野口整体 金井蒼天(省蒼)の潜在意識教育と思想

金井省蒼(蒼天)の遺稿から説く「野口整体とは」

2020-01-01から1年間の記事一覧

年内の記事更新について

2020年内の『野口整体と科学』の原稿upは、序章一6で終了いたします。 2021年元旦から始めますので、ご一読いただけましたら幸甚です。 それでは皆様、良いお年を。 近藤佐和子

野口整体と科学 序章一6

中巻『野口整体とユング心理学』の序章 野口晴哉生誕百年―臨床心理による整体指導 では、上村浩司医師(1965年生)との対話を紹介しました。 その冒頭で、上村氏は「西洋医学というのは、科学的な物の見方が中心なんです。科学とは目に見えるものを中心とし…

野口整体と科学 序章一5

金井先生は、野口整体を教える上で共有できる基盤がないとしたら、どうすればよいのかを考えるようになりました。本当に、身体的、感覚的基盤というのは、野口整体を学び、身に付けていく上で「言語」のようなものなのです。 それでは今回の内容に入ります。…

野口整体と科学 序章一4

前回、金井先生が「浦島太郎的体験」と言っていることについて少し補足したいと思います。 野口整体で身心ともに健康、または能力が十全に発揮できると観る時の目安というのが「身心の中心が丹田にある」という状態です。 しかし、現代社会で「優秀」と評価…

野口整体と科学 序章一3

今回紹介する3に、「ハウツー的な「科学的・方法論」としてではなく…」というところが出てきます。当時『病むことは力』続編を出版社から依頼されたのですが、このような内容を「野口整体の本」として出すことを求められた経緯があり、そのことを意味してい…

野口整体と科学 序章一2

今回の文章に「2005年秋より後継者養成のため「整体指導法講習会」を始めましたが…」というところがありますが、私はこの時に入門した一人で、「団塊ジュニア世代」でもあります。 先生は団塊世代に当たるわけですが、この団塊世代そのものが新世代の日本人…

野口整体と科学 序章一1

本書へのアプローチ― どのようにしてこのような思想に至ったか 一 なぜ、科学をこれほど持ち出したのか― 本書がどのようにしてできたか 初出版以後の私の軌跡― 野口整体の社会的立脚点を考察する 『病むことは力』初出版(2004年6月22日)直後からは、筆力の…

『野口整体と科学』序章 身体性の衰退を観通していた師野口晴哉

今回から序章に入ります。初回は「正座再考」の原文と現代語訳を紹介します。この文章が書かれた昭和六年という時代は、日本が軍国主義化を強めていく時代でした。 一見、国粋主義的にも受け取れる表現がありますが、掛け声だけ勇ましくて、日本人の長所や美…

野口整体と科学 はじめに5

如是我聞 『病むことは力』第五章に表した私の高校時代の苦しかった思いは、当時が、高度経済成長という日本の敗戦による影響を受けた時代であったことによるものでした。 そして、幕末・明治維新から敗戦後の高度経済成長に至る時代の背景には、「科学文明…

野口整体と科学 はじめに4

「近代科学」を相対化し、「東洋宗教」を再考して野口整体の「思想と行法」を身につける 野口整体に関心を持つ人においては、現代人の「心と体」の問題が、科学の時代において存在していることを知り、近代科学的な西洋医学の「思想と方法」と、東洋宗教的な…

野口整体と科学 はじめに3

今回は、はじめに の後半部です。冒頭に「こうも頭で生きる人が多くなってしまった」という野口晴哉先生の言葉が引用されています。 しかし、「頭で生きていない」というのはどういうことなのか?と問われても、分からない人が多いのが現代ではないでしょう…

野口整体と科学 はじめに2 

身体を開墾する野口整体の源は東洋宗教―『病むことは力』終章からの取り組み 「日本の身体文化を取り戻す」という命題 初出版『病むことは力』(春秋社)を、2004年6月、上梓することができました。取り掛かって一年九ヶ月後のことでしたが、師野口晴哉28周…

野口整体と科学 はじめに1

はじめに― 現代における野口整体の社会的立脚点を定める 一般社団法人 野口整体 気・自然健康保持会 代表理事 金井蒼天 1 野口晴哉生誕百年と大震災― 医療に依存せず「自身の生命力を拠り所とする」生き方を考える 野口整体を創始した師野口晴哉(1911年9月…

(補)『「気」の心身一元論』出版時の「はじめに」

今回は、2011年出版の『「気」の身心一元論』(静岡学術出版)の はじめに を紹介します。 題に「野口晴哉生誕百年」とありますが、この年の5月、私は先生に愉気をした時に、これまでにない異常を感じました。先生にそのことをお伝えすると、「そうか…」と、…

(補)『「気」の身心一元論』掲載の全生訓

『「気」の身心一元論』で使用された全生訓を紹介します。 全生 全生とは死ぬこと也 死ぬということ 生ききって初めてあり 生ききらぬ人は死ねず 自ら殺し 又他に殺されている也 生ききらず 生きんとしてあがき 自ら殺している人多し ハッキリ知る可し 全生…

野口整体と科学―  全生思想

野口整体で云う「整体」とは、全力を発揮して生きるための「身心」のあり方です。 この「心」を説くのが「全生」思想です。 全生思想 師野口晴哉は十五歳で道場を開き、治療家として本格的に出発しましたが、その当初からの「全生」思想を通じ、人が全生する…

野口整体と科学― 科学を相対化し「禅文化としての野口整体」を思想的に理解する

上巻掲載にあたって 近藤佐和子 今回から、いよいよ『野口整体と科学― 科学を相対化し「禅文化としての野口整体」を思想的に理解する』に入ります。 2011年10月10日に出版された『野口整体 ユング心理学と天風哲学「気」の身心一元論― 心と体は一つ』(静岡…

(補)最初の問題 2  野口晴哉

最初の問題 昭和33年3月 整体指導法初等講習会(『月刊全生』平成13年) 野口晴哉 ですから、指や手を当てて効果をあげようとする場合の一番重要な問題は、自分の力を統一するということになります。 いろいろな指の使い方やテクニックはその次の問題で、お…

(補)最初の問題 1  野口晴哉

経緯を忘れてしまったのですが、この原稿の最後に、「最初の問題」という野口先生の講義録の抜粋が入っていました。長いため、補足資料1・2として、2回に分けて紹介したいと思います。ブログ用改行あり。(近藤佐和子) 最初の問題 昭和33年3月 整体指導法…

終章 瞑想法(東洋)と心理療法(西洋) ―「生命の原理」を理解し、無意識の世界を啓く 三4③

野口整体の真髄「生命を感得する」禅の心 私達が自分の内面を開拓し、人間を丁寧に知り、人間の裡にある生きている不思議さとか、心の働きの微妙さとか、そういうものを丁寧に理解して手を当てておりますと、同じ愉気をするということでも違ってくるのです。…

終章 瞑想法(東洋)と心理療法(西洋) ―「生命の原理」を理解し、無意識の世界を啓く 三4②

野口整体の真髄「生命を感得する」禅の心 ②自分が拓かれていくと、…働きかける場面が違ってくる 師野口晴哉はその晩年、愉気法の会(1970年)での講義で、「気と心(潜在意識)」について、次のように述べています(『愉気法1』全生社)。 質問に答える 質…

終章 瞑想法(東洋)と心理療法(西洋) ―「生命の原理」を理解し、無意識の世界を啓く 三4①

野口整体の真髄「生命を感得する」禅の心 ①生きたものは生きたまま扱う禅 個人指導で、私が人を観るとは、「気」で観ているのです。統一体によって、気を鎮め、亢めて観るのです。 「気で観る」とは、観る人の「気」の質によっても、観える相が違ってくるも…

終章 瞑想法(東洋)と心理療法(西洋) ―「生命の原理」を理解し、無意識の世界を啓く 三3

今回の内容は、「潜在意識がはたらく意識状態」についてです。 潜在意識というと、歪みや滞りなどの問題のことを思いやすいのですが、野口晴哉先生は、自然な状態の潜在意識とは、自分の生命を守り、自分の種族を繁栄させようとする生命のはたらきであり、生…

終章 瞑想法(東洋)と心理療法(西洋) ―「生命の原理」を理解し、無意識の世界を啓く 三2

人間を理解・把握するための二つの方法 科学的方法・瞑想的方法 ― 理性によって学習し研究する近代科学・身体性を高めて気を感得する東洋宗教 上巻(第一部 第一・二章)で紹介した石川光男氏は、科学的方法と瞑想的方法について、次のように述べています(…

終章 瞑想法(東洋)と心理療法(西洋) ―「生命の原理」を理解し、無意識の世界を啓く 三1①

科学の知と禅の智の相違― 客観的理性と主観的に感得される気 ①野口整体の「気」の観方は東洋の伝統に基づいている

終章 瞑想法(東洋)と心理療法(西洋) ―「生命の原理」を理解し、無意識の世界を啓く 三1①

三 潜在意識を啓く瞑想法と心理療法 今回から三に入りますが、三は「気」が中心テーマとなっています。気という言葉は、たとえば病院ではまずまともに扱われることはありませんし、現代社会においては、時と場所をわきまえないと「引かれてしまう」ことにも…

終章 瞑想法(東洋)と心理療法(西洋) ―「生命の原理」を理解し、無意識の世界を啓く 二4

心理療法における瞑想的意識の重要性― 自身の潜在意識のはたらきで相手の潜在意識を捉える 河合隼雄氏は、「来談者の孤立した心の世界に、本気で入っていこうとする態度で自他未分の人間関係を作ること」を、ユング派心理療法の基本姿勢と説き、第三章では、…

終章 瞑想法(東洋)と心理療法(西洋)―「生命の原理」を理解し、無意識の世界を啓く 二3

整体とは明瞭な意識の状態で、意識と無意識が身体上で統合されている ユングは、人格の基盤は、理性ではなく情動性(情性・人を人たらしめる感情的能力)にある、と考えました(→日本の伝統「知よりも情」に同じ)。 湯浅泰雄氏は、ユングの説く「個性化」と…

終章 瞑想法(東洋)と心理療法(西洋)―「生命の原理」を理解し、無意識の世界を啓く 二2

指導する者は故障探しではいけない。人間を物体扱いしてはいけない。その裏にある人間を掴まえて、その人間に適う方向に誘導していく(これが教育)ということが大事で、生理的な背きの中には、自由の抑え、性の抑え、成長の抑え、自発性の抑え、要求の抑え…

終章 瞑想法(東洋)と心理療法(西洋) ―「生命の原理」を理解し、無意識の世界を啓く 二1

ここから二に入りますが、二は野口晴哉師、そして金井先生と同様に近代という時代と近代化が人間に与えた影響について取り組んだユングが主題として取り上げられています。 金井先生は、上巻で湯浅泰雄氏について次のように紹介しています(第三章一)。 湯…