する正常な生理的反応が、慢性的にかつ拡大された形で現れることによって、特定の期間に持続性の器質的変化(またはこれより発展したと思われる器質的変化)を呈する心身相関の疾患である。