野口整体 金井蒼天(省蒼)の潜在意識教育と思想

金井省蒼(蒼天)の遺稿から説く「野口整体とは」

野口整体と科学― 科学を相対化し「禅文化としての野口整体」を思想的に理解する

上巻掲載にあたって

近藤佐和子

 今回から、いよいよ『野口整体と科学― 科学を相対化し「禅文化としての野口整体」を思想的に理解する』に入ります。

 2011年10月10日に出版された『野口整体 ユング心理学と天風哲学「気」の身心一元論― 心と体は一つ』(静岡学術出版)は、指導を受けていた皆さんなどの支援を受け、完売することができました。

 そして、この原稿が基になって、金井先生の晩年のライフワークとして「科学の知・禅の智」三部作が執筆されましたが、『野口整体と科学―』は、その一作目、上・中・下巻の上巻です。先生は大著となったこの上巻をⅠ・Ⅱと二冊組で出版することを構想していました。

 原稿を書いている時や編集会議で、先生は時折「この本はわしの置き土産だ」と言うことがありました。先生は自身がそれほど長く生きるわけではないと分かっていたのだと思います。

 それでは内容に入りますが、出版に当たり石川光男先生に頂いた文章、そして表紙・扉の文章から紹介していきます。

 野口整体と科学 活元運動』刊行によせて

国際基督教大学名誉教授 石川光男

金井蒼天氏は野口整体に精通しておられ、長年にわたって、整体指導者として社会に貢献してこられました。また、「ポストモダン」という視点から身心一元論としての野口整体の歴史的意義を論説した『「気」の身心一元論』を刊行しておられます。

 このたび『野口整体と科学 活元運動』を出版することになりましたが、東西の自然観や文化の相違に着目して、野口整体と活元運動を理論と実践の両面から、わかりやすく解説しておられます。

 西洋的な思想と近代科学が軌道修正をせまられている現代において、大局的な視点から野口整体を再評価するために大きな役割を果たすものと期待しております。

2014年春

野口整体を理解し、身に付ける上でなぜ「科学とは何か」を、問い直すのか

活元運動は、「自分の健康は自分で保つ」ための修養(調身・調息・調心)です。この修養をきちんと行うために必要なのが教養で、それは思想の知的理解です。

 本書の目的は、「科学とは何か」を問い直すことで表した、「気・自然健康保持会」独自の、科学的生命観と野口整体的生命観との相違(西洋と東洋の世界観の違い)という、思想の理解です。

 これは、明治以来の西洋・近代科学文明と日本の伝統的な東洋宗教文化、そして、敗戦後の「道(どう)」の喪失についての考究から生まれた内容です。

  戦後七十年を経た現代は、敗戦(1945年)によるGHQ占領下の「日本弱体化政策」と、その後の科学教(狂)ともいうべき時代を通じて、「道」の文化が失われたことが知られておりません。これは、とりわけ若い世代において顕著です。             

 東洋宗教(神道、儒・仏・道教)が統合され、日本人の生き方の規範となっていた、「道」に大きな影響を与えてきたのが「禅」であり、これらが伝統文化の中心でした。

「道」とは人格を磨き、生き方を高めるための道筋であり、精神性の向上を目的とし、武術や舞踊、茶や書などを修行(これらの身体行を通じて師に学び、生涯を賭けて人生を深く理解)することでした。

 このような伝統を基盤とし、明治・大正時代を通じての「近代化」の中、昭和の初めに野口整体は生まれたのです。

 また、現代日本の多くの人々は、戦後民主主義下の科学至上主義教育により、無意識的に科学絶対主義(科学的世界観が唯一)となっているのです。これは、意識が理性偏重となっていることを意味します。

 こうした人々においては、伝統文化を基盤にして成立した野口整体(の「身体性」)を真に理解することは、容易ではありません。それは、敗戦以前の日本では、東洋宗教が結晶した「道」が育む「身体性」が、日本人が生きる上での共通感覚となっていたのであり、現代では、この共通感覚(身体感覚・感性)を失っているからです。

 そこで現代の、科学的社会の共通感覚・理性を主とする意識が発達した人々が野口整体を身に付けて行く上では、「科学的な視点やものの見方が、唯一絶対ではないと提示(=科学を相対化)」し、野口整体の東洋宗教的な(とくに禅)文化を、先ず思想として理解することが肝要と考えました。このため私は、野口整体の中でも、蒼天流の世界観を出来得る限り論理的に表現してきました。

 伝統的な「道」を失った現代の日本人が、内なる自然「身体」と一体となる、活元運動を体得するための思想と行法を説きます。                 (金井蒼天)

 

左袖 プロフィール

一般社団法人野口整体 気・自然健康保持会

代表理事 金井 蒼天(かない そうてん)

1948年、愛知県に生まれる。高校卒業後の一浪中、野口晴哉師の思想に出会い、野口整体の道に進むことを決心する。

翌1967年4月2日、野口晴哉師の門下生となる。

1972年8月1日、熱海で整体指導の道場を開く。

1975年10月、京都高等講習会において師野口晴哉より

整体指導者として認められる四段位を授与される。

1998年2月4日、満五十歳を機に、「野口整体 気・自然健康保持会」と名乗る。

2004年6月、心理療法的・整体(個人)指導をまとめた初出版『病むことは力』(春秋社)を著す。

2008年4月以来、二十一世紀の現代社会における野口整体の立処(たちど)を明確にするため、科学哲学を学ぶ。

2011年10月、『「気」の身心一元論』(静岡学術出版)を著す。

2014年3月、一般社団法人として認可を受ける。

『「気」の身心一元論』の改訂(12年春以来)を通じて、2017年春、当初から予定の三冊のうち上巻(本書)を刊行する。

2008年4月からの科学哲学の学びを通じて、西洋と東洋の世界観の相違を理解(科学を相対化)し、改めて「禅文化としての野口整体」の本質を捉え、その世界を著す。

 

表・表紙左下

― 科学を相対化し「禅文化としての野口整体」を思想的に理解する

裏・表紙

敗戦後の科学至上主義が終焉するという時代に、

「近代科学とは何か」を問い直し、これを相対化して

東洋宗教文化を理解することで、野口整体を体得する

 

f:id:soryu-seitai:20201116223122p:plain

金井蒼天先生が考案した表紙デザイン。何度もやり直して完成にこぎつけた。