野口整体 金井蒼天(省蒼)の潜在意識教育と思想

金井省蒼(蒼天)の遺稿から説く「野口整体とは」

第四章 野口整体とユング心理学― 心を「流れ」と捉えるという共通点 補足1

 補足1・2・3の内容は、深層心理学の基礎を築いたフロイト、そ弟子のアドラーの心理学のまとめです。章の中に入っている内容ではありますが、金井先生の原稿でフロイトアドラーに深くコミットするわけではないので、時間のある時に読んでみてください。 

補足1 フロイトの考えた病因としての抑圧感情

 二十世紀最大の収穫は「無意識の発見」だとされています。自分の主人公は「自我」ではなくて無意識の自分である、という発見は欧米の人々にとっては非常な驚きでした(全能の神が人間だけに分け与えた霊魂・理性である自我意識が無意識に動かされる)。

 それはキリスト教徒に対して、人は神が特別に造ったものではない、と宣言するのに等しいインパクトを与えるものだったのです。

 しかし、当時フロイトだけが深層心理の存在に気づいたのではなく、彼の前にはブロイアー(医師 1842年 オーストリア生・心理的外傷理論を提唱)やジャネ(医師 1859年 フランス生)という先駆者がいたのです(この三人はユングの師でもある)。 

 深層心理学の祖・フロイト(1856年 オーストリア生)はヒステリーの研究から始まり、これにより抑圧感情の場としての「無意識」を発見しました。

 心理学では、自我が受け入れ難い不快な感情を伴っている記憶が、潜在的な状態になっていることを「抑圧」と言います。

 神経症は、抑圧感情が強い不安と身体症状として現れる病症の総称で(その元となる感情は本人に意識されていない)、ヒステリーは、発作が起こると手足が動かなくなったり言葉が出なくなったり、身体の一部が痛くなったりするものです。

 しかし、このような神経症(ノイローゼ)は、生理的異常(器質的病変)が認められないものですから、心というものの在り方が考えられるようになりました。

 ここからフロイトは、快感原則に従う生命と、人間の社会規範を対立的に捉え、意識にとって不都合な感情や欲求は意識から追い払われ、無意識化することで身体に変調をもたらすという「抑圧理論」を導き出しました(抑圧とは意識的に再生することの不可能な状態だが、再生可能になると、その支配から解放される)。

 これが、フロイトによる無意識の発見です。

 これは、ヒステリー患者が意識で抑圧した内容を思い出し(気付き)、言語化して表出する(精神科医に訴える)ことによって身体症状は消失する、という治療法(註)を確立したことによるものでした。

 フロイトの思想は、現在の病的な状態は過去に起因しており、「我々は過去によって決定されている」という因果論的な考え方で、主に「幼少期」という過去に目を向けたものでした。

 この因果論的思想は、当時の近代合理主義(機械論)に対応したもので、彼は、自身の精神分析学を科学として捉えていました(過去の原因によって、現在の結果が導き出されるというのが因果論=機械論)。

 こうしてフロイトは、自身も苦しんでいた神経症を治療する方法を模索し、理性によって抑圧された心的内容としての無意識を、科学的に(=「原因 → 結果」という因果論的に)研究することで、精神分析学を確立したのです。

(註)抑圧と心理療法 哲学および心理学における精神の「浄化」

― 無意識に抑圧されたネガティブな感情を解き放ち、心を浄める ― をカタルシスと言う。この効果をカタルシス効果と言い、心理臨床ではこれを目的とする。

 心の内にあるさまざまな不安やイライラ、苦悩や怒り等の感情を言葉にして表現すると、その苦痛が解消され、安堵感や安定感を得ることができる。心理療法やカウンセリングにおけるカタルシス効果は確かに有効であるが、クライエントと心理療法者の信頼関係ができてはじめて得られる効果でもある。