野口整体 金井蒼天(省蒼)の潜在意識教育と思想

金井省蒼(蒼天)の遺稿から説く「野口整体とは」

禅文化としての野口整体Ⅰ 活元運動 第三章 二 5 仕事上のトラブルがやる気を呼び起こす

 個人指導に伺う時、熱海までの往復で『病むことは力』や『「気」の身心一元論』を読むことがあるのですが、たまたま開く頁がその日の指導と関連していることが何度もありました。

 また読むたびに違う気づきがあります。

 先日、個人指導に向かう電車の中で、ふっと「私は海外の人や物に関わる仕事が好きだ!誰に何と言われようとやり続けたい!上司に言ってみようかな…」という思いが浮かびました。

 そのことを頭の片隅に置きながら、『「気」の身心一元論』(二三一頁)を読んでいたところ、偶然次の文章が目に飛び込んできて、「これだっ!」と気づいたのです(「潜在意識教育 意識以前にある自分」『月刊全生』)。

自分で作った自分

 私たちが今「自分」と考えているもの、あるいは自分はこういうことができる、これこれこういう人間であるというように、自分が理解している自分はほんとうの自分の全部ではない。生まれてから、意識し経験し、体験してきたことの総合が自分だと、皆思っている。つまり考えようによっては、それは生まれてから自分で作り上げた自分である。

…意識して作られた自分、あるいは他人の言葉によって「そうだ」と思い込んだり、自分の都合で「そうだ」と思い込んだり、自分自身で「俺にはこれ位の力しかない」とか、「俺にはこれだけしか力が発揮できない」とか言うように、いつの間にか自分に限界をつけて、これこれこういうものが自分というものの実体だと、自分で思い込んでいる。…

 今までに何度もこの本にある「自分で作った自分」の文章は読んでいたはずなのですが、それまでは特に感じることはありませんでした。しかしこの日、指導のため、来宮駅で迎えの車を待っていた時に、ストンと腑に落ち、迷いがなくなりました。個人指導が始まると直ぐに、金井先生に自分の決意を話していました。それは、次のようなことを経験したからです。

 私は、2009年春にお客様対応部門に配属され、2011年秋頃より海外からの電話と手紙対応を担当することになりました。

 主にメール対応で電話対応は年に5本程度、通常は売り込み連絡なのですが、指導に伺う三日前に受けた電話(英語)はそれまでとは全く違うものでした。それは、関係会社A社の社長を装い、グループ会社B社の社長の携帯電話の番号を聞き出そうとするものでした。

 その時の電話は「現在、成田空港にいる。B社の社長と会う約束をしているが、飛行機遅延でスケジュールが変更になった。だからどうしてもB社の社長と連絡を取る必要がある。この後すぐに飛行機に乗るから急いでいる。いま、この電話で彼の電話番号を教えて欲しい」という内容でした。

 威圧的でせっぱつまった物言いにすっかり動転してしまい、相手の名前を呼び捨てにしたり、丁寧な言葉を使わなかったり、散々な対応でした。

 切電後、念のためにA社、B社に確認したところ、そんな約束はそもそもなく、 “A社の社長になりすました電話”と判明しました。ですが、今度はA社から「うちの会社の社長の名前を騙るなど許せん!録音テープがあったら聞かせて欲しい」と言ってきたのです。

 録音テープはありますが、聞かせてひどい対応だと思われたら大変だと思い、上司に「私の応対がきちんとできていなかったので、米国人に録音を聞かせるなんてできません」と、完全に気が頭に上がった状態で訴えてしまいました。

 録音を文字におこすことでなんとかテープは出さずにすみましたが、上司と話す際にも、とても動揺し声も上ずってしまいました。もう何もかもが惨憺たる有り様でした。