野口整体 金井蒼天(省蒼)の潜在意識教育と思想

金井省蒼(蒼天)の遺稿から説く「野口整体とは」

第五章 野口整体と心身医学の共通点 二 1①

二「抑圧感情」を病理として認める心身医学が求められる現代

― 池見学が裏付ける金井流心療整体の心身医学的根拠

 

 二で取り上げる池見酉次郎(ゆうじろう)医師は、日本の心身医学のパイオニアです。患者を自宅に泊まらせるなど、自分のすべてをぶつけて向き合う医療実践は、自身も認めるほど「やりすぎ」があったことなどにより、現代では批判的な人もいます。

今の大学病院における心身医学の医療では、各専門医と心理療法の専門家など、多くのスタッフで一人の患者に関わるチーム医療が一般化しています。

 しかし、主流の医療とは違う新しいフィールドを開拓する上で、池見氏の情熱と捻れ型的ガッツは不可欠のものだったのではないかとも思います。金井先生はそういうところに好感と共感を感じたようでした。では内容に入っていきます。 

池見酉次郎氏らによる日本心身医学会設立― 東洋の文化的遺産の科学的解明① 

 20世紀後半に入ると、日本の医学界でも、心身相関に注目する考え方が受け入れられるようになり、1959年11月、池見酉次郎氏(1915年生)らによって九州大学内に、日本精神身体医学会が設立されました。

1 961年十10月には、国内初の精神身体医学研究施設(同大学医学部付属)が設立され、心身医学の研究が公的に始まり、1,963年4月には、九州大学医学部に、池見氏による国内初の「心療内科」が発足しました。

(精神身体医学会は、1975年7月、日本心身医学会と改称。1996年、「心療内科」が厚生省に標榜科として認可される)。

 池見氏による「心療内科」発足以来、半世紀後の今日では、医療の場で心療内科が広く定着するようになりました。

 心療内科「受診経験者」の間には、「投薬医療」と揶揄する声も多く聞かれるのですが(これは、現代の保健医療のあり方の問題か?)、池見氏の志である「本物の心身医学(身心一如の医療)」が実践される時代の到来を待望するものです。

 池見氏の活動(一元論の医学)を知り、師野口晴哉を評しますと、それは、二元論医学華やかなりし時代の「身心一如の指導者」であった、と言うことができます。

 また、池見氏による心身医学は、「情動」に特化した私の個人指導のあり方に対し、学問的・理論的根拠を与えてくれるものとして、ここ二からは、池見氏の著書からの引用を多くしています。