野口整体 金井蒼天(省蒼)の潜在意識教育と思想

金井省蒼(蒼天)の遺稿から説く「野口整体とは」

第一章 野口整体の身心の観方と「からだ言葉」二2 

からだ言葉と野口整体の身体の観方― 身体感覚(身体意識)から生まれたからだ言葉

 私は、「体の表情(変化している様子)」を観察し、その人がある感情を体験したことで、その心情が言葉通りの身体の形となって表れていることを、多くの臨床例によって確かめて来ました。

 これは体に現れている表情を、私が形容する(その姿・ありさまを直接的に表現、また他のものに喩えて言い表す)というものです。

 そして、「ハッとしたことがありましたか」、また「肩が上がってるね(緊張したことがありましたね)」といった言葉掛けをし、その人が捉われ(不快情動の持続)に気づき、自分の心の内を語るという「対話」を通し(=感情を共有し)て、本来の姿(自分自身・自己)を取り戻すという整体指導を行なって来たのです(金井流はここ・現在を窓口として臨床心理を進める)。

 その他「イライラ」「がっかり」など、擬態語(事物の状態や身ぶりなどの感じをそれらしく音声にたとえて表した語)が非常に多いのが、日本語の特徴なのですが、私は「カチンときた」「プリっ」などといった言葉も使い、本人の感情体験を共有しています。

 最近では「口惜しい(くちおしい)」というのがありました(これは本人の口の形に表れているわけではない)。長く観ている人ですが、いつもにはない強い背中の張りを観、「今回はどうしたんですか」と声をかけて、やりとりが進み、出てきた稀な言葉です。 それは「身内がご近所に無作法をしてしまったこと」についての後悔、自分が大切にしてきた近隣との「関係性」の喪失を感じてのことでした。「口惜しいという言葉はぴったりです!」と話していました。

 師野口晴哉は、心理指導について「訴えられない心に表現の形を与えることで対話の要求を充たす」、と述べていました。

 私が個人指導で、これまでに観察できた「からだ言葉」を、身体の部位別に挙げてみます。

頭 「角が生える」「鶏冠(とさか)にきた」「つむじ曲がり」

「頭でっかち」「頭(ず)が高い」「頭が固い」「顔が曇る」

「目がつりあがる」「耳に胼胝(たこ)ができる」「頭痛の種」

首 「首がすくむ」「首が回らない」「首を長くして待つ」

肩 「肩を怒らす」「肩を落とす」「肩身が狭い」

腕 「腕が立つ」「腕が良い」「腕が鈍る」

腰 「腰が決まる」「腰が決まらない」「腰抜け」

「へっぴり腰」「喧嘩腰」「腰が重い」「腰が軽い」

「腰が引ける」「腰が据わる」「本腰を入れる」

胸 「息詰まる(行き詰まる)」「胸の閊え」

腹 「溜飲が下がらぬ」「腑に落ちない」「腹が決まる」

「腹を据える」「腹の虫がおさまらない」「腹黒い」

「腹が太い(太っ腹)」「腹が小さい」「腹なし」

「向かっ腹が立つ」

臍(へそ) 「へそが曲がる」「へそが笑う」

尻 「尻(しり)が縮む」「尻尾を巻く」

足 「浮き足立つ」「地に足が着く」

 

 これらは、整体指導の立場から、なるほどその通りと観察できたことで、「頭・首・肩・腕」、「背・腰・胸・腹」、「尻・脚・足」に現れている様(歪み)は、からだ言葉で形容できるものが多くあります。