野口整体と科学 第一部第二章 野口整体の生命観と科学の生命観二6
6 瞑想の心理学的意義を脳科学が明らかにした
深層心理学の発達により見出された、5で述べた瞑想体験の意義は、近年、脳科学の立場からも明らかになってきました。
ワシントン大学医学部教授のM・E・レイクル氏は次のように述べています(HP日経サイエンス「浮かび上がる脳の陰の活動」)。
私たちの脳は、話をする、本を読む、といった意識的な仕事を行っているときだけ活動し、何もせずぼんやりしているときは脳もまた休んでいると考えられてきた。ところが最近の脳機能イメージング研究によって驚くべき事実が明らかになった。安静(無心)状態の脳で重要な活動が営まれていたのだ。しかも、この脳の「基底状態」とも言える活動に費やされているエネルギーは、意識的な反応に使われる脳エネルギーの二十倍にも達するという。
この脳活動の中心となっているのは、「デフォルト・モード・ネットワーク(DMN)」と呼ばれる複数の脳領域で構成されるネットワークで、脳内のさまざまな神経活動を同調させる働きがある。
自動車が停止してもいつでも発進できるようエンジンを切らないでおくのと同じように、これから起こりうる出来事に備えるため、さまざまな脳領域の活動を統括するのに重要な役割を果たしていると考えられている。
DMNは意識的な行動をするうえで重要な役割を果たしており、ある実験では、DMNの活動を観察することによって、被験者がミスをするかどうかを三十分前に予測できたという。さらに興味深いことに、DMNの異常がアルツハイマー病やうつ病などの神経疾患とも関係するようだ。
アルツハイマー病患者で顕著な萎縮が見られる脳領域は、DMNを構成する主要な脳領域とほとんど重なっている。安静時の脳活動を研究することによって、意識や神経疾患を理解するための新たな手がかりが得られるだろう。
野口整体では「良い頭はぽかんとする」という言葉があります(頭がぽかんとすることは、「空腹になることで、食事をおいしく味わえる」ことと同じで、頭が空っぽになることがないと、新しく考えることができない=何か(雑念)が詰まっている頭ははたらかない)。
個人指導は体を整えるため、整体操法を施すこと、そして臨床心理的に行うことに特長があり、自力と他力の融合により、瞑想的な意識(無心)に導くことで「身心統一」を図り、「感受性を高度ならしむる」ことが目的です。
感受性が高度な状態に至るには、日々生ずる情動(陰性感情による)によって蓄えられたエネルギーが、活元運動によって解放される身体となることです。
「体でも心でも、異常を異常と感ずれば治る」のです。整体とは敏感な身体で、「身体感覚」の向上が鍵となります。