第七章 禅文化「道」としての野口整体― 瞑想法(セルフコントロール)と心理療法 一 1①
一「整体」という行法と「全生」思想― 良き未来を創造する瞑想的生活
今日から第七章に入ります。
近年、瞑想法は企業などでもストレス対策や能力開発のために活用されるようになりました。
また、新型コロナウイルスの感染抑止策の影響で、ストレスが新型ウイルス以上に健康に悪影響を与えることが再認識されたことにより、自宅でできるストレス対策として呼吸法や瞑想法などが注目されています。
しかし、心理的側面があまり理解されていないこともあって、野口整体の行法が瞑想法の一種であるという認識は、まだあまりされているとは言えません。
金井先生は、現代における野口整体の存在意義として、第七章で扱う内容を想定していました。それでは内容に入ります。
体を整えることで心の力を啓く整体指導― 人生上の問題は自己の「心の力」で解決される
① 科学の時代では、心とは理性という意識となり「無意識」の心が活用できなくなった
静岡県熱海市で整体指導を始めたのは、1972年8月のことです。
やがて1991年の春、来宮神社からずっと上がった高台に道場を構えました。そして後の、1998年2月には、満五十歳を機に、師野口晴哉に倣(なら)い「気・自然健康保持会」を設立する意欲を持つに至りました。
さらに、2014年3月には一般社団法人となりました。
一般的な“整体”には「体の不調」を訴える人が多いと思うのですが、当会では「心の悩み」を抱いている人が多いのです。その中で積極的な人は「いかに生きるか」という道を求めてくる人が増えています。
このような人が増えてきた大きな原因の一つに、現代では多くの人が、自分が直面する問題に、頭だけ(理性による科学的思考のみ)で取り組もうとしているということがあります(これは問題解決の手段をのみ考えること)。
その結果、実は「どうしてよいのか分からない」、と感じているのですが、意識の中だけでぐるぐるしていて、無意識(身体)の世界を識らないために心の世界が大変狭くなっており、落ち着いて対処できていないのです。
これは心理的表現ですが、身心的に言うと、問題が起きた時、身体を「落ち着ける」ということをしないで、それは、心が動揺したまま、その出来事なり事情を解決する方へ、手段をめぐらすことを頭で考えてしまうのです。
言い換えると、心(潜在意識)のありようを内省し、身体(姿勢)を調える(調身=「上虚下実」の状態になる)ことをせず、頭(顕在意識)で対処しようとのみするのです(調身・調息を通じて、調心することを知らず、無意識を活用できない)。