野口整体 金井蒼天(省蒼)の潜在意識教育と思想

金井省蒼(蒼天)の遺稿から説く「野口整体とは」

野口整体と科学 はじめに4

「近代科学」を相対化し、「東洋宗教」を再考して野口整体の「思想と行法」を身につける

 野口整体に関心を持つ人においては、現代人の「心と体」の問題が、科学の時代において存在していることを知り、近代科学的な西洋医学の「思想と方法」と、東洋宗教的な野口整体の「思想と行法」を、相対的に理解することが肝要であると考えます。

 なぜ「野口整体の思想」をこのように著したかと言えば、それは、敗戦後伝統を棄て科学的教育のみによって西洋化した日本人が、野口整体の行法を身に付けつつ、その思想の理解を深めるには、「近代科学」の世界観を相対化し、「東洋宗教」を理性的に捉え直すことが必要と考えたからです。

(現代において標準的・常識的とされる物の見方が科学に由来するものと理解する。第一部で詳述)

 野口整体を現代に伝えるには、今や、「身体性」にだけ言及するのではなく、現代という時代の成り立ちを考慮し、野口整体を、一貫性を持った思想として体系的に著す(=哲学的・論理的に表現する)ことが先ず必要である、と痛感したのです。

 科学的に高度化した現代社会に生きる人々には、科学的思考は必須のものです。現代の人々には「身体性の衰退」と引き換えに「理性的(科学的)思考」の発達があります。ここに訴えるには「論理」つまり合理的説明が必要なのです。

 西洋の良いところとして、哲学・思想があります。それには論理性と体系化があり、これによって思想の伝達力が高いと思うのです。これは、理論(理性的思考)の持つ長所(註)だと思います。

(註)理論の意義

 世界の森羅万象を理解する上で、現実を単純化する必要があり、その役割を理論という思考が担う。そして、現実を原理や法則などとして、どの程度理解しやすく単純化しているか、ということが理論の本義であり、理論が確立されていれば初心者にとって学習しやすい。

 

  野口整体の行法・整体法(愉気法・活元運動・整体操法)を学ぶ上では、全生思想(野口晴哉著『治療の書』『風声明語』『偶感集』『大弦小弦』、野口昭子著『回想の野口晴哉』など)を理解、体得しつつ進むことが肝要です。

 それは整体法が、野口整体の生命観に裏打ちされたものとなるためであり、さらに、整体指導を行う者にとっては死生観を立てるという必要があるからです。

 野口整体は身体性によって(=体験を通してのみ)理解できるものですが、私は、その思想を理性的に(理論によって)も理解する必要があると説くものです(東洋宗教的であること、近代科学的であることの両立)。