野口整体 金井蒼天(省蒼)の潜在意識教育と思想

金井省蒼(蒼天)の遺稿から説く「野口整体とは」

(補)『「気」の身心一元論』掲載の全生訓

 『「気」の身心一元論』で使用された全生訓を紹介します。

全生

全生とは死ぬこと也 死ぬということ 生ききって初めてあり 生ききらぬ人は死ねず 自ら殺し 又他に殺されている也 生ききらず 生きんとしてあがき 自ら殺している人多し ハッキリ知る可し

全生とは 自ずから死ぬこと也

 七十歳になったから全生したとか 八十歳だから全生したとか 四十歳で死んだから全生しなかったとか 天文学的執着によって全生を解す可からず 全生とは数学によって得るものに非ず その生を生ききることに全生はある也

 

全生に生ききるとは 自ら生くる也 他に依って生かされ息している人はいつになっても全生しているに非ず 蝶が一夏で死し 猫が二十年で死し 松が千年で枯れても 等しく全生したる也 人間の全生 時の長さに非ず その一日を生ききることに全生はある也

自ら殺さず 他に殺されず その生に生ききって 死ぬ迄生きていること全生也 米に依って生かされているつもりの人あり 空気に依って生かされている人あり されど生きておらねば 空気も米も 人の生を養う能わざる也

パンに依って生くる者 衣に依って生くる者 全生の人に非ず

 力は使うことによって増す也 力を使うこと惜しむ人 全生の道を知らず 十のこと為すに 五の力にて為すより五十の力をもって為すこと 全生の道也 成否の問題に非ず ただより多くの力を費やして生くる可し 費やして減ることなきを知る者 いつも活き活き生くるを得

斯くの如きを全生という也 寿命を保つというは遁辞(とんじ)(言い逃れの言葉)也 死したるを寿命というも 全生とは然らず 衛生というも 養生というも 然らず 故に全生という

『偶感集』