野口整体 金井蒼天(省蒼)の潜在意識教育と思想

金井省蒼(蒼天)の遺稿から説く「野口整体とは」

野口整体と科学 第一部第二章 野口整体の生命観と科学の生命観二2①

 第一章二6では、近代化と近代西洋医学の発達について述べましたが、その中に次のような一文がありました。 

18~19世紀、産業革命が起きた西欧では、都市の労働者などの貧民層を中心とする患者向けの大病院を、国家が建設するようになりました。

成育歴や生活状況が分からない重症患者を大量に診察する必要から、病気そのものを病人から区別された実体として扱う「病気中心主義医学」が始まったのです。

  この中にある、病気だけを対象とする「病気中心主義医学」というのは、今回の内容に出てくる中川米造氏の著書にあった言葉です。こうして「どんな生活状況にある人か」という個人の理解がなされなくとも適用できる、近代科学的な医療が産業革命によって求められるようになり、植民地拡大のため戦争と感染症対策がさらなる西洋近代医学の発展につながっていきました。

 それでは今回の内容に入ります。

 

2 関係性(信)を基礎におく野口整体の整体指導― 自然治癒力(自力)は他力(関係性)によって啓かれる①

①複雑性を理解する整体指導

「医療とは人間を対象とするべきであって、病気を対象とするべきではない」という格言を持つ中川米造氏(註)は、インタビュー記事の中で次のように述べています(鉄門だより1996年)。 

第2回 『医』と『人間・文化』

…最近、複雑系という概念が出てきたが、人間的な成熟というのは、複雑性がわかることであり、要素や部分を知っていたって何にもならない。一つ一つの細胞の専門家が集まったところで、全体の人間はわからない。

人間を理解するためのキーワードというのは、個体性、相互作用、歴史性、意味であり、これらを無視する近代科学は医療の基礎にはなりえない。医療にあたる者も、医療をうける者も人間なのだから、医療の基礎は、病む者と癒す者との間の人間関係に置くべきである。

(註)中川米造(1926年~1997年)

1949年京都大学医学部卒業。医学哲学・医史学者。1980年大阪大学教授となる。1989年滋賀医大教授。1986年日本保健医療行動科学会を結成する。医の倫理を基本に医療社会学、医療人類学、環境医学など幅広い分野で発言した。著作に『医の倫理』など。

 

 師野口晴哉の講義内容は、右文にある「複雑性がわかる」ための潜在意識を啓く教育でした(様々な実例を挙げ、病症における「心の原因」を本人、また他者との関係において説いた)。