巻頭 潜在意識は体にある!― 自分のことから始まった野口整体の道 一
5 身体を通して、その人の「感受性」を観ることで成長してきた
―「感受性を高度ならしむる」野口整体
病気など、体の問題の七十パーセントは心が原因している、というのが心の専門家の説です。西洋医学でも心あるお医者さんはそうだと思っています。「心の世界」は科学では証明出来ないけれど、医療に携わる人、特に看護師の方はそのことに内心気づいている人も多いのです。
ところが師野口晴哉は、「百パーセントだ。心が関係しないことなどない!」と、言い切っているのです。
丁寧に普段の生活を観ていくと、心が関係しないような痛みというのはないはずです。苛立ちだったり怒りであったり、そういった類のものが関わっているわけです。
そして、今現在の心のはたらきというものは過去に起因しているという面が大きく、これが潜在意識ということです。
三つ子の魂という言葉があります。おおらかに育った人は現実問題に過敏反応しないのですが、そうでない人はつい反応が大きくなってしまう、ということがあります。
潜在意識のはたらきにより形成された「感受性」というものによって、今の出来事を受け止めている、そしてその結果が体に表れています(背骨に顕れている)。
野口整体では「感受性を高度ならしむる」ことを目的としています(このため、師は野口整体を体系化したと私は考えている)。
「心って何」と言うと、非常に難しい面がありますが、体が良く変わっていくと「感受性」というものが変わってきます。
現在の自分の心、感受性が変わることで、過去の事実は変わらないにせよ、過去に対する印象(心の原風景)は変わるのです。
自分が自分だと思っていることは、そのような自分だと思い込んでいる、そしてこれは、過去の事実に対する自身の印象が続いていることなのですから、現在の「感じ方」、物事への処し方が新しくなることは、「過去も変わる」ことになるのです(今が変われば過去も変わる!)。
師の言葉に「自分が変われば世界が変わる」とあります。
そして体を通じて心も丈夫になってくると、あまり過敏な反応が起こらない、心に余裕ができるということでしょう(体が変われば心が変わる)。こういう意味で、体を通して心を扱っていくということです。そんなわけで、体を通しての、人との「心のやりとり」を通じて、私の「心のひだ」が発達してきたと思います。
そして、これはほとんど「直感」を磨いてきたのです。右脳と身体性の訓練ですね。熱海に来てからの三十年間は、これだけずっと一筋でした。
これにより、本や会報に書くべき内容が、心に、体の中に蓄積されて行ったと思うのです。