野口整体 金井蒼天(省蒼)の潜在意識教育と思想

金井省蒼(蒼天)の遺稿から説く「野口整体とは」

第六章 生き方を啓く整体指導―感情の発達と人間的成長一 5

心療整体― 東洋的視点と西洋的視点の合わせ技

  対話を重視する心理療法は、「自我を先立て、心(精神)が上位であるとする」西洋的視点であり、この時、失感情症の概念が有効です。

 一方、「身体を、(心と不可分で)根元的なものとして捉える」東洋的視点では身体感覚を重視し、この時、失体感症(アレキシソミア)の概念が有効となります(池見氏の「失・身体感覚・症」の概念は東洋的視点から生まれたもの)。

 野口整体の基盤にある愉気法・整体操法は、もちろん「身体性」に伝統がある東洋的視点というもので、心理療法を重視する「心療整体」とは、西洋的視点との合わせ技を意味します。

(感情表現は、現代的視点としての「自我の確立」を促す上で重要であり、これが現代での主体性につながる)

「感情への気付きとその表出」と身体感覚、そしてホメオスタシスとの関係を解き明かした心身医学は、野口整体においての、皮膚に「触れる」ことの意義を、学問的に、以下のように明らかにするものと思います。

 感情と身体(皮膚)とは深い関係にあります。とくに意識化できなかった感情(潜在したまま表出できなかった「対話の要求(註)・他者に訴えたい心」=未分化なままの感情)が潜伏しているほど、身体が硬く、皮膚が鈍くなっており、感情の気づきと表出は身体感覚の発達を促すものです。皮膚は心なのです。

(註)対話の要求 師野口晴哉は、人は元来「対話の要求」を持つものであると、「対話」の重要性を提唱した。

 身体は皮膚に包まれており、触れることで身体感覚が発達し(指導者が触れることで皮膚の「敏・鈍」は認知でき、触れられることで皮膚感覚が発達 → 敏の方向へ)、さらに、心理療法を活用する(対話を重視する)ことは、「感情への気づき、そして表出することで、さらに身体感覚の発達を促す」のです。

 身体感覚の向上を目指す野口整体は、ホメオスタシス(恒常性維持機能)の活性化を求めることに他ならないのです。

 そして感情の表出は身体感覚の向上のみならず、意識(心)を高揚した状態へと導くものです。

「心身相関」である〔身体〕を自覚し、被指導者(クライエント)の「生き直し(新しく人生に適応すること)」と、セルフコントロール(自己制御)できるよう援助することが個人指導です。