(補)捻れ型の「勝ち負け」の世界
(補)捻れ型の「勝ち負け」の世界
捻れ型は本来、高度経済成長以前の日本に多かった、「喧嘩して仲良くなる」という、義理人情を重んじるタイプの人たちです。かつては、成功者と言えば克己勉励、努力と根性で事業を大きくしていくという捻れ型が多かったのですが、最近は合理性と情報分析に長けた、スマートな「前後型」タイプが成功者のイメージに取って代わりました。
今は、喧嘩はしないで卒のない人間関係を築き、合理的な判断をすることをよしとされ、人と衝突したり、「勝ち負け」にこだわってしまう自分を意識で抑圧し、その葛藤から行動力を失った捻れ型が増えています。
しかし、その「葛藤」もまた、捻れ型の体が持つ「闘争本能」からくるものなのです。体癖は生まれつきのもので、教養で変えられるものではなく、体癖的特性を知り、良い方向に伸ばしていくことが大切です。
自分と闘ってしまっている時の捻れ型は、持ち前の向上心や粘り強さを発揮できず、肯定感を失って自己否定に陥りがちです。
七種は、「勝とう」ということが感受性の中心となっており、七種体癖の強いC君(権上)は「勝負において一番を目指さないのが分からない。勝負は勝つか負けるしかなく、勝ちは一番しかない。八種体癖の『二番か三番がいい』という気持ちが理解できない」と言います。
C君は牛乳配達のアルバイトをしている時、車で細い路地に入り込んでしまい、戻れなくなったことが何度もあるそうですが、「バックするのが苦手だし、嫌い。できることなら壁を擦ってでも前に突き進んで行けたら爽快だと思う」とのことです。
七種の人には「真っ直ぐに進む、困難を乗り越えて前に突き進んでいきたい」という「苦行的開拓者」という面があります。
例えばDさんという女性は、新しいプロジェクトには率先して手を挙げ、難しい、大変な仕事ほど「自分がやらなければ世の中は変わらない」と思ってやってしまうと言います。七種のある人は挑戦的で、猪突猛進の熱血漢なので、周囲から「疲れる」と思われていたりしますが、行動している時、本人は周囲のことをほとんど気にしません。「こうしよう」と思ったら、衝動的にぱっと行動することに快感があり、「現場行動型」で問題が起きた時にも臆せず立ち向かっていくことができます。
一方、八種は外から見ると分かりにくいが、本人の中で密かにライバルに対して闘争心を燃やしており、八種体癖を持つEさん(神谷)は、後からグループに入ってきた若い人が、自分に代わって皆を世話しようとすると「私の仕事をとらないで、何もしなくていいの!」と対抗意識を持ってしまうそうです。「前からいる自分のほうが上」と思う相手に対して気張ったり、または同等と思う相手に「負けまい」として頑張るのです(グループでの自分の位置・立場・序列を堅持している)。
八種体癖の人は、悔しさや負けまいという心をじっと抱え込み、辛くとも我慢してしまうところがあります。それは辛さを感じている自分に負けまいとしてしまうのです。
捻れ型が一段階を超えるには、全力で、真っ直ぐにけんかをし、その後、その相手と仲直りができるようになることが大切です。
師野口晴哉は、すべての体癖において(どの人においても)、修養により自分の体癖を超えることができた場合、自分という枠の外に出ることができることを示唆していました。
(註)金井先生の遺稿を近藤が編集。