野口整体 金井蒼天(省蒼)の潜在意識教育と思想

金井省蒼(蒼天)の遺稿から説く「野口整体とは」

第一章 野口整体の身心の観方と「からだ言葉」一3③

野口整体の真骨頂 身体に観察できる「情動の持続」

③個人の感受性によって異なる情動反応

 ところが多くの場合、本人には、いつ、どのような場面で強い陰性感情が発生したのか分からないという点が、これ(情動の持続)に対する理解を容易ならざるものとしているのです。

 それは、身体感覚が発達していないと、不快情動による身体的また精神的な異常感は自覚できないものだからです。

 これは、考えて(理性で)分かることでなく、意識が内に向かうことによる「感じる」はたらきによって分かることです。それで理性的活動を多く要求される現代人においては、瞑想的時間を持つことが、身心の健全性を保つ上で、より必要とされるのです。

 生理学や科学的心理学では、先に述べたように、感覚器官を通じて大脳に入力された情報に対し、出力された情報が身体的変化(情動)を生じるとされています。

 これは、あくまで科学的(客観的・合理的・普遍的)な見解であり、ここには個人的な心のはたらき(個人の事情=感受性)は扱われていません。外界からの刺戟という点で、情動が、何によってどのように起きるかは、全く個人的な反応と言う他は無いという面を考慮せねばなりません。

 つまり、個人の事情を斟酌しなければ、そのようなことがこのような情動反応となることは、理解できない場合が多々あるのです。さらに言うと、情動は大きいが、客観的な外界刺激としてはさしたるものがない、ということがあるのです。

 ここに、個人的な感受性を考える必要が大いにあるわけです(個人指導が目的とするところは、感受性を高度ならしむることにある。つまり、啓かれた心となることが目標)。

 

(補足)意識(顕在意識)・潜在意識・無意識

 心のはたらきについて、生理心理学的に心身相関を調べるために、「…意識」ということばが使われる。

 普通、知覚できる意識の作用としては、感覚と思考と感情があげられる。これらは顕在意識(また表層意識)と呼ばれる。

 これに対し、普段の意識には容易にのぼってこない意識があり、精神分析などの方法によって意識化できるものを潜在意識(または深層意識)という。

 十分に自覚できない情動が蓄積(感情が陰性的に、かつ瞬間的にはたらき潜在意識化)したものはコンプレックスと呼ばれる(コンプレックスは潜在意識。無意識として扱われることもある)。

 知覚できない意識としては、この他に生命維持作用があり、心臓の鼓動や食物の消化、発汗作用、ホルモンを分泌する内分泌系のはたらきなどは、すべて意識されないうちになされる(自律系・不随意運動)。これを無意識と言う。

 この三種類の意識を「意識(顕在意識)」、「潜在意識」、「無意識」と呼んで区別することにする。