野口整体 金井蒼天(省蒼)の潜在意識教育と思想

金井省蒼(蒼天)の遺稿から説く「野口整体とは」

西洋医学と野口整体 ガレノスとヒポクラテス 1

ヒポクラテス(前四六〇年頃~前三七〇年頃)古代ギリシア

ガレノス(一二九年頃~二〇〇年頃生)

 

 西洋医学の基礎を築いた医師として、ヒポクラテスとガレノスの名が挙げられます。ガレノスはヒポクラテスの継承者とされることが多いのですが、ガレノスとヒポクラテスには大きな違いがあります。

 ヒポクラテスは内なる自然の力を基礎として観察(今の状態を捉えること)と予後(患者の状態や、今後の病状についての見通し)を中心とした医療を行い、また体操を治療として用いています。一方ガレノスは解剖学に基づく病理的診断を基に、薬物と外科手術を用いた医療を行いました。

 そういう意味では、ヒポクラテスではなくガレノスの方が現代医療の考え方に近いと言えるでしょう。実際、ヒポクラテスは「医療の父」、ガレノスは「医学の開祖」と紹介されることもあります。

 ガレノスが活躍した時代、ヒポクラテスの流れを汲む人々は、死体を解剖して得た知識を基礎に生体に関する研究を行うことに反対していました。しかし、ガレノスはミイラ製造から生じた解剖学の知見を医療に応用したのです。

 また、江戸時代の日本の医学は「気の医学」とも呼ばれる医学が主流でしたが、当時の医師の多くも、ヒポクラテス派と同様に死体を解剖して生体のことが分かる筈はないと考え、オランダ医学の解剖学の価値を認めませんでした(村上陽一郎『新版 西欧近代科学』新曜社)。

 ガレノス医学は、11世紀にイスラム世界からヨーロッパに導入され、カトリック教会が認める正統医学として16世紀まで最高の権威を与えられることになりました。