野口整体 金井蒼天(省蒼)の潜在意識教育と思想

金井省蒼(蒼天)の遺稿から説く「野口整体とは」

(補)『臨済録』で述べられている「天心」について

 臨済録を読みまして一番面白かったのは、生まれたままの自然の心の状態で、つまり赤ん坊と同じ心でというが、赤ん坊の心では役に立たないのだ・・・。と。

 いろいろ迷い迷って、くだらない妄想などを描いて、そういうものを通してなお、生まれたての赤ん坊の心で居られる者は、自然にある赤ん坊の心とは異なるものがある。

 生まれたての赤ん坊には天心などないのです。天心しかないから、天心というものはないのです。

 いろいろ人智を尽くし、迷い、なだめ、悪いことをし、計画し、回心し、それでもまた悪いことを思い浮かべて・・・というようなことを経ていって、天心の尊さというか赤ん坊の時の心の尊さが判ってき、それに帰って来得たならばそれは天心である。

 天心とはそういうものだと、臨済は別の言葉でそう云っております。大変面白いと思う。

 つまり逆に言えば、鍛錬して、しぬいていかなければ、生まれたときの天心の状態を保つことができない。だから大人になって天心を保つのには鍛錬が要る。

 何故かというと、いろいろの雑念・妄想は、夏草よりもっと激しく心に生い繁るからであります。そういう中で成長を止めないで、動きを鎮めない。

 野口晴哉