野口整体 金井蒼天(省蒼)の潜在意識教育と思想

金井省蒼(蒼天)の遺稿から説く「野口整体とは」

前後型5種・6種②―体癖論Ⅱ 15

前後型5種・6種

 今回は前後型各種の特徴です。前後型共通の特徴として、立ち上がる時も上肢で動作し、歩く時も上肢がよく動く上肢行動型である、ということを補足させてください。

 5種は疲れると6種的になり、6種は体が整って勢いが出てくると5種的になります。一見正反対に見える5種・6種は、呼吸器のはたらきによる表裏の関係にあるので、判断が難しい人もいることを踏まえてお読みください。

 

前後型5種

 前後型は肩で体の表情を表わす。5種は、肩に力があり、呼吸器が強い。

 左右型が感情的に興奮しやすい傾向があるのに対し、理性

と随意筋が発達した5種は感情を抑制しやすい。意欲が出ると前屈みになり、肩や手がよく動き、頭を掻いたり、鼻に手をやったりする。また、机を叩いたりして演説する人には前後型が多い。相撲では張手・突手が得意。腰が硬い。

 行動しながら考える。腰椎一番(思考力)に弾力があれば非常に活動的であり、それが動かなくなったらその正反対の現象が起きてくる。腰椎一番が動かなくなる(頭が働かなくなる)と、途端に疲れやすくなり、呼吸器が弱くなり、感情に脆くなる。

 感情を抑制する能力が弱ると、今度はまったく抑制できないという逆現象を起こす(→ヒステリー現象で攻撃的になる。手をあげたりすることもある)。 

 肩に力が入って上がっているのは感情を抑制している形であり、攻撃の形とはこのことを意味する。

 腰椎一番に弾力のある時は、感情の抑制が自由に効き、利害得失にあきらかである(理性的であろうとすることと感情を抑制することは一つ)。失敗があっても切り替えがうまく、次はどうすればよいかを考えるという積極性と、現状に即した対応をする臨機応変さがある(腰椎一番に弾力がなくなると肩・上肢の動きが悪くなり、頭が働かなくなる)。

 同じことを同じように繰り返すのではなく、創意工夫して改善していくことを好む。また、目新しさを追い、変わらないと飽きてしまう。

 自分がやっていることに成果(実効性)を感じられない、また先の見通しが立たないことで、「虚しい(=無駄だ)」という強い情動が起こりやる

気をなくす。不快情動が起こると息苦しくなる。

 段取りの悪い人、物分かりの悪い人、要領の悪い人、仕事が遅い人、こういう人にイライラしてものすごく疲れてしまう。自分がこうしよう考えたこと、欲求がすぐに実現しないとすぐ不安になったり苛立ったりし、「待つ」のが苦手

 前後型5種(また上下型2種)は非常に単純で、物事の捉え方が表面的で浅いため、感情の機微やかくれた心(気)を感じにくい。合理的な判断をするので、自分の考えには客観性があると感じている。そのため情緒的に感受する面が弱く、自分の考えが主観的(一方的)であることに気づきにくい。

 近代的合理精神の持ち主で、悪くすると合理性(利益をいかに最大化するかを考える思考)が先んずるために情緒が欠如し、功利的・即物的(物質的なことや金銭的なことを優先して考える)になる。整理整頓が得意。流行に敏感でスタイリスト、現実主義者(6種は理想主義者)。

 スポーツや冒険を好み、「攻撃的・冒険的行動型」である。動きに軽快さがあり、明るく、交際好きだが、単純で浅薄に見えることがある。スタンドプレーが得意。また一見、明るく爽やかに見えるが、内心では焦りや不安、警戒心が強く、そのためにしゃべりすぎたり、じっとしていられなくなる。内心では自分の不安を克服しようと行動し、気張ったり冒険をしていることも多い。しかし、いかなる時も理性ははっきりしている。

 疲れると足の小指が薬指の上に重なる。電車などで足を投げ出して背もたれに寄り掛かる姿勢は、疲れた前後型傾向のある人がよくしている。肩、上腕、肘に疲れを感じる。

 

前後型6種

 肩、上腕に疲れを感じ、首が細く長く、上腕が瘠せている。肩の力が抜けない。肩が前へ出て前屈みになる。腰が硬く前後運動の動きが悪い。

 呼吸器の動きは前後運動と連動している。例えばくしゃみをするとき、左右にやろうとすると、出なくなる。その前後運動の動きが悪いのが6種。

 疲れると息切れするようになる。呼吸器が過敏になると湿気を感じやすく、呼吸が苦しくなる。呼吸器が弱いことの代償として「栄養が欠けると体が持たない」と警戒し、味わうことなく沢山食べ、眠る。

 肩は呼吸器であり、呼吸器が弱い。呼吸器のはたらき

は体の「前後」運動と関係があり、呼吸器がはたらく時、「腰椎五番」が前後する。6種はその動きが良くないので、5種のように行動しない。

 動かないで呼吸器を使わずにいる(行動エネルギーが鬱帯する)と食べすぎる傾向がある。呼吸器が活発である必要から、「量を減らして質で食べる」ことが大切。

 感情を抑制できずに内向し、行動によって鬱散できないので気持が憂鬱になりやすく、独りを好む。特に静けさを必要とし、勉強する時、小さい音にも影響され集中できない。行動力がやや乏しく、熱い言葉を吐くのを好む。

 坐ったままで熱弁をふるうのが得意で、思想世界での行動者。主義主張に走るのは、希望を持とうとする表れ。希望に胸ふくらませて、というように、希望を持とうとする行為が六種には必要。「青雲の志を胸に」。

 呼吸器の弱い六種は、自分が行動することよりも、周囲に訴え、現在の環境を変えることで精神的な自由を実現しようとする。

 感情の内向による異常(精神身体現象)を起こしやすく、潜在意識で不貞腐れ反抗をし、転んだり、怪我したり、病気になったりなど、自分でも(意識的には)やろうと思わないことをやってしまうが、その行動には必ず隠れた要求・目的がある。

 無意識的行動は欲求不満や劣等感など、抑圧していた陰性感情の現れなので、指導を進める上では、「感情分析」と、何のためにそうしているのかという、本人には意識できない要求・目的を観ることが重要な問題になる。

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グレース・ケリー 首が前に向かってついている。シャープなあごのラインと肩に前後的特徴がある。オードリー・ヘップバーンの清楚でクラシックな美しさと、cool beautyと言われたグレース・ケリーの現代的な美しさを見比べてほしい。