野口整体 金井蒼天(省蒼)の潜在意識教育と思想

金井省蒼(蒼天)の遺稿から説く「野口整体とは」

第三章 自分を知ることから始まるユング心理学と野口整体

第三章 自分を知ることから始まるユング心理学と野口整体 三5

自分で自分のことを考える「手伝い」をする立場―「気で相手を観る」ことを身に付ける 河合氏は「心理療法を行う立場」について、次のように続けています(『「日本人」という病』)。 病のあとに発揮される創造性 物理学であれば、私が客観的に研究した物の…

第三章 自分を知ることから始まるユング心理学と野口整体 三4

心を受け取る「他者」がいることの意味―「想念と自分」の間に隙間ができることで、自分のことを考える力を養う 河合隼雄氏は「自分で自分の研究をする」際に、他者が介在する意味について、次のように述べています(『「日本人」という病』)。 話の聞き手が…

第三章 自分を知ることから始まるユング心理学と野口整体 三3

自分を知る智(自己知)」はいかに啓かれるか

第三章 自分を知ることから始まるユング心理学と野口整体 三2② 

人の感じる〈心のはたらき〉にある「神」― つながりを教えていた「神話の知」を失った現代 河合氏は同著で次のように続けています。 1 科学の知 「関係性の回復」はどうしてなされるのか。これに対して中村雄二郎は、われわれは科学の知のみではなく、「神…

第三章 自分を知ることから始まるユング心理学と野口整体 三2①

「関係性」を失わせる科学至上主義 ① 科学的方法論に頼ることでもたらされた関係性の喪失 科学というものは、研究対象(物)より自分(の心)を切り離す(切断)という「物心二元論」で成り立っています。これを「客観的」観察と言い、それは、物を対象化し…

第三章 自分を知ることから始まるユング心理学と野口整体 三1

三 自身の心を啓く道筋が他者の心を啓く道筋となる― モノを知る科学的方法とは違う「人間を知る」こと 自分を「のり超えた力」が相手の潜在意識を理解し導く力となる ― 師が「自分の心を観る」ことから始まった「病気は心の訴えである」という思想 師野口晴…

第三章 自分を知ることから始まるユング心理学と野口整体 二4

野口晴哉先生には、二歳の時に鍼灸師の子どものいないおじ夫婦に養子に出され、その後夫婦に子どもができたために帰された、という生い立ちがあります。おじ夫婦には一人子として可愛がられ、映画や音楽にも触れることができたとのことですが、戻った生家は…

第三章 自分を知ることから始まるユング心理学と野口整体 二3 

河合隼雄氏がフルブライト留学生としてアメリカに留学した当時、海外でもユング心理学(分析裡心理学)は少数派でした。 以前読んだアンドルー・ワイル著『癒す心、治す力』という本には、その当時、精神分析を行う精神科医が「アルケミスト(錬金術師)」と…

第三章 自分を知ることから始まるユング心理学と野口整体 二2

前回に続き、河合隼雄氏のユング心理学と野口整体の潜在意識教育との共通性についての内容に入っていきます。 臨床心理の難しさは客観ではなく主観の歪みに焦点を当てる所にあって、この主観の問題に一緒に取り組むために必要な条件が「自分のことから始まる…

(補)全生思想 野口晴哉『治療の書』より

中巻冒頭「全生思想」の中から、第三章に沿った部分を紹介します。 (金井) 師は治療を行っていた時代に、「治療する人」の心得として、次のように説いています(『治療の書』)。これは、整体指導者において大切な指導力を養う心のあり方で、「治療」とい…

第三章 自分を知ることから始まるユング心理学と野口整体 二1

二 心理療法に必須である「自分を知ること」(潜在意識を理解する)を、河合隼雄氏に学ぶ―「自分」を探求するためのユング心理学 人間を理解することは「自分を知ること」から始まる― 科学的診断と人間に向き合うこと 河合隼雄氏は1952年、京都大学理学部数…

第三章 自分を知ることから始まるユング心理学と野口整体 一5

師野口晴哉の説いた潜在意識― 潜動意識・現動意識 師野口晴哉は、現在意識・潜在意識・無意識とはどのようなものかについて、次のように述べています(『野口晴哉著作全集第四巻』)。 三、心の構造 心の構造は、こうするとか、考えたり感じたりする表面を通…

第三章 自分を知ることから始まるユング心理学と野口整体 一4

深層心理学で「人間を理解する」とは― 客観的に、また一体となって相手を理解する 河合隼雄氏は深層心理学を学ぶ態度について、次のように述べています(『対話する生と死』臨床心理士養成のための基本的課題)。 一 臨床心理士の特性 …次に、臨床心理学にお…

第三章 自分を知ることから始まるユング心理学と野口整体 一3 

ユング心理学と出会う 石川光男氏の著作を通じて「科学の哲学性」を学び始めた少し後の2008年5月、指導に通う植月賢二君が『ケルト巡り』(河合隼雄)という本を持ってきてくれたのが縁で、ユング心理学を学ぶことになりました。 指導に通う人の中でユング心…

第三章 自分を知ることから始まるユング心理学と野口整体 一2 

西洋医療(近代科学)と人の心との関係 第二章(一 1③・2、三 1)で述べたように、野口整体が創立された昭和初期という時代背景には、明治以来の、政府による西洋近代医学の急激な普及がありました。 江戸時代までの多元的だった日本の医療は、1874年(明…

第三章 自分を知ることから始まるユング心理学と野口整体 一1

今日から第三章に入ります。 野口晴哉先生が、野口整体と宗教性について述べている文章がありますので、最初に紹介したいと思います(『月刊全生』)。 全生という理念で天心の生活を展開していこうとする。これは宗教というより哲学的なものなのであります…