野口整体 金井蒼天(省蒼)の潜在意識教育と思想

金井省蒼(蒼天)の遺稿から説く「野口整体とは」

2019-05-01から1ヶ月間の記事一覧

目的論を知って「修行」を理解する―気の思想と目的論的生命観 4

修行は無意識を啓くためにある 鈴木大拙の内容に入る際、ダライ・ラマ法王のことについて少し触れましたが、法王は各派に共通する仏教の基本的な考えについて述べる際、次の偈(仏典の中の詩句)を引用していました。 仏陀たちは有情がなした不徳を水で洗い…

型の喪失と日本人―気の思想と目的論的生命観 3

知性だけでは分からないことと、「型」という身体性 今回は、前回少しだけ引用した養老孟司氏の文章を紹介します。 これは、オウム真理教事件が起きた当時、養老氏は東大教授であり、氏は教え子に当たる東大出身の関係者もいたことに、非常に衝撃を受けたと…

腰・肚の心理的意味―気の思想と目的論的生命観 2

意識と無意識をつなぐための「型」 日本の身体作法は腰と肚を中心としており、今でも茶道や武道など、様々な稽古事を教える時は、「型」という動作時の基本の姿勢を通じてそれを教えています。 近代以前は、「型」という定義をしていたわけではありませんが…

修行とは何か―気の思想と目的論的生命観 1

修行とは何か 5月8日のブログで、私は「金井先生の説く目的論は、「修行とは何か」を説くことに主眼があった」と述べました。 今回から、下巻第七章 背骨と日本人の感性― 気の思想と目的論的生命観の内容に入って行こうと思います。 この内容は、野口整体の…

野口整体の身体行と自我の再構成―風邪の効用29

河合隼雄氏は、先に引用した文章の終わりで、「自我はその形成過程において、それを取りまく文化や社会の影響を受けるということと、自我はあくまで完結していない常に変化の可能性をもった存在であるということである。」と述べています(『母性社会日本の…

理性に偏った自我から、「感ずる」自我へ―風邪の効用28

無心と「感ずる」ことのできる自我 金井先生は、野口整体の活元運動、整体指導における身体的側面が、心に関与するためにあることを常に説いていました。 今回から、現在の自分の心のあり方=自我のあり方という観点から、無心になることを通じて、今の自我…

自我の再構成をじねんに促す心療整体―風邪の効用 27

自我の再構成と心の成長 今回は「自我の再構成」について、先生の原稿のみで構成しました。 見出しはブログ用に新しくつけています。 (金井) コンプレックスと自我 ユング心理学で「自我の主体性を脅かすもの」(前出『コンプレックス』から)が「コンプレ…

コンプレックスと自我―風邪の効用 26

コンプレックスと向き合うための自我の強化 金井先生は、下巻でNさんが個人指導を受け始めたころの心理について次のように述べています。 ユングの「コンプレックス」は、「感情複合」と訳されています。第五章で述べたNさんの心理的な病症、生理的な病症…

自分を理解するために必要な自我とは―風邪の効用 25

自分を理解するために必要な自我とは ここで、中巻と下巻にわたって扱われている「自我の再構成」と「自我の強化」についてまとめておこうと思います。 風邪の効用 23で湯浅泰雄氏の文章を引用しましたが、その中で湯浅氏は次のように述べています。 ・・・外界…

病症経過と身心の成長―風邪の効用 24

病症経過と身心の成長 (金井) 西洋医学では、体に起きてきた病症というものを、正常と異常という二分法(二元論)で捉え、症状が無くなれば正常(=健康を取り戻した)という考え方です。 野口整体では、病症を肯定的に捉え、病症を経過することで体が治る…

「個性化の過程」を〔身体〕に観た―風邪の効用 23

腰椎三番が目覚めた身体と生き方の変化 Nさんは公開講座の後も個人指導を続け、その一年後(2010年2月13日の個人指導)で、変化の時を迎えました。 その時のことを、金井先生は次のように述べています。 さらに心のはたらきが出てきたこの時、Nさんの身体…

(補)自我とは

自我の重要性 自我とは「私」という意識のことです。心の原動力は無意識・潜在意識にありますが、その内容を意識化し、「自分のことを考える(内省する)」のは自我の働きです。中巻『野口整体とユング心理学』から、自我についての説明を紹介します。以下は…

病症経過から成長へ―風邪の効用 22

病症経過から成長へ 2006年2月から個人指導を始めたNさんは、金井先生の第二回公開講座(於熱海道場2009年2月28日)に参加しました。 その頃、Nさんは線維筋痛症を経過し、健康を取り戻しつつありました。人間関係も広が って、かつてないほど「生きている…

病症と生き方の関係―風邪の効用 21

病症と生き方の関係 これから中心となるNさんという女性は、「線維筋痛症(全身に激しい痛みが生じ、原因不明の病気。心身症の一つとも考えられている)」に悩み、個人指導を受け始めました。 個人指導を始めて四年後の2010年2月、Nさんに金井先生が「深く…

主体性の目覚めが身体を変える―風邪の効用 20

一 科学と主体性を失った現代人の身心― 身心一如の主体性を育む個人指導 今回から、長く金井先生の個人指導を受けていた女性の指導例を中心とした下巻第五章 主体性の目覚めが身体を変える―身体に観る「個性化の過程」に入ります。 この章には、本人に書いて…

熟睡による潜在意識の整理―風邪の効用 19

金井先生は、野口整体の活元運動と個人指導は「身体に停滞した負の感情エネルギーが取り除かれることで、「正体・正心」を取り戻すのが目的」と説きました。 また、観念要素の更改(潜在意識のクリーニング)には自分という意識と身体との関係が密接になるこ…

開放系の人間観と自然治癒力―風邪の効用 18

身心一如の東洋的生命観と天風哲学 以前、上巻『野口整体と科学』についての内容で紹介した石川光男氏は、子どもの頃から体が弱く、学生時代からいろいろな健康法を学ぶうち天風哲学に出会いました。 そして「心と身体を別々に考えてはいけない」ことを知り…

(補)心と体をひとつに

生命を正しく扱うとは 作家の故・宇野千代氏は執筆に行き詰まった時、天風師の指導を仰ぎ、執筆活動を復活させました。宇野氏がまとめた『天風先生座談』から、かつて結核を病んでいた天風師がインドのカリアッパ師から教わった大切なことについての文章を紹…

「念ずれば現ず」潜在意識と不快情動―風邪の効用 17

念ずれば現ず 今回は、潜在意識化した不快情動が現実にどのように作用するのか?についてです。 天風哲学には「観念要素の更改」という教えがあって、潜在意識内の雑念妄念を生み出す「観念要素」をクリーニングしていかなければならないと教えています。天…

心を更新し宇宙真理に順応する―風邪の効用16

身心を更新することの意味 金井先生の個人指導は、身心が陰性感情に捉われたまま止まっている状態を切り替えることが中心となっていました。これにはどういう意味があるのか、を明快に表現してくれるのが天風哲学でもあったのです。 また、整体指導では指導…

(補)野口整体の説く「自然」

補足として、『偶感集』(全生社)から、野口先生の説く「自然」についての文章を紹介します。 それ以前 天衣無縫は美ではない。そこに自然の秩序が現われることによって美を感じる。 美は秩序であって、抛ってあるところにあるのではない。 一片の花にも美…

「天心」と「積極心」―風邪の効用 15

潜在意識のクリーニングと自然健康保持 金井先生が天風哲学に魅力を感じたのは、潜在意識の問題を「自分で取り組む心の行」として教えの中心におき、かつ明快に説いているところにありました。今回はそのことについてお話したいと思います。 天風哲学では「…

5月8日は目的論の日―中村天風師の心身統一道(風邪の効用14)

中村天風師の天風哲学と金井先生 今回から、中村天風師が説いた天風哲学に入ろうと思います。 金井先生が天風哲学に出会ったのは、野口晴哉先生が亡くなった後数年後の事でした。野口先生が亡くなった当時、先生はまだ28歳でしたから、精神的な導きというか…