野口整体 金井蒼天(省蒼)の潜在意識教育と思想

金井省蒼(蒼天)の遺稿から説く「野口整体とは」

第三部 第三章 一5 日本人の感傷性(情的無分別)― 日本人は西洋の合理性を学ばねばならぬ ①

 今回は鈴木大拙が観た日本の敗戦と日本人の問題が主題となっています。長くアメリカで暮らし、海外の事情をよく知る鈴木大拙には、日本がアメリカと戦争するなど正気の沙汰とは思えないことだったでしょう。

 最近、ウクライナの大統領がアメリカで真珠湾攻撃を引き合いに出したスピーチを行ったことがニュースになり、反感を持った人もいるという記事を読みました、しかし当時日本がいかに追い込まれた立場にあったとしても、海外から見ればやはり「正気の沙汰ではない」奇襲だったことは受け入れなければならないと思います。日本の軍人でも、海外を知る人は反対したのですから。そして敗戦という結果になったのです。それでは今回の内容に入ります。

①日本が西洋から学ぶべきこと

 大拙氏は、分析心理学のC・G・ユング精神分析家のエーリッヒ・フロム、実存主義マルティン・ハイデガーとも個人的な親交があり、第二次大戦後、ユングが世界各地から優れた研究者や思想家を集めて主催した「エラノス会議」に二度出席(1953、54年)しました。

 1949年ハワイに渡り、その後のアメリカ・ヨーロッパでの生活を終え、1958年帰国するまで、英語で仏教思想や日本文化、禅の実践方法の講義を精力的に行い、世界の大拙となったのです。

 そして大拙氏の新しさは、禅を西洋に伝えるということだけにはとどまらず、西洋人には東洋的智を教え、東洋人には西洋的知(日本人には西洋の合理性)を教えるというものでした。

 大拙氏は『東洋的な見方』(鈴木大拙 上田閑照岩波書店)収録の、「日本人の感傷性」(1960年)と題する文章で、日本人の問題点として「感傷性」を挙げ、「日本を世界に対抗させて何事にも島国根性を押し出して、安直な、軽薄な、浅はかな愛国主義に終始」することを指摘しています。これは第二次世界大戦と無条件降伏という体験に基づくものです。

 また同著の「物の見方―東洋と西洋」(1945年)という第二次大戦敗戦直後に書かれた文章では、日本人に対し「日本の歴史は今度で大決算せられた。…出来るだけ冷静な頭で、虚心坦懐に、科学的に、合理的に、世界性を持った立場から、自らを解剖して見よというのである。…そうしてそれから出る結論の上に立って、これからの日本人の行く途を辿るということにしなくてはならぬ。」と述べています。

 そして、「欧米人の戦争観は日本人のと違う。日本では人を戦争の主体として居るが、前者に在りては戦争は力の抗争である。それ故、力が尽きればお互いに無益の流血は避ける。…日本人の戦争は力の争いではなくて、人の争いであるから、どんなことがあっても降参せずに自殺してしまう。」と指摘しています。