野口整体 金井蒼天(省蒼)の潜在意識教育と思想

金井省蒼(蒼天)の遺稿から説く「野口整体とは」

禅文化としての野口整体Ⅰ 活元運動 序章6 整体指導は身心を自然に導く潜在意識教育

 野口整体は「治療法」に始まっていますが、整体指導とは、体に具わる自然の力を発現させる(=勢い(野性)を取り戻す)ための「身体(身心)教育」です。
 例えば、肩こりが続いているということは本人の自然治癒力のはたらきが悪いわけです。ですから、自然治癒力が発動する体に育てていくのです。身心まるごとの「教育」です。
 野性とか本能というものも、体から体へ(人から人へ)と伝えられていくもので、抛(ほう)っておいたら伝わらないのです(出産や育児においても、体験的に学ぶという面が重要で、これが「潜在意識教育」の意)。
 師野口晴哉は天才的な治療家から、指導、そして教育という方向に進みました。それは知識を「教」えるだけでなく、体を「育」てることで、その意味するところは「潜在意識教育」です。師は、現代の学校教育では「育」がなく、「教教(頭に教えるのみ)」だとよく語っていました。これは、潜在意識教育に対して現在意識教育と言い換えることができます。
 ですから、野口整体は整体治療ではなく、「整体指導」という言葉を使うのです。
 私は、「生活している人間」を観るわけです。「何々病」に対処しようとするのではなく、この人が今、この体(身心)の状態にあるというのは、そのような生活(育ち方・身心の使い方)をしてきた結果なのです。
このように観、身心を自然(じねん)な状態に導く、そして「全生の道」を模索していく、これが整体指導ということです。
 慢性的な状態は、その人の生活が変わらないということです。そのような身体(身心)がどのような生活によってもたらされているのかを考えて行くことが肝要です。
 何より「自発性」が大切で、意欲が「身心」を育てるのです。それは、生き方が変わって行くということです。
 体に、操法だけしても治らない、やはり本人の心がそのような方向を向いた生活が始まらないと、本当には変わっていかないものです。師の最終目標は「潜在意識教育」だったのです。
 同じ野口整体のプロと言っても、知識と技術の習得を重んじた人は科学的であり、生き方を身に付けたという人は宗教的ということになります。私は後者です。