野口整体 金井蒼天(省蒼)の潜在意識教育と思想

金井省蒼(蒼天)の遺稿から説く「野口整体とは」

第二部 第四章 二4 身体の可能性とは― 理性の世界から身体性の世界へ

 2008年3月、真田さんは中国雲南省少数民族出身のヤン・リーピンという舞踊家が来日し、その公演を鑑賞した。舞踊は生命の躍動とも言えるほどで、その美しさに感動した。身体の動きに感動するというのは真田さんにとって初めての体験だった。

 その後真田さんは、身体とは、身体の「可能性」とは、について考え始めるようになり、できるだけ身体の変化に目を向けて、その変化の原因はどのような感情からきたのかと、情動に注意を向けるようにした。

 しかし整体指導を受けてみると、自分が思ったことの多くは、表層的な意識による観察で捉えたに過ぎなかった。金井先生から身体の観察から「何かがありましたね」と問いかけられ、自分なりに思い起こして「これだ」と思っても、指導が進むと別のことに原因があったことに気づかされることが何度もあったのだった。

 そして、この真の気づき(=悟り)が訪れると、重心が下がり身体が落ち着く、という体験を重ねていった。「腑に落ちる」という言葉の意味を、この頃、初めて身体で実感することができた。

(金井)

 このように指導が進む理由は、指導の最初に「張りや痛み」を本人の身体感覚によって確認し、これを私が共有しているということがあります。また、後から思い出したことが真の原因というのはよくあることで、体の硬張りとなっている主原因の抑圧感情は、心のより下層にあるものです。

 愉気によって、「張りや痛み」と「意識下の感情」がつながり、さらに、本人の意識の全体(感覚・思考・感情)が明瞭になるほどに、真の原因とつながり易くなります。

「腑に落ちる」が、身体が落ち着くことだと感じられることは、身体感覚と同時に「気」の感覚が涵養されたのです(気は心と体をつなぐもの)。