野口整体 金井蒼天(省蒼)の潜在意識教育と思想

金井省蒼(蒼天)の遺稿から説く「野口整体とは」

第五章 野口整体と心身医学の共通点 三4 

 生前、金井先生は、塾でIさんの指導から「精神的な腰」についての話をしたことがありました。

 腰というと、一般に生理・解剖学的というか、肉体的な意味での腰というものしか知らなくて、それが痛いとか歪んだとか言っているだけのことが多い。

 腰というのは骨盤とか腰椎とか、そういう「もの」としてあるだけではなく、精神的な腰というものがある…。というお話です。

 今回はこの「精神的な腰」とはどういうものかが主題となっています。 

4 腰の状態が意欲の無さと集注力の欠如をもたらす

  ある時、Iさんに「今日は身体をどう感じていますか?」と尋ねますと「実は昨日から散水状態(排尿時、尿が散ること)です」と…。私は「夏は終わったよ(涼しくなったから散水車はいらない)」と、冗談を交えて指導が始まりました。

 実は、仕事上で一週間前にカチンと来ることがあり、しばらくして散水車になっていたのです。

 それは、次のようなものでした。

 測量士であるIさんは不動産業者の依頼で、ある所に同行したのです。それは、その業者が持っている土地を、隣人に通路として使う分を売るので、その線引きに行ってほしいと頼まれたからです。

 そして、その業者が、一年以上前の売掛金に対して「そうしてくれれば手付金が入るから、Iさんに支払いができる」という約束の上だったのです。

 しかし、数日経っても何の連絡もなく、「俺はなんてお人好しなのだ!」と、自分に対して怒ってしまったと話していました。

 Iさんは体調が悪くなると、排尿時、尿が散るようになります。こういう時のIさんは、必ず、情動による歪みが身体に大きく出ていて、それが泌尿器の状態に反映しているのです。

 感情的にドーンと来たことと、「尿が散る」こととの身体上のつながりは、文章で説明することはできませんが、この人を、長年、繰り返し観察した上でこのようにお話ができるのです。

(このような泌尿器現象は、潜在的心理として「勝ち負け、葛藤(捻れ型八種体癖)」と一つ。体癖論参照)

 ここで特にお話したいのは、感情の滞りがあると意識がそれに引っ張られるということです(これが自我の主体性を奪うコンプレックス)。「不貞腐れ」という消極的な心身の状態に陥ってしまい、エネルギーの源泉である無意識とのつながりを断たれ、仕事がはかどらないということになるのです。

 泌尿器は腰の状態と関係が深く、同時に腰は意欲を実現する上で大切な処です。

このような、仕事に対する意欲の無さ・集注力の欠如は、情動による腰の状態がもたらしていたのです。