野口整体 金井蒼天(省蒼)の潜在意識教育と思想

金井省蒼(蒼天)の遺稿から説く「野口整体とは」

野口整体と科学 はじめに5

如是我聞

 『病むことは力』第五章に表した私の高校時代の苦しかった思いは、当時が、高度経済成長という日本の敗戦による影響を受けた時代であったことによるものでした。

 そして、幕末・明治維新から敗戦後の高度経済成長に至る時代の背景には、「科学文明と、これを生み出した西洋の歴史」があったことを深く理解する過程が、この本を作る原動力ともなりました。

 科学は、個人の主観と切断された客観的・普遍的なものです。科学に対してはこのような理解の仕方が必要なのですが、宗教的な野口整体は、個人の主観も入っており、その上で普遍性があるものです。このような普遍性は「修行」によって培われます。

 ユング心理学の中心概念に「個性化(自己実現)」というものがあります。私においての個性化は、師野口晴哉に弟子入りすることに始まり、整体指導の道を精進してきた今日までの「修行」がその過程であったと思います。

 そして、私が捉えた「生き方=修養・養生」としての野口整体に、本書を通じて触れて頂きたいと願っています。

 本書の「西洋近代を通して『現代と野口整体』を、俯瞰的に観る視点」という内容にまで到達することができたのは、塾生の支えを始め、経験を与えて頂いた全ての人々のご縁によるものと、初出版以来の十年余を振り返っています。

 そして、ここを通じてあなたが求めている「パラダイムシフト(新しい生き方)」となることを願っています。

私は、野口整体の一継承者ですが、本書を通じて「如是我聞(にょぜがもん)」 ―― 私が45年余を通じて、このように師野口晴哉の思想を理解したことを感じ取って頂ければと思います。

2014年 大暑

 

(追記)

秋の首の冷え

野口晴哉

秋になって気温が急に下がり出すと、首の冷えによる体の異常が多くなる。

首が冷えると、体が浮腫んだり足が浮腫む。特にひどいのは小便が出なくなったり、胃酸過多から喘息、胸の痛みから背中の真中が痛んでくる。

また首が動かなくなるという徴候もある。

特に上下型はこの時期に影響を受け易い。脳軟化症とか、惚けるとか、頭へ血が行かない傾向の異常は、左の胸鎖乳頭筋を三分~五分、熱い蒸しタオルで温めることがよい。

逆に脳溢血とか、眼の角膜出血とか、頭の血が下がりにくい傾向による異常は、右の胸鎖乳頭筋を温めるとよい。

さらに頸椎の上と後頭部の境の頸上を八分温めると、それが保つようになる。

(解説)

 秋となっていますが、今の時期でも応用可能です。ここでは頭と胸部の間の血行を良くすることに重点が置かれています。暖房が強くなって乾燥度が高くなってきたら水を飲むことも必要で、血液の状態を保ち、血流を良くすることにもつながります。

 上下型とありますが、「頭で生きる人が多くなってしまった」現代は、体癖によらず注意した方が良いでしょう。

胸鎖乳頭筋というのは、首の耳裏の下あたりから前側の首の付け根の真中あたりまで、斜めについている筋肉で、左右両サイドにあります。

 このような季節の変化に対する体の適応能力は、ストレス状態にあると大きく低下し、野口先生が挙げている不具合は「不適応状態」といえるものです。

「自粛」という同調圧力は、時に「命令」よりもストレスになるものです。普段、整体を実践している人もいない人も、まず自分で体の状態を感じてみる、そして整える…ということを取り入れてみてください。

文責 近藤佐和子