野口整体 金井蒼天(省蒼)の潜在意識教育と思想

金井省蒼(蒼天)の遺稿から説く「野口整体とは」

禅文化としての野口整体Ⅰ 活元運動 第三章 二6「自分で作った自分」を超える― 要求を実現する生き方

 

 今までの私は、何か失敗すると、何日も引きずってしまい、全く関係ない過去の嫌な体験までもいろいろと思い出し、くよくよして落ち込んでいました。

 また、これまでの二十年近い会社生活の中では、仕事が増やされるのも減らされるのも、一切なんの文句も意見も言わずに、ただ上司から言われるままに受け入れてきました。

 ですが、今回は今までとは違い、「私は、自分の意思で外国語に携わる仕事を継続したい!」と、はっきり自覚しました。

「上司に私の思いを伝える」という決意について、金井先生にお話をした日の指導の後で思い出したのですが、小さい頃の私は、電車内で見かけた外国人に全く臆せず話しかけたり、当時は数少ない英語番組を誰に強要されることなく見たりしていました。

 また海外旅行先でも、言葉が不確かながらも、現地の人と楽しくコミュニケーションをとることができました。いつからかははっきりしませんが漠然と外国に住んでみたいな、外国語を扱う仕事ができたらいいなと幾度となく考えたことがありました。

 とは言っても、なかなか勉強も進まず、会社での試験の成績も良い結果が出ず、「外国語を使う仕事や海外に関わる仕事がしたい」などと自分から言う資格がないと考え、与えられた仕事だけを静かにこなしていたのです。

 長い会社生活の中で、現在の部署で初めて外国語に携わる仕事につけたのですが、これも自分から希望したのではなく、担当にされたからというあくまでも受身な態度でした。好きな仕事なのに、「この仕事がやりたい」と言うことは分不相応だと考えていました。

 それまでの私は、100%完璧にできる自信がなければ、自分から「やりたい!やらせてください!」と言ってはいけないと思っていました。「自分から言い出すからには失敗は許されない。やりたいなんて言ったら、周りからなんていわれるかわからない。やっぱり私には無理。出来やしない。」とやる前から自分で自分の枠を作っていたのです。

 失敗が怖くて逃げていたのかもしれません。また実際にやってみても、「絶対にうまくいくわけない。ほらっ、やっぱり出来ないじゃん」と、失敗するように、無意識に心が動いていた気がします。そうしているうちに、本当に自分がやりたいことにも気づけなくなっていたのかもしれません。

 金井先生のご指導から数日後、上司に「今回の対応はうまくできませんでしたが、このまま海外に関わる仕事を続けたいです」と伝えたところ、「あなたのことは信頼しています」とあっけなく会話は終了しました。

 仕事に対して“やりたい” 、“楽しい” 、“好きだ ”という気持ちが湧いてきたことに驚き、自分の気持ちを正直に口にできたことが嬉しく、そんな自分の変化が面白いと思いました。また今まで、周りの人からの評価や、相手が考えていることと違うことを自分が勝手に想像して悩んだり、心配していたことを実感しました。今回は、あれこれ考えずにストレートに自分の思いを上司に伝え、爽快な感じすらしました。

 それまでは、何か嫌なことがあると、会社を辞めたいとすぐに考えてしまった私ですが、活元会で次の文章に触れたことで、そのような思いが自然になくなっていきました。

「生きることの欣び」

働くことは人の裡なる要求であり、人間は絶えず働きたく、力を出しきって生きたいのであります。

「語録」(『月刊全生』1981年2月号2頁)

めしは旨いし、働くのは快いし、眠るのも糞をするのも、気持ちがよいものだ。

 

 野口先生や金井先生が仰るとおり、失敗を避けず、「失敗しても立ち止まらずに進んでいけばいいのだ」「失敗しながら進んで行きたい!」と考えるようになりました。