野口整体 金井蒼天(省蒼)の潜在意識教育と思想

金井省蒼(蒼天)の遺稿から説く「野口整体とは」

2020-05-01から1ヶ月間の記事一覧

第五章 野口整体と心身医学の共通点一6①

体の二重構造から心の二重構造(意識・無意識)を理解する道が開かれた ―意識と無意識をつなぐ身体感覚と情動 6は、身体感覚と情動について生理学的に論じた内容で、こみいっているため、補足を入れながら二回に分けて紹介します。 ①意識と無意識を生理学的…

第五章 野口整体と心身医学の共通点 一 5

条件反射理論という超唯物論的な研究が今回の内容です。 第四章で紹介したユングが、研究者としての地位を確立したのは、条件反射理論を応用して、無意識とコンプレックスの存在を立証する検査法(言語連想実験)の開発でした。 これは、「お金」「母」など…

第五章 野口整体と心身医学の共通点 一4

近年、アメリカの神経学者・精神科医アントニオ・ダマシオの情動についての新しい考え方が注目されています。これは、脳からではなく「身体から情動が起こる」という立場に立つ見方です。 ダマシオが論じている情動と感情についての注目すべき点は、情動が意…

第五章 野口整体と心身医学の共通点 一 3

今のように感染症のパンデミックが問題になると、病原となるウイルスをターゲットにして、ワクチンや治療薬開発に全力を挙げる研究が脚光を浴びるようになります。 フランスのパスツール研究所、ドイツのロベルト・コッホ研究所などは、「病原細菌学説」の基…

第五章 野口整体と心身医学の共通点 一 2

野口整体と西洋の「心身二元論」的思考― 東洋と西洋の人間観の伝統の相違 心身二元論とは、人間を精神と肉体に分けて捉え、精神とは「理性」であり、理性が人間の魂(心)とされました。心身二元論はデカルトによって確立されましたが、歴史的に西洋思想の伝…

第五章 野口整体と心身医学の共通点 一 1

一 「心身分離」的見方から「心身相関」的観方へ ― 二元論から一元論の医学へ 今回から始まる第五章は、本では「近代科学的西洋医学と深層心理学の出会い・「心身医学」」という章名ですが、ブログではテーマをハッキリさせるため、変更しました。 新型コロ…

第四章 野口整体とユング心理学― 心を「流れ」と捉えるという共通点 補足3・4

補足3 アドラーの個人心理学 アドラーはウィーンに生まれ、1902年フロイトの研究サークルで精神分析の初期の運動に参加しましたが、フロイトとの意見の相違のため、1911年離別しました。アドラー心理学は個人心理学という名称です。 アドラーは、人間が抱え…

第四章 野口整体とユング心理学― 心を「流れ」と捉えるという共通点 補足2

補足2①ユングとフロイトの相違 現在、精神身体現象として知られる情動とその身体(生理学)的変化が、「フロイトの抑圧理論とコンプレックスの存在を立証する(註)手がかりになる」ことを、最初に認識したのがユングです。 (註)ユングは言語連想実験で言…

第四章 野口整体とユング心理学― 心を「流れ」と捉えるという共通点 補足1

補足1・2・3の内容は、深層心理学の基礎を築いたフロイト、そ弟子のアドラーの心理学のまとめです。章の中に入っている内容ではありますが、金井先生の原稿でフロイト・アドラーに深くコミットするわけではないので、時間のある時に読んでみてください。 …

第四章 野口整体とユング心理学― 心を「流れ」と捉えるという共通点 四 7

自己知と自己教育の重要性―自我から自己への中心の移動- 無意識の目的論的なはたらきを理解していく過程上で、ユングが特に着目したのは、心の自然治癒力とも言える「無意識の補償(足りないものを補う)作用」です。 補償作用とは、その人が生きていく上で…

金井先生の命日に寄せて

2015年、熱海道場で行われた講義で。掛け軸は野口晴哉先生の揮毫。 雲の中にも蒼き空はある也 陽はいつも輝いている也 怒りの中 悲しみの中 煩いの中に喜怒哀楽を見ず 輝しき光を見 人の生くるはたらき悟るは 養生といふこと知る人也 野口晴哉 (金井省蒼『…

第四章 野口整体とユング心理学― 心を「流れ」と捉えるという共通点 四 6

精神科医であったユングは、心を病むことについて次のように述べています。 「あらゆる病気と同じように、神経症も適応不全の症状です。なんらかの障害(体質上の弱さや欠陥、間違った教育、良くない体験、不似合いな態度など)のために、人生がもたらす困難か…

第四章 野口整体とユング心理学― 心を「流れ」と捉えるという共通点 四 5

クロノスとカイロスのところで紹介した『モモ』(ミヒャエル・エンデ)では、モモは生命時間を司るマイスター・ホラに抱かれて自分の心の奥底にある時間のみなもとを見に行きます。 そこには池があって、大きな振り子が刻むゆっくりしたリズムに合わせ、水の…

第四章 野口整体とユング心理学― 心を「流れ」と捉えるという共通点 四 4

ユングの「未来から現在を考える」目的論と野口整体の気の生命観 東日本大震災の後、被災した人の中に PTG(心的外傷後成長)というものが多くの事例で起きたことが世界的に注目されました。 PTGはユングの説いた病症と心の成長に対する考え方と多くの点で共…

第四章 野口整体とユング心理学― 心を「流れ」と捉えるという共通点 四 3

今回はユング心理学の心的エネルギー論が中心となります。 ここで目的論という言葉が出てきますが、この点については下巻『野口整体と科学的生命観』に詳述されているので、参照してください。 ユングの心的エネルギー論 深層心理学は無意識を研究するもので…

第四章 野口整体とユング心理学― 心を「流れ」と捉えるという共通点 四 2

正心正体で充実した時間を生きる― 全生とは一刻一刻を、全力を以って生きること カイロスは、意識的に管理したりすることのできない時間です。産科の医師が「土日は休みだから、お産を金曜日に済ませる」というように、「人間の誕生」までをクロノス時間によ…

第四章 野口整体とユング心理学― 心を「流れ」と捉えるという共通点 四 1③

二つの時間・クロノスとカイロス― 一刻一刻を、全力を以って生きる ③東洋の気の生命観とカイロス 湯浅泰雄氏はクロノスとカイロスについて、次のように述べています(『宗教と科学の間』)。 3 時の動きの内にはたらくもの …カイロスとは要するに、「時は熟…

第四章 野口整体とユング心理学― 心を「流れ」と捉えるという共通点 四 1②

前回引用した、生命時間と貨幣経済の問題を主題にした児童文学『モモ』(ミヒャエル・エンデ)では、人間の生命時間を司るマイスター・ホラという不思議な人が登場します。 マイスター・ホラは、あらゆる人間の時間の源である「時間の国」にやってきた主人公…

第四章 野口整体とユング心理学― 心を「流れ」と捉えるという共通点 四 1①

四 心の時間と気の流れ ーユングの心的エネルギー論と野口整体の気の観方 今回のテーマは「時間」です。東洋的に「時の流れ」と言ってもよいでしょう。 私が塾生になって最初の年だったと思いますが、金井先生が整体指導を教える練成会で、先生が塾生の指導…

第四章 野口整体とユング心理学― 心を「流れ」と捉えるという共通点 三 8

自我の主体性発揮と「感受性を高度ならしむる」 Mさんの指導例にもあるように、私の個人指導では、いつしか活元運動が中心となりました。 その指導の中で、始め尋ねられても思い出せなかった、体を偏らせている不快情動の内容(陰性感情)は、愉気法によっ…

第四章 野口整体とユング心理学― 心を「流れ」と捉えるという共通点 三 7

今日と明日は、個人指導と心の成長が主題です。私にとって、野口整体を金井先生の下で学んだ最大の収穫は、自分が成長するとは、大人になるとはどういうことかを学んだことだったと思います。 それは、何かをそつなくこなしたり、表面的な感情的同調ができる…