野口晴哉生誕百年―臨床心理による整体指導 序章 二9
野口整体・金井流について
金井 それで、野口整体といっても「金井流」かもしれませんが、どんな感じなんでしょうか?
上村 実際に金井先生の整体指導を受けてみて、一番感じるのは、体と心の感覚の芽生えが加速される感覚です。自分だけだと三、四ヶ月かかるところが一、二週で進んでしまう。これは凄い。
心の問題についても、自分で精神分析学を援用して何年もかけて自己分析した内容を初回の指導で指摘されました。人が何年もかけてやっと気がついたことをそんな簡単に言うなよぉ、と正直思いました(笑)。
あと操法の前に体を観てもらう時間があるんですが、先生が後ろに立って軽く背中に触れると、なんだか熱い風のようなものを感じる。
あー、これが気の感じなんだなと思いました。そして、触れるか触れないかくらいの軽いタッチなんですが、硬張った部分の体の奥にズシリときてグーッと押される感じがする。体の奥に手が入ってるかのような。
ともかく、軽く手を置くだけで不具合を感じている場所を順番に指摘されました。
操法が終わった直後、自分の体が風にそよぐ糸のように感じました。地面から風が吹いていて、体が微妙に揺れているような感覚でした。
おそらく体が重力を感じていたんだと思います。その夜は、体が動きたがってなかなか寝付けず、たしか、夜中の三時過ぎまで体をゴソゴソと動かしてました。
あと、不思議な感覚なんですが、なんだかここに、もう何年も通ってる気がしてしまうんです。実際まだ半年しか経ってないんですけど(笑)。
これは金井先生の話を聞く姿勢や態度といったものと関係していると思うんです。相手の言葉だけでなく、「体の声」まで真剣に聞こうとする姿勢。それによって、密度の濃い場が作られているんでしょうね。
相手が本当に自分の事を知ろうとして真剣に聞いているのか、中途半端に聞いているのかは心の深い部分で解るのでしょう。先生はいつも私の話を興味を持って聞いて下さいます。眼が少年のように無邪気にキラキラしてるんですよね。
特に「金井流」ということに関して他の整体指導はわからないのですけど、金井先生の整体指導は、他の先生方よりも、心の面に深く入ってくるようなやり方をされていると思います。