禅文化としての野口整体 活元運動 第二章 一 1野口整体で解った体の賢さ― 「私の体は、私の頭より賢い」①
①2008年6月の個人指導でのこと― 妊娠初期に起きたショックなできごと
Nさんが二番目の子どもを妊娠していた時の指導例です。
この時(2008年6月)、十カ月ぶりの個人指導でしたが、彼女の身体を観察すると、腰椎の様子が全くはっきりしない状態になっていました。
Nさんは、「一人で活元運動をしてみたのですが、準備運動の時もどこが腰椎なのかが分からない感じで、きちんとした運動が出ませんでした」と言いました。彼女は、腰椎が身体感覚で捉えられなくなっていたのです(身体各部がはっきり感じられること(身体感覚が高度)が良い状態=整体。また、本人の意識(心)が明瞭な時、背骨(特に腰椎)がはっきりしているのが観察できる)。
活元運動経験者であっても、強い不快な感情を体験し、その後ストレスが持続している(不快情動の)状態では、活元運動が十分なものとはならない、または出ないことがあるのです。
その理由として思い当たることは、妊娠初期のある日(3月31日)「どっきり、びっくり」して「パニックになった」ことがあったと、私に語った内容は次のようでした。
彼女はその日偶然、勤め先の学校で人事資料を目にして、一年生の「担任」になったことを知りました。Nさんは次の年度に先立ち、管理職に「妊娠したこと」を伝えてあったので、「担任から外れる」と思っていたのですが、新年度から二人担任制となり、急きょ担任をすることになってしまったのです。
それで非常に驚き、その時「心臓がドキドキして気がグーっと上に上がり、胸が詰まる感じになった」と訴えました。意に反する受け入れ難い事態に遭遇し、不適応な精神状態に陥ったのでした。
その後、定年間近の先輩が、一年生よりは楽な二年生担任と代わってくれることになり、彼女は一安心しました。
しかし「その人の最後の一年を私の都合で変えてしまったことが申し訳なく、自分さえ我慢すればよかったのかも、今から元に戻してもらおうか?いや、自分と赤ちゃんのためには仕方がないと悩んでしまった」とのことで、発表があったその日を、「職員会議で変更案を見て少しはほっとしたものの、やはり、迷いが残ってすっきりしない一日だった」、と振り返っていました。
妊娠中の彼女は、「担任を引き受ける」ことに不本意な気持ちのまま、新年度の態勢に組み込まれていき、「自分の位置が定まらない緊張の日々が続いた」とのことです。
Nさんは新しい事態に適応できない状態を身体に残した(主体性が失われた)まま、体調不良が続いていたのです。