(補)自我とは
自我の重要性
自我とは「私」という意識のことです。心の原動力は無意識・潜在意識にありますが、その内容を意識化し、「自分のことを考える(内省する)」のは自我の働きです。中巻『野口整体とユング心理学』から、自我についての説明を紹介します。以下は私が原文をブログ用に編集したものです。
「これが私(自分)」という意識を、心理学では自我と言います。
ユング派臨床心理学者の河合隼雄氏は、自我は「外界との交渉の主体」、そして「内界を認知する(自覚する)主体」であると定義しています。
内界(内的世界)とは心の内を言い、その外・自分以外の人や事物が外界(外的世界)です。
「外界との交渉の主体」とは、外界を知覚・認識し、意思と言語、思考能力によって、他者に働きかけたり、目的に適った行動を起こしたりするはたらきです。そして自我は、自分と他者、内界と外界を区別する役割を持っています。
そして「内界を認知する主体」とは、内的な感覚(身体感覚)や感情、要求を、言語化によって自我に統合するはたらきです。自分の内的な感情や要求は、意識化されないと「自我」に組み込まれない(自分の心の一部にならない)のです。
(意識化とは言語化であり、言語化は他者との対話により成立し、これにより感情が発達する)
また、身体感覚(全身内部感覚)は意識(起きている時の心)の基盤であり、中でも皮膚感覚は母親との心身両面でのふれあいの中で、自分という意識の基盤となる重要性な身体感覚です。
乳児のころは、意識の中心に未だ自我がない状態ですが、話しかけなどの外界からの感覚刺激(はたらきかけ)が、より「明るい(はっきりした)意識」へと発達させていくのです。
そして、ある時「自分の存在」を自覚する(物心がつく)ようになり、自我が芽生え、発達していきます。
子どものころに感情を表現することや、要求に沿った生活を送れなかった人においては、外界に向かう社会的な自我は発達していても「内界を認知する主体」としての自我が育っていないことがあります。