野口整体 金井蒼天(省蒼)の潜在意識教育と思想

金井省蒼(蒼天)の遺稿から説く「野口整体とは」

(補)ヒポクラテスの言葉  野口晴哉(昭和18年)

 補足資料として、野口晴哉昭和18年(1943)に書いたヒポクラテスについての文章を紹介します。(ブログ用改行あり 近藤)

 ヒポクラテスの言葉

 ヒポクラテスは近代医術の宗祖である。彼の説いた原則の要約は次の如くだ。

一、事実以外に権威はない

二、事実は正確な観察によって得らる

三、推論は事実からのみ為し得る

 人世は短く技術は長い。機会は急に移り易く、経験は誤り多く、判断は下し難い。だから彼は、医学的施策を推測から引きはなして、正確な観察と常識の方向に向け変えさせる為に努め、そしてこう言った。

「知ることと、他人が知っていることを信ずる事とは別な事である。知ることは学問だが、他人の知っていることを単に信ずるのは無学と同じだ」と。

 昭和の今日に於ても、治療行為にたづさはる者にとって必要なのは、やはりこのことである。我々の為しつつあるところの治療行為というものを、知的に開拓するには、どうしても重んぜねばならぬ至言である。

 自分はヒポクラテスは好きだが、ガレーン(ガレノス)は嫌いだ。今日の医術から除きたいのは、そのガレーン的傾向であって、ヒポクラテスではない。

 西洋医術に敬意を抱きながら、之に不満があるのはヒポクラテスとガレーンが同居しているからである。いやガレーンがその医術の中に最も多いからである。ハーヴュー(ハーヴェー)すら、ガレーンを医学から追い出し得なかった。自分の嫌いなガレーンは、今なを西洋医学の裡に活々と生きている。

 だから生命より薬が尊ばれ、自然より医術が重んぜられている。

 ヒポクラテスは、むしろ治療行為に再生の道を求めている。ぜひそうあらしめたいと思う。

…略

(『碧巌ところどころ』全生社)

ヒポクラテス医学の特徴は以下のようにまとめられます。野口整体と共通する点が多くありますね。

1. 観察と記録 ( カルテ ) の重視 ( 宗教・理論 ・思弁からの分離 )

・全身の観察 ( 全体論または体液病理的疾病観 )
・環境を含めた観察
   患者の生活様式 ( 食事と住居 )
   患者の地域環境 ( 地理的条件 )
・長期にわたる観察
   過去 ( 既往歴 ) →現在→予後
2. 普遍性よりも固体性 ( 特殊性 ) の重視
・個人個人の多様性に対応 ( 理論よりも経験を重視 )
・体系を目指さない ( 理論研究は医師の任務ではない )
3. 個人の自然治癒力を高める

引用 歯科医師 永田和弘氏のレジュメPDFより