野口整体 金井蒼天(省蒼)の潜在意識教育と思想

金井省蒼(蒼天)の遺稿から説く「野口整体とは」

第五章 野口整体と心身医学の共通点 二 1②

 一で述べたように、アメリカやヨーロッパでは心理療法家や医師が、情動に関わる障害を治療する方法として東洋の身体行に注目し、研究がすすめられてきました。

近年では、ヴィッパサナ瞑想をメソッド化したマインドフルネス瞑想が、FacebookGoogleなどの大企業で社員のストレスコントロールと潜在能力開発のために取り入れられるようになっています。

 では、今回の内容に入ります。 

池見酉次郎氏らによる日本心身医学会設立―東洋の文化的遺産の科学的解明②

  東洋の宗教的伝統では、元来、心の問題と体の問題は区別なく捉えられてきました。池見氏はヨーガや、「肚」に象徴される日本の伝統的技法(禅・「道」について・立腰道など)を学びました。氏は『肚 もう一つの脳』(潮文社)で、次のように述べています。 

まえがき

私は昭和38年(1963年)に、九州大学医学部に心療内科を興し、従来の専ら身体的な治療だけが行われてきた内科的疾患を、心身両面から診療する研究に専念してきました。

このような体験を通して、ほとんどすべての体の病に、心身一如の診療を施すことによって、多くの現代病の治療にめざましい進歩が見られることに気づきました。

  そして氏は、同著一章 自然治癒力を生かす で、国際的な日本通であるトレバー・レゲット氏の「日本人の日本知らずは驚くばかりで、日本人ほど、自国の文化を説明するのが下手な国民はいない」という言葉を挙げ、「日本人の日本知らず」を警告しています。 

日本人の日本知らず

…たしかに、われわれ日本人は、自国の文化についてさえ、外国の研究者に言語化され指摘されて、始めて納得する傾向があります。日本の禅が、欧米でブームになるきっかけを作られたのは鈴木大拙老師です。老師は、「禅は、不立文字といわれるからこそ、私は、禅の英知の言語化に努力してきたのだ」といっておられます。現代の科学文明の行きづまりから、今日ほど、東洋の思想や行法への関心が、国際的に高まったことはないにもかかわらず、日本人のこれらの関心は、むしろ、うすれつつあるような気がしてなりません。 

  池見氏は、さらに五章 自己への目覚め で「西洋かぶれ」を戒めています。 

個人の意志と宇宙の意志

問題になるのは、「日本人の日本知らず」といわれるように、もともと、東洋の伝統的な英知を取り入れた心理学や自己コントロール法が、西洋で新しい装いのもとに再構成(技法化)されて日本に輸入されますと、一種の舶来品の流行を追うように、安易にそれらにとびつく傾向が、いまだに、わが国には根強く残っている点です。

そこで、私は、この辺で、東洋の勝れた文化的遺産を、万人にわかりやすく、より科学的に解明し、実用化することによって、西洋かぶれによる弊害を防ぐ必要があると信じております。 

  池見氏の「日本人の日本知らず」という言葉に見られる、日本人の、東洋の思想・行法への無関心の問題、そして、東洋の文化的遺産の科学的解明という考え方には、大いに共感するものです。