野口整体 金井蒼天(省蒼)の潜在意識教育と思想

金井省蒼(蒼天)の遺稿から説く「野口整体とは」

第四章 野口整体とユング心理学― 心を「流れ」と捉えるという共通点 一1②

1 コンプレックスとは

②身体症状が表現する不快情動

また、河合氏は先の例に先立って、コンプレックスを次のように説いています(『コンプレックス』第一章)。 

1 主体性をおびやかすもの

われわれは自分で自分の行動を律することができる、と思っている。…しかし、常にそうであるとは限らないのである。われわれの主体性は、本人が信じているよりは弱いもので、自分の意志とは異なる行動が生じてくるため悩んでいる人も多いのである。

…本人の意志に反する行動という点で、もっとも劇的なのはヒステリーの場合であろう。これから舞台に立つというときに、足が麻痺して踊れなくなったバレーダンサー、会議で重要な報告をしなければならない前日から、急に声が出なくなってしまった会社員。これらの場合は、自分の意志に反して、体の機能が停止してしまうのであるから、その人の身体に対する主体性が完全におびやかされている状態である。

 

 私は、この河合氏の文章を受け、コンプレックスとは「心の自由を奪って主体性を脅かし、身心を支配するはたらき」と捉えました。

神経症・ヒステリーについて

 ヒステリーは神経症(註)の一つで、現在の精神医学では、解離性障害(自分が自分であるという感覚が失われている状態)や、身体表現性障害(検査しても身体的異常が出ないが、身体症状が出る種々の障害の総称)に分類されています。

 整体の観点から神経症を身体的に説明すると、背骨の胸椎一~五番が一塊になっている状態があります(頸椎や仙椎部から観る場合もある)。

 ヒステリーは、外的な事情や刺激に対する、不快情動として起こる精神的また身体的な反応(手足が動かない、言葉が出ない、身体の一部が痛くなるなど)で、感情が強調され、一般に症状が激しいことが多いものです。

 自律神経失調症も器質的な問題がないという点でこれとよく似ていますが、ヒステリーは、より強い明らかな機能障害となって現れてきます。

(註)神経症(独 ノイローゼ) 非器質的な=身体のどこにも病変の原因が特定できる状態にない、軽症の精神疾患。不安を主症状とする神経症を不安神経症という。

 これは、はっきりした理由がないのに不安(漠然とした恐れの感情)が起こり、あるいは理由があっても、それと不釣り合いに強く不安が起こり、いつまでも続く。

 精神症状と、多様な身体症状(頭痛、息苦しさなど)がみられる。強迫観念と強迫行為を伴うものが強迫神経症。現在の精神医学で「神経症」という用語は用いられていないが、不安神経症強迫神経症は、軽度のパニック障害強迫性障害などにあたる。