野口整体 金井蒼天(省蒼)の潜在意識教育と思想

整体の道51年で亡くなった整体指導者の説く「野口整体」とは

野口整体と科学 第一部第一章 野口整体と西洋医学―身心一如(一元論)と心身分離(二元論)一2

 現在、新型コロナウイルスが感染拡大を続けています。

11月の段階では、

・重症化する人の割合は 約1.6%(50歳代以下で0.3%、60歳代以上で8.5%)、

・死亡する人の割合は 約1.0%(50歳代以下で0.06%、60歳代以上で5.7%)

 2021年1月8日時点では、致死率:1.5%(厚生労働省「国内の発生状況など」)となっています。

 11月より高齢者が増えているので死亡率が上がっていますが、9割は軽症であるという観方も可能で、個人が自分の命を守る上ではそのように捉えた方が賢明です。

医療崩壊」など、自分にはどうしようもないことについて考えたり、不安になったりするのはひとまずやめて、心を落ち着け、頭を整理しておきましょう。野口整体に関わる人は知っていると思いますが、感染→重症化→死、という悪い方向に向う空想が、体の上で実現してしまうことがあるのです。(免疫系の不活性化はストレスと関係が深い)

 ところで、軽症者にはどのような治療が行われているのでしょうか。厚生労働省の資料によると、次のようになっています。

新型コロナウイルス感染症の“いま”についての10の知識 より)

Q 新型コロナウイルス感染症はどのようにして治療するのですか。

A 軽症の場合は経過観察のみで自然に軽快することが多く、必要な場合に解熱薬などの対症療法を行います。

  現在のところ、軽症者に対する治療薬はなく、軽症者が「自然に軽快する」のは免疫や細胞の再生能力などの力によるものです。

 このような働き全体を「自然治癒力」と言います。くしゃみやせき、鼻水が出たり、発熱といった症状は、実は細菌やウイルスの増殖を防ぎ、体外に排出する自然免疫の働きのひとつです。

 こうした考えは野口整体に限ったことではなく、医学的にも共有されているのですが、治療となると「解熱薬などの対症療法」が行われることが多くあり、それがこのはたらきを乱したり、停滞させたりしてしまうことがあるのです。

 また、病症がない状態を正常としているために、正常化の過程としての病症の姿が見えなくなりがちです。一方、野口整体では、病症ではなく自然治癒力、生命のはたらきを見て、それが十全に働くようにするという観方をします。

 内容に「西洋医学自然治癒力という考えがない、前提されていない」という表現が多くありますが、それは、自然治癒力のはたらきを保ち、生かすという考えがないということです。

 では今回の内容に入ります。

 2 西洋には自然治癒力という概念はない― 石川光男氏の思想に出会う

 湯浅泰雄氏の著作『気・修行・身体』の影響もあって、私が捉えた西洋の「肉体」と東洋の「身体」という視点(序章一 3参照)より、「西洋・東洋」という言葉をインターネットで検索するうち、知人である岡部明美氏のブログで、石川光男氏とその著作が紹介されていることを知りました。

 そこで岡部氏は次のように述べています。 

東西の医学の基本理念は、それぞれが生きてきた自然環境、風土と密接な関係がある、ということを知ったのは新鮮な驚きだった。

 西洋医学自然治癒力という概念がないということを最初に知った時は、どうしてなのだろうという疑問が湧いてきたのだけれど、これで腑に落ちてきた。自然治癒力という概念は、その民族の自然観、人間観、生命観と密接に関わっていたのだ。

  そして石川氏の著作内容から、西洋では、人間は自然の一部という考え方はなく、自然は自分の外側にあるもので、人間の支配の対象であり、そこには、砂漠という厳しい自然環境から生み出された一神教ユダヤ教キリスト教イスラム教)に見られる自然観が基にあることを挙げています。

その上で、岡部氏は「西洋的自然観に自然治癒力がない」ことを、「東洋的自然観と自然治癒力の関係」を対比させて述べていました。そして、氏の著作の三冊『生命思考』・『共創思考』・『西と東の生命観』が紹介されていたのです。

 このような機縁を通じ、2008年の4月から石川光男氏の著作により学ぶことになりました。こうして、西洋と東洋の自然観・世界観の相違、そして「科学とは何か」を知ることになり、「近代科学の哲学性」という世界に導かれていったのです。

 井深大氏の思想に続き、湯浅泰雄氏の著作から東洋宗教の「身体行」の特質を、続いて出会った石川光男氏の著作からは、物理学・生物学とともに、氏が展開する東西の比較文化論である「西と東の世界観の相違」を学ぶことができました。

 比較文化という分野にはかねてより強い興味を持っていましたが、ようやく巡り合うことができたのです。

  石川氏は生物物理学が専門の大学教授ですが、一般の物理学の先生と違うのは、学際的で洋の東西に精通されていることです。

 氏が学生時代から抱いていた関心は、元来「生き方」とは無縁な科学と「生き方」の接点を探ることでした。そのような関心が「生命思考」と「共創思考」という思想となりました。

 氏は、自身が提唱する「生命思考」について、その著のまえがきで次のように述べています(『生命思考』)。

 まえがき

…生命の潜在的な能力を生かす道を探ることを目的としている。自然を支配するのではなく、自然の摂理に従って生命を生かしきる道を探る ―― これは東洋文化の伝統的な考え方である。…生命本来の姿に気づき、それを出来るだけ生かすことを基本とする。それは自分という個体を生かす道であると同時に、他を生かす道である。また自分という個体を支えてくれている内外の命の働きを出来るだけ大切に生かす道でもある。

  この短い文章には、近代科学の特徴(自然支配)と東洋宗教のあり方(自他一如)が端的に示されています。

 野口整体の基盤である、全生思想の「全生」とは、「生命を全うする」というものです。石川氏は文中で、「生命を生かしきる道…は東洋文化の伝統」と表現し、東洋思想を良く理解されているのです。このような野口整体との一致点は、石川光男氏の思想に深く取り組んだ理由の一つです。