野口整体 金井蒼天(省蒼)の潜在意識教育と思想

金井省蒼(蒼天)の遺稿から説く「野口整体とは」

禅文化としての野口整体Ⅰ 活元運動 第二章 二4 鉄人の心の問題がスポーツでは解決しない理由③

③ 不随意運動・錐体外路系・情動のはたらきは一つ

 生理学では、意思によって動かすことができる筋肉・随意筋(註)は横紋筋と呼ばれ、主に骨格筋のことを指します(西洋医学では骨格筋は全て意のままに動かせるとされている)。

 一方、意思の力で動かすことのできない筋肉・不随意筋(註)は心筋と平滑筋を指し、心臓や他の内臓器官、消化管や血管などのことです(心筋は横紋筋でありながら不随意)。これらは、心臓の拍動や消化管の蠕動(ぜんどう)運動などを行なう筋肉で、自律神経によって支配されています。

(註)

随意筋 骨格筋と、皮下に付着して皮膚を動かす皮筋、関

節包に付着している関節筋、肛門括約筋、舌・咽頭喉頭の筋などが含まれ、主に横紋筋に属する筋肉。脳脊髄神経の支配を受け、一般に不随意筋(平滑筋)よりも収縮が速やかで、強力である。

不随意筋 内臓の壁をつくる筋などが不随意筋に属し、多くは平滑筋。自律神経の支配を受け、一般に随意筋に比べて運動速度は遅い。また、ホルモンや神経の調節によって動き、緊張状態の変化に伴って働く。

 随意運動(意識的な運動)は、大脳皮質が直接的、間接的に運動の指令を出しており、随意筋にはこの回路・錐体路がありますが、不随意筋には大脳皮質→筋肉という神経回路はないとされています。

 生理学的には「錐体外路(性運動)系」とは、骨格筋による無意識的な運動である反射や調節運動に関わる神経系の総称を意味しますが、野口整体では、内臓などの不随意運動も、錘体外路系運動と連関する運動として捉えています(感情の表出・姿勢・咳・あくび・寝相など、内側から起こる自発的な身体運動を含む)。

 心の深部である「潜在意識」の動きの主体である快・不快の情動(註)は、自律神経の働きや無意識に行われる錐体外路系の運動(身体の緊張と弛緩や平衡運動反射)と深い関係があります。

 ですから、筋肉を鍛えて随意運動によってスポーツをする人は、表面上、活動的に見えても、実は「奥の心が動かない」ということが十分あり得るのです(随意筋の運動のみでは潜在意識、また無意識の領域に届かない)。

(註)快・不快の情動は言語化により分化(意識化)して、感情が発達する。