野口整体 金井蒼天(省蒼)の潜在意識教育と思想

金井省蒼(蒼天)の遺稿から説く「野口整体とは」

ユング

第五章 野口整体と心身医学の共通点 二2補足 心身一体と魂の不滅はなぜ矛盾するのか

ライサー氏の心身観にある宗教的背景 ライサー氏の「心身一体の考えに徹することは、不死への望みを断ち切ることになる」というところはちょっと分かりにくく、生前、金井先生も理解しきれないところがあって、このように思うのはなぜだろう?と何度か話題に…

第五章 野口整体と心身医学の共通点一10②

体の外側(体表)から観察することの意味 フロイトは、「自我」という心のはたらきは皮膚に基盤を持っていると考えていました。生まれたばかりの赤ん坊は、最初は母親に抱かれた時の一体感を皮膚感覚を通して感じます。その後、自分と母親が分離した存在であ…

第五章 野口整体と心身医学の共通点一9

現代人の心の問題を考えた深層心理学者は東洋の瞑想法の意義を捉えた 湯浅氏は『気・修行・身体』(第一章 東洋的身心論と現代 7)で、心身相関的見方を開拓した西洋の深層心理学者や精神医学者の中で、東洋の宗教的修行法(身体技法としての瞑想法)に関心…

第五章 野口整体と心身医学の共通点 一 5

条件反射理論という超唯物論的な研究が今回の内容です。 第四章で紹介したユングが、研究者としての地位を確立したのは、条件反射理論を応用して、無意識とコンプレックスの存在を立証する検査法(言語連想実験)の開発でした。 これは、「お金」「母」など…

第四章 野口整体とユング心理学― 心を「流れ」と捉えるという共通点 補足3・4

補足3 アドラーの個人心理学 アドラーはウィーンに生まれ、1902年フロイトの研究サークルで精神分析の初期の運動に参加しましたが、フロイトとの意見の相違のため、1911年離別しました。アドラー心理学は個人心理学という名称です。 アドラーは、人間が抱え…

第四章 野口整体とユング心理学― 心を「流れ」と捉えるという共通点 補足2

補足2①ユングとフロイトの相違 現在、精神身体現象として知られる情動とその身体(生理学)的変化が、「フロイトの抑圧理論とコンプレックスの存在を立証する(註)手がかりになる」ことを、最初に認識したのがユングです。 (註)ユングは言語連想実験で言…

第四章 野口整体とユング心理学― 心を「流れ」と捉えるという共通点 四 7

自己知と自己教育の重要性―自我から自己への中心の移動- 無意識の目的論的なはたらきを理解していく過程上で、ユングが特に着目したのは、心の自然治癒力とも言える「無意識の補償(足りないものを補う)作用」です。 補償作用とは、その人が生きていく上で…

第四章 野口整体とユング心理学― 心を「流れ」と捉えるという共通点 四 6

精神科医であったユングは、心を病むことについて次のように述べています。 「あらゆる病気と同じように、神経症も適応不全の症状です。なんらかの障害(体質上の弱さや欠陥、間違った教育、良くない体験、不似合いな態度など)のために、人生がもたらす困難か…

第四章 野口整体とユング心理学― 心を「流れ」と捉えるという共通点 四 5

クロノスとカイロスのところで紹介した『モモ』(ミヒャエル・エンデ)では、モモは生命時間を司るマイスター・ホラに抱かれて自分の心の奥底にある時間のみなもとを見に行きます。 そこには池があって、大きな振り子が刻むゆっくりしたリズムに合わせ、水の…

第四章 野口整体とユング心理学― 心を「流れ」と捉えるという共通点 四 4

ユングの「未来から現在を考える」目的論と野口整体の気の生命観 東日本大震災の後、被災した人の中に PTG(心的外傷後成長)というものが多くの事例で起きたことが世界的に注目されました。 PTGはユングの説いた病症と心の成長に対する考え方と多くの点で共…

第四章 野口整体とユング心理学― 心を「流れ」と捉えるという共通点 四 3

今回はユング心理学の心的エネルギー論が中心となります。 ここで目的論という言葉が出てきますが、この点については下巻『野口整体と科学的生命観』に詳述されているので、参照してください。 ユングの心的エネルギー論 深層心理学は無意識を研究するもので…

第四章 野口整体とユング心理学― 心を「流れ」と捉えるという共通点 四 2

正心正体で充実した時間を生きる― 全生とは一刻一刻を、全力を以って生きること カイロスは、意識的に管理したりすることのできない時間です。産科の医師が「土日は休みだから、お産を金曜日に済ませる」というように、「人間の誕生」までをクロノス時間によ…

第四章 野口整体とユング心理学― 心を「流れ」と捉えるという共通点 四 1③

二つの時間・クロノスとカイロス― 一刻一刻を、全力を以って生きる ③東洋の気の生命観とカイロス 湯浅泰雄氏はクロノスとカイロスについて、次のように述べています(『宗教と科学の間』)。 3 時の動きの内にはたらくもの …カイロスとは要するに、「時は熟…

第四章 野口整体とユング心理学― 心を「流れ」と捉えるという共通点 四 1②

前回引用した、生命時間と貨幣経済の問題を主題にした児童文学『モモ』(ミヒャエル・エンデ)では、人間の生命時間を司るマイスター・ホラという不思議な人が登場します。 マイスター・ホラは、あらゆる人間の時間の源である「時間の国」にやってきた主人公…