野口整体 金井蒼天(省蒼)の潜在意識教育と思想

金井省蒼(蒼天)の遺稿から説く「野口整体とは」

野口整体とユング心理学 瞑想法と心理療法

第四章 野口整体とユング心理学― 心を「流れ」と捉えるという共通点 三 7

今日と明日は、個人指導と心の成長が主題です。私にとって、野口整体を金井先生の下で学んだ最大の収穫は、自分が成長するとは、大人になるとはどういうことかを学んだことだったと思います。 それは、何かをそつなくこなしたり、表面的な感情的同調ができる…

第四章 野口整体とユング心理学― 心を「流れ」と捉えるという共通点 三 6

感情が流れると意識(自我)と無意識(自己・魂)がつながる ― 感情表現を通じて他者に理解されることの意味 河合隼雄氏は「感情」とたましいとのつながりについて、次のように述べています(『ユングと心理療法』)。 個を超えて …近代になって人間の理知的…

第四章 野口整体とユング心理学― 心を「流れ」と捉えるという共通点 三 5

個人指導とコンプレックス― 活元運動と病症の経過 ―腰痛が「自我の主体性」を取り戻す 個人指導で〔身体〕を観察することは、生活している人間としての動きが、背骨に表れているのを観察することです。 このような身体性の観察(気で観る)を主とするのが野…

第四章 野口整体とユング心理学― 心を「流れ」と捉えるという共通点 三 4

今回から、金井先生の指導例を基に(次回紹介)、意識・感情・無意識がつながりを取り戻す意味について、ユング心理学の視点から述べていきます。 4 意識・感情・無意識をつなぐ身体感覚 私は、人間の全体を「意識・感情・無意識」と表現してきました。これ…

第四章 野口整体とユング心理学― 心を「流れ」と捉えるという共通点 三 3

心の流れを調えるために身体を整える― 心の流れが淀むようになっている現代 一般的にも、人は「あの人は快活だ」、また「暗い人だ」、などと見るものですが、これは、心のはたらきを相手の「気」に見ているのです。 気で〔身体〕を観察していますと、心のは…

第四章 野口整体とユング心理学― 心を「流れ」と捉えるという共通点 三 2

不快情動による「偏り疲労」と「コンプレックス」の共通点 ― 身体に読み解く潜在意識 二で述べたように、私は個人指導で、身体(背骨を中心に)を観察し、筋肉および脊椎骨の硬張りを通じ、本人が意識できなくなっている「潜在感情」を観察しています。それ…

第四章 野口整体とユング心理学― 心を「流れ」と捉えるという共通点 三 1

三 ユングの心的エネルギー論と野口整体の気による身心観 偏り疲労(体の歪み・硬張り)は、情動エネルギーによるものだとここまで述べてきました。しかし、実際に指導の中で、本人の中でもはっきりしない感情について踏み込むというのはそれほど簡単ではな…

第四章 野口整体とユング心理学― 心を「流れ」と捉えるという共通点 二 8② 

ここでは「今、ここ」にある自我と、過去と記憶の集積に捉われた自我の相違を踏まえながら読んでみてください。 自我の再構成を自然に促す心療整体 ②私のじねん流臨床心理の意味 師野口晴哉は、「《潜在意識教育》意識以前にある自分」(『月刊全生』1967年…

第四章 野口整体とユング心理学― 心を「流れ」と捉えるという共通点 二 8①

自我の再構成を自然(じねん)に促す心療整体 ① 自我の再構成 河合隼雄氏は「自我の再構成」について、次のように述べています(『母性社会日本の病理』日本人の自我構造)。 …青年期になると、自我は今まで自分の受けいれてきた規範を根底から疑ってみ、もう…

第四章 野口整体とユング心理学― 心を「流れ」と捉えるという共通点 二 7

自我とは ここで、自我とは何かを少し補足しておきたいと思います。 「私」という自己感覚・自己意識が「自我」というものですが、現代の多くの人は自我のはたらきとしての思考・感情・意志を、外界からの刺激に反応して生じる受動的なものとして捉えていま…

第四章 野口整体とユング心理学― 心を「流れ」と捉えるという共通点 二3 

自身の内と確かなつながりのある自我を育成(強化)する 「これが私(自分)」という意識を、心理学では自我と言います。 ユング派臨床心理学者の河合隼雄氏は、自我は「外界との交渉の主体」、そして「内界を認知する(自覚する)主体」であると定義してい…

第四章 野口整体とユング心理学― 心を「流れ」と捉えるという共通点 二2

心の生活を振り返る時間としての整体指導 ― 情動(陰性感情)の観察で得た「まぁんじゅう理論」 私は、整体指導を行うようになった初期には、相手の身体に比較的大きな変化(歪み・偏り疲労)を観察することから、やがて小さな変化までを捉える観察眼を発達…

第四章 野口整体とユング心理学― 心を「流れ」と捉えるという共通点 二1

二は、金井先生の個人指導をユング心理学の視点から考えるという内容で、偏り疲労の中に圧縮されている情動エネルギーから、心の問題として考えられがちなコンプレックスを観察すること、そしてそれにはどのような意味があるかが主題です。 特に自我と意識と…

第四章 野口整体とユング心理学― 心を「流れ」と捉えるという共通点 一1②

1 コンプレックスとは ②身体症状が表現する不快情動 また、河合氏は先の例に先立って、コンプレックスを次のように説いています(『コンプレックス』第一章)。 1 主体性をおびやかすもの われわれは自分で自分の行動を律することができる、と思っている。…

第四章 野口整体とユング心理学― 心を「流れ」と捉えるという共通点 一1①

近藤 完成している中巻の編集を、ブログ用に少し再編しました(内容の削除はありません)。まず、コンプレックスと言うと「劣等感」を思ってしまう人が多いので、心理学的な意味でのコンプレックスとはどのような意味かを確認しながら読み進めてください。 …

第四章 野口整体とユング心理学― 心を「流れ」と捉えるという共通点 一

一 個人指導と主体性を損なう偏り疲労―「感受性を高度ならしむる」整体指導 今回から第四章に入ります。第四章は深層心理学の実際に入るため簡単ではありませんが、中巻の中でも白眉と言える章で、人間の心と体の間にあるコンプレックスが焦点となっています…

第三章 自分を知ることから始まるユング心理学と野口整体 三5

自分で自分のことを考える「手伝い」をする立場―「気で相手を観る」ことを身に付ける 河合氏は「心理療法を行う立場」について、次のように続けています(『「日本人」という病』)。 病のあとに発揮される創造性 物理学であれば、私が客観的に研究した物の…

第三章 自分を知ることから始まるユング心理学と野口整体 三4

心を受け取る「他者」がいることの意味―「想念と自分」の間に隙間ができることで、自分のことを考える力を養う 河合隼雄氏は「自分で自分の研究をする」際に、他者が介在する意味について、次のように述べています(『「日本人」という病』)。 話の聞き手が…

第三章 自分を知ることから始まるユング心理学と野口整体 三3

自分を知る智(自己知)」はいかに啓かれるか

第三章 自分を知ることから始まるユング心理学と野口整体 三2② 

人の感じる〈心のはたらき〉にある「神」― つながりを教えていた「神話の知」を失った現代 河合氏は同著で次のように続けています。 1 科学の知 「関係性の回復」はどうしてなされるのか。これに対して中村雄二郎は、われわれは科学の知のみではなく、「神…

第三章 自分を知ることから始まるユング心理学と野口整体 三2①

「関係性」を失わせる科学至上主義 ① 科学的方法論に頼ることでもたらされた関係性の喪失 科学というものは、研究対象(物)より自分(の心)を切り離す(切断)という「物心二元論」で成り立っています。これを「客観的」観察と言い、それは、物を対象化し…

第三章 自分を知ることから始まるユング心理学と野口整体 三1

三 自身の心を啓く道筋が他者の心を啓く道筋となる― モノを知る科学的方法とは違う「人間を知る」こと 自分を「のり超えた力」が相手の潜在意識を理解し導く力となる ― 師が「自分の心を観る」ことから始まった「病気は心の訴えである」という思想 師野口晴…

第三章 自分を知ることから始まるユング心理学と野口整体 二4

野口晴哉先生には、二歳の時に鍼灸師の子どものいないおじ夫婦に養子に出され、その後夫婦に子どもができたために帰された、という生い立ちがあります。おじ夫婦には一人子として可愛がられ、映画や音楽にも触れることができたとのことですが、戻った生家は…

第三章 自分を知ることから始まるユング心理学と野口整体 二3 

河合隼雄氏がフルブライト留学生としてアメリカに留学した当時、海外でもユング心理学(分析裡心理学)は少数派でした。 以前読んだアンドルー・ワイル著『癒す心、治す力』という本には、その当時、精神分析を行う精神科医が「アルケミスト(錬金術師)」と…

第三章 自分を知ることから始まるユング心理学と野口整体 二2

前回に続き、河合隼雄氏のユング心理学と野口整体の潜在意識教育との共通性についての内容に入っていきます。 臨床心理の難しさは客観ではなく主観の歪みに焦点を当てる所にあって、この主観の問題に一緒に取り組むために必要な条件が「自分のことから始まる…

(補)全生思想 野口晴哉『治療の書』より

中巻冒頭「全生思想」の中から、第三章に沿った部分を紹介します。 (金井) 師は治療を行っていた時代に、「治療する人」の心得として、次のように説いています(『治療の書』)。これは、整体指導者において大切な指導力を養う心のあり方で、「治療」とい…

第三章 自分を知ることから始まるユング心理学と野口整体 二1

二 心理療法に必須である「自分を知ること」(潜在意識を理解する)を、河合隼雄氏に学ぶ―「自分」を探求するためのユング心理学 人間を理解することは「自分を知ること」から始まる― 科学的診断と人間に向き合うこと 河合隼雄氏は1952年、京都大学理学部数…

第三章 自分を知ることから始まるユング心理学と野口整体 一5

師野口晴哉の説いた潜在意識― 潜動意識・現動意識 師野口晴哉は、現在意識・潜在意識・無意識とはどのようなものかについて、次のように述べています(『野口晴哉著作全集第四巻』)。 三、心の構造 心の構造は、こうするとか、考えたり感じたりする表面を通…

第三章 自分を知ることから始まるユング心理学と野口整体 一4

深層心理学で「人間を理解する」とは― 客観的に、また一体となって相手を理解する 河合隼雄氏は深層心理学を学ぶ態度について、次のように述べています(『対話する生と死』臨床心理士養成のための基本的課題)。 一 臨床心理士の特性 …次に、臨床心理学にお…

第三章 自分を知ることから始まるユング心理学と野口整体 一3 

ユング心理学と出会う 石川光男氏の著作を通じて「科学の哲学性」を学び始めた少し後の2008年5月、指導に通う植月賢二君が『ケルト巡り』(河合隼雄)という本を持ってきてくれたのが縁で、ユング心理学を学ぶことになりました。 指導に通う人の中でユング心…