野口整体 金井蒼天(省蒼)の潜在意識教育と思想

金井省蒼(蒼天)の遺稿から説く「野口整体とは」

第五章 野口整体と心身医学の共通点 二3

 今、新型コロナウイルス感染症の問題で、免疫力を高める食べ物などに関心が集まっています。

「ストレスや心配事は免疫機能を低下させる」と一般にもよく言われることですが、これを科学的に研究することは脳科学と免疫学を統合する必要があり、非常に難しいのだそうです。

 しかし現在、中国(清華大学)で脳(神経系)と脾臓の免疫細胞の関係についての研究が進んでおり、東洋医学的な身心相関性が、科学の方面からも明らかにされつつあるようです。

 脾臓というのは以前、「切除しても生きる上で問題ない臓器」のように考えられていたのですが、新型コロナウイルスSARS-CoV-2)感染によって、直接に人の脾臓とリンパを影響すること、それが重症化につながるという報告もあります。

 ストレスと免疫系の関係性が、脾臓を焦点としてあきらかになりつつあるのです。 

心身症を研究した池見酉次郎氏 

 現在では二元論によって切り離された「感情」が、西洋医療の一分野「心療内科」で扱われるようになりました。ここで扱われるのが「心身症」です。

 心身症とは、心理社会的原因(註)によって身体症状が発症する病気の総称です。

(註)心理社会的原因 精神的な不安(心理)や家庭や職場など(社会)に感じている圧力=精神的ストレス 

 池見酉次郎氏(日本心身医学会)は、心身症を次のように定義しています(『心療内科』)。

「感情、特に抑圧されて意識に上りにくい感情に対する正常な生理的反応(怒りを深くおさえていると頭痛がしたり血圧が上ったりする)が、慢性に拡大された形で現れることによって、一定の器官に持続性の機能的変化、またはこれから進展したと思われる器質的な変化を現わしている疾患」

 そして、同著で池見氏は現代人の心と心身症について、次のように述べています。 

病気と適応

…人間が環境にうまく適応できないと心身にさまざまな障害が生じるものである。

…「現代の不安」や「近代人の精神的な危機」がしきりにいわれているように、生存競争の激化や人間関係の複雑化など、すべて心の面での適応をむずかしくする条件が今日では重なりつつあるようである。したがって、適応の障害によっておこる病気、ストレス病の多くは、精神面での不適応に根ざすものがふえてくることもまた当然のことであろう。

  病状における心理的因子の割合が大きく、その面を考慮しないと適切な治療ができない場合に心身症として扱うのです。

 神経症抑うつ症、精神病(躁うつ症や統合失調症)という精神疾患は「精神科」で扱われますが、精神的ストレスが関わる中でも、主に内臓との関係が深い身体疾患・心身症(内科領域)を扱うのが「心療内科」です(現実には、抑うつ症の人は精神科を嫌い、心療内科を受診することが多い)。

 神経症にもいろいろな身体症状が含まれることが多いため、心身症との区別は曖昧な部分もあるのですが、一般的に心身症は、精神症状よりも身体症状の訴えが大きく、身体症状が特定の器官に固定して現れやすいものを指します。

 心療内科で扱う心身症には、

気管支喘息過換気症候群・本態性高血圧症・心筋梗塞胃潰瘍・十二指腸潰瘍・慢性胃炎過敏性腸症候群・慢性肝炎・食欲不振・過食症・糖尿病・自律神経失調症冷え性アトピー性皮膚炎・慢性関節リウマチ・繊維筋痛症・腰痛症・癌」

など、多数の病名があります。

 心身医学の本質的なところは、病症の捉え方やアプローチの仕方にあり、「個人におけるこころとからだの関係だけでなく、その人をとりまく環境も考慮し、これらの要素を分けずに、統合的にみていこうとする」ものであり、その臨床を行うのが心療内科です。

 私の心療整体での受療者の「訴え」は、全ては「心身相関」である身体表現性現象として捉えることができます(身体表現性とは「心(無意識)」の訴えを、体を通して表していること。肩こりもその一例)。