野口整体 金井蒼天(省蒼)の潜在意識教育と思想

金井省蒼(蒼天)の遺稿から説く「野口整体とは」

自分のことから始まる金井流潜在意識教育 5

存在するのは感じたことで、感じないことは存在しない

 方法論ではない野口整体も同様に、まず著書や月刊全生に書いてあることを自分に適用してみる。潜在意識のはたらきを、自分の体を通して実感してみる、また分析して日に当てる。

 また、自分では意識できないことを「観える」指導者に指摘されたり、指導者との信頼関係(逆に言えば潜在している不信感に気観るときに、そこに「表情」(心の表出)を「自分の心」で感じなかったら、それを「気」を通して感受できなかったら、「相手の心」に対して働きかけることはできない、というのが金井先生の考えでした。

 野口晴哉先生は次のように述べています。  

…人間に心のあることを知り、更に奥にある生命の働きというものにぶつかるつもりで愉気をして、気が集まると、そういう働きを直接感じるようになるのです。だから自分の中味が拓かれていく(修行によって)と、それに応じて触って分かることが違ってくる。違ってくるとその働きかける場面も違ってくるのです。

 胃袋に穴があいたという場合でも、それを愉気して治すつもりで愉気するうちはまだそれだけで、そのもとである心の緊張過度、やすらぎのない心を治せないのです。ところが心の奥に伝わる気のあることを知り、相手の心の奥にあるものを理解して手を当てると、やすらぎのない心を弛めることができるのです。

 

・・・自然にやすらぎが得られ、その人の体の力で治っていくというような時は、治された時と違うのです。だから安らぎを得て治ったものは繰り返さないが、やすらぎのある心に至らないで、物理的に治された場合には、同じことをまた繰り返します。

こういうことは難しいことのようですが、私達が自分の内面を開拓し、人間を丁寧に知り、人間の裡にある生きている不思議さとか、心の働きの微妙さとか、そういうものを丁寧に理解して手を当てておりますと、同じ愉気をするということでも違ってくるのです。(野口晴哉愉気法1』)